三種の狂者×力ある者×紅の世界……2
ペリグロッソとシュゲンの二人は互いに他の二つの球体へと視線を向ける。
球体はすぐに動く様子はない、しかし、それは急がねば、ドルベルド伯爵と同等の敵が二体増えることを意味していた。
「考えは決まったのであるか? 我輩は楽しい時間を満喫出来ればそれでよいのだが……」
シュゲンが一歩、前に出ると樹木の槍を造り出しドルベルド伯爵に切先を向ける。
「妾はエルイの長、シュゲンじゃ、古き血を屠る一族として、貴様の相手をしてやろう」
「エルイだと……貴様、殺戮の種が何故、他種族と歩むッ! 我輩の一族は忘れぬ、エルイと言う種族の大罪を!」
「御託はよい、妾より、遥か昔の者達が選んだ選択じゃ、そして今、貴様の前に妾が立つも、妾の選択じゃ!」
シュゲンとドルベルド伯爵が同時に動き出す。
激しい連撃がドルベルド伯爵に向けて突き出され、それを回避しながら鋭い爪がシュゲンを襲う。
互いに攻撃を躱しながらの猛攻が続けられると、互いに距離を取る。
「どうしたであるか? まさか、エルイの一族はこれ程までに弱体化したと言うのか? 本当に残念であ~ると、言う他ないのであ~るが、我輩は最後まで手を抜かない主義なのでなあ」
ドルベルド伯爵はそう語り終わると両手を合わせる。
合わされた両手がゆっくりと離されると、剣が姿を現していく。
「我輩が剣を使うと言う事は、相手を解体し、最後まで苦しませると言う意思の現れなのであ~る」
そう語る最中、ドルベルド伯爵に襲い掛かるシュゲン。
「ぬわッ! 貴様、なんと卑怯な真似を、我輩が親切に説明しているのに、話の途中で割って入るとは、恥を知らぬのであるかッ!」
「命を賭けての殺し合いじゃ、そんな戦いに卑怯も恥も存在せぬ、生き残るが勝者であろう? のぉ、ヴァンパイアよ?」
「貴様ッ! 我輩だけでなく、我輩の一族を愚弄するかッ!」
怒りに任せての攻撃、それは正しく、攻防において隙が生まれた瞬間であった。
「ヌワァァッ!」
「ハアッ!」
シュゲンの渾身の一撃が槍に乗せされ放たれる。
しかし、それを詠んでいたようにドルベルド伯爵は笑みを浮かべる。
シュゲンの槍が触れる瞬間、体が数百の蝙蝠へと変わり、腕と頭部のみが残った状態でシュゲンに刃が襲い掛かる。
「我輩がそんな単調な攻撃を予期できぬと思ったか! 愚か者がぁッ!」
「何! ……なんてのぉ、ぬしも大概の空者よなぁ! 爆ぜよ!」
シュゲンの樹木の槍が無数の鋭い枝となり、ドルベルド伯爵の分身である蝙蝠を貫いていく。
「ぐあぁッ!」
ドルベルド伯爵の断末魔のような叫び、しかし、次の瞬間、シュゲンの体に刃が振り抜かれる。
「な……!」
「アハハ、十分に楽しめたであるか? 薄汚いエルイの長よッ!」
片膝をつき、シュゲンの動きが止まるとドルベルド伯爵は蝙蝠となった分身を集め、元の状態へと復活する。
「これが我輩達、ヴァンパイアの力だ! 貴様らエルイに敗北など有り得ぬのだよ」




