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紅の女王×血状の力×否定の王……6

 中層から上層へと上がっていく。


 歪な空間に光輝く赤い目、小さく呟く口が壁一面に広がっている。


「なんだよ、これ……マジかよ、ホラー過ぎるぜ」


 風薙がそう呟くと、全ての眼が一斉に黒猫へと向けられる。


 数百の瞳が見つめ、数十の口が動き出す。


 その瞬間、数十の口が一斉に笑い出す。


 不気味な笑い声の縦横無尽に動き出す瞳、すべてが歪な空間と言う他ない。


 天井の靄が次第に流れ降りるとその形を次第に小さな昆虫(クモ)へと変えていく。


 壁の口からは次々と蝙蝠(コウモリ)が飛び出し、目からは涙のように流れだし滴が(ヘビ)へと変わる。


 通路を埋め尽くす三匹の生物を前にキャトルフを庇うように前に立つカルミナ。


「団長を背負っていく、他の皆は道を作って欲しい」


 獣戦士特攻隊の副隊長、セラが前に駆け出していく。


「道は私が作る! 他の連中も続きな!」


「おうよ!」

「へい!」


 無数に現れる三匹の生物を斬り進むセラ。


 その先には広いホールが広がっており、カルミナが急ぎキャトルフをホールへと運び込む。


 黒猫の団、二国兵団がホールに踏み込む、すると突如として城内が歪み通路が消え去る。


 獣帝国軍、エルイの民の二勢力が新たに作り出された通路を進む事となり、戦力が分断される。


 黒猫の団と二国兵団の前には二つの通路が姿を現すとライム女王声が響く。


『私は本当に不幸だ……一人で全てをこなせなくちゃならないのだから……だから、兵隊を増やす事にしたの……アハハ』


 笑い声が木霊するホール、そして二つの通路から“カシャン” “カシャン”と足音が次第に近づく音が響く。


 姿を現したのは真っ白な鎧と真っ黒な鎧を身に纏った騎士達であった。


『裏切らない兵士は優秀、更に死なない兵は最強……私の兵隊は最強と言うことね……紹介するわ。白い鎧は白虎兵、黒い鎧は黒龍兵よ、アハハ』


 白虎兵は長槍を装備しており、黒龍兵は盾のみを装備している。


 白と黒の鎧兵を前にマカルデア帝国の女帝、シェルビー=ムガナが無言で二本の黒包を正面に向けて連射する。それに合わせて、マカルデア帝国軍が次々に銃を発砲していく。

 女帝シェルビーの両隣の兵が次々に黒包を交換し玉が切れた物から玉を込め直す。


 数十秒に渡る凄まじい発砲が終わると、ホール内部に火薬の匂いが立ち込める。


「二国兵団ッ! 長槍部隊前へ、後方支援用意ッ! 我等が前に立ちはだかる障害は全てを撃ち滅ばす! いけぇッ!」


 長槍部隊が前に駆け出した瞬間、煙の先から突き出される敵の長槍。


「黒猫よ! この場は我等が引き受ける! 先に進みこのふざけた悪夢を終わらせよ!」


 黒猫の団は頷くと上に続く通路を先に進んでいく。


 黒猫の背中が見えなくなった瞬間、女帝シェルビーの腹部に凄まじい高熱が通過する。


「ぐはっ!」


 正面からの攻撃、一瞬の閃光が前線から一気に後方を焼き尽くす。


『あ、いい忘れてたわ、黒龍の方は貴女の使う玩具()と違って強力だから……タップリと味わってください……ふふ』


「ライム……ライムッ! く、傷が深いな……」


 次々と討ち取られる二国兵団の兵達、白虎はダメージを即座に復活し、槍を振るい。


 黒龍は、盾で全てを守り、片手に仕込まれた銃を使い攻撃をする。


 女帝シェルビーは、自身の傷口を見つめると覚悟を表情にする。


 既に多くの兵が瀕死であり、死を覚悟する最中、シェルビーは立ち上がりニヤリと笑う。


「皆、すまぬな、じゃが、無駄死に犬死に等と誰にも言わせぬよ……まだ、黒包を詰められるか……」


「……はい、片手ですが、最後まで、仕事は致します」


「此方も、大丈夫です、黒包は必ずや」


 そう口にする配下を見つめるとシェルビーが黒包を連射していく。


 標的は白虎兵の背後であり、それに気づいた白虎兵達が盾になるように弾丸を防ぐ。


 次々に撃ち出される弾丸が白虎兵を吹き飛ばしていくと、再生する僅かな隙間から白い不気味な箱が見え隠れする。


 そして、再生する白虎の間を()うように一発の弾丸が箱に嵌め込まれた魔石(アーティファクト)を掠める。


 回復していた白虎兵の再生が止まる。


 それを合図に、二国兵団の生き残りが息を吹き返す。


 長槍部隊であるアバン王国の兵士達が命と引き換えに箱に向けて槍を突き出す。


 箱についた魔石(アーティファクト)が砕けると白虎兵が砂となり崩れ去る。


「まだだッ! 我等の力を知るがよいッ!」


 女帝シェルビーが走り出す。黒龍兵達が次々に閃光を撃ち放つ。


 片腕が焼かれ、腹部からも大量の血が流れる中、シェルビー=ムガナは黒龍兵の前にたどり着く。


「ヌシらも終わりじゃ、マカルデア帝国の力を知るがよいッ! 二国兵団は我等が誇りッ! 無駄死になぞ、有り得ぬとしれいッ!」


 シェルビーが黒い箱に向けて全力で布袋を投げ込む。


 そして、片手で銃をホルダーから抜くと袋を撃ち抜いて見せたのだ。


 ズガンッ!


 シェルビーの投げた袋の中身は火薬であり、一発の弾丸が命中した瞬間、通路に置かれた黒い箱が吹き飛び、魔石(アーティファクト)が砕け散る。


「「「シェルビー様ッ!」」」


「「「シェルビー陛下ッ!」」」


 シェルビー=ムガナは自らも爆発にまき混まれる事実を知りながら、行動を実行したのだ。


 二つの箱の破壊と引き換えに、二国兵団は女帝シェルビー=ムガナと多くの兵を失う結果と生ったのだった。

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