紅の女王×血状の力×否定の王……5
モルガの放った刃はカルミナの腹部に迫るも僅かに触れず、止まっていた。
そして、心臓部にはカルミナの放った鋼の糸が完全に貫いていた。
弾かれた糸とは別に作られた鋼の糸がすべての終わりを告げる。
「何故だ、なぜ、最後に力を抜いた……何故……」
既に力尽き、眼から光が失われたモルガの亡骸を優しく抱き抱えるカルミナ。
その光景を紅に染まりしライムは詰まらなそうに見つめている。
「詰まらぬ、幕切れか……まあ、よい……そろそろ、城内で面白い物が見れるであろうからな」
そう語るライム女王。
城内の二階部分から突如、歪に空間がねじ曲がりその形状を変化させる。
壁からは無数の眼と口が現れ、天井には煙のような靄が広がる。
見たものが気分を害すような不気味な光景へとすべてが創り変えられるとライムの紅い瞳が更に鮮やかに光輝く。
「さあ、本当の宴は此れからだ……」
上層を目指すキャトルフと黒猫の団、そんな黒猫の背後から迫る二国兵団。
周囲を確認するとマカルデア帝国の女帝、シェルビー=ムガナがキャトルフの進む方角に向けて黒包を構えると弾丸を発射する。
黒猫の団の足が止まるも、シェルビー=ムガナは更にキャトルフの斜め先に向けて発砲を繰り返す。
「止まるな! 黒猫よ、この城は普通の城ではないぞ!」
シェルビーが二発目以降に撃った壁からは真っ赤な血液が滴り落ちる。
キャトルフ達は唖然とする、シェルビーは一発目をわざと外し、それに反応した不自然な箇所に対して更に発砲していたのだ。
「なんのつもりだ、シェルビー=ムガナ?」
キャトルフの問いに不敵に笑みを浮かべる。
「最初に言ったが、我々はリアナ王国と同盟を組んだと、今のライムと組んだ覚えはないのでな、リアナ王国は平和と力の象徴だ、武力と恐怖の象徴になんぞ、させぬ」
そこ瞬間、ライム女王の声が城内に響き渡る。
「私を裏切るか、マカルデアの女帝よ! 自身の判断が帝国を滅ばしたと悔やむがよい! 黒猫よ、退屈させたな……私の大切な駒を相手として、向かわせよう……楽しんでくれ」
その言葉にすぐにキャトルフは城内から外が見える位置に移動する。
顔と手を乗りだし、紅に染まるライムを見上げる。
誰の眼にも理解できる程に巨大な赤黒い球体が造り出され、ゆっくりと回転しながら、更に大きくなっていく。
キャトルフは覚悟を決める。
「カヤンッ! 俺の体を直ぐに支えてくれ! 颯彌は俺の真下から風を上に吹き上げてくれ頼む!」
「わかった、マスター!」
「団長、任せろって」
二人が即座に動きだし、アルガノがキャトルフの体を支え、風薙が風を一気に舞い上げる。
その瞬間、紅に染まるライムが球体をマカルデア帝国に向けて撃ち放つ。
「リアナ王国から、外に向けられたすべての攻撃を俺は否定するッ! 間に合えッ! ウオォォ──リャアアーーッ!」
途方もない範囲にキャトルフの魔石が発動する。
それと同時にキャトルフの体が凄まじい勢いで押し戻される。
風薙の造り出した風がキャトルフの体を落下から防ぎ、更にアルガノが支える事により、無謀とも言えるそれは成功したのだ。
撃ち放たれた球体がリアナ王国から外に放たれた瞬間、球体が跡形もなく消え去る。
その瞬間、ライム女王は怒りながら、真っ赤な瞳をキャトルフに向ける。
その手に造られた小さな球体が即座に撃ち放たれる。
「否定の王ッ! 否定の王ッ! 否定の王ゥゥゥッ!」
叫ばれる取り乱した声、迫る球体。
「くそ! 直ぐに引っ張ってくれ!」
キャトルフの声に反応して、直ぐにアルガノが体を引っ張りこむ。
間一髪でキャトルフの神を軽く掠めた赤黒い球体が地上に落下する。
落下した先は傷つき、身動きのとれないリアナ王国の兵士達が横たわっていた。
そんな彼等を無慈悲に包み込む赤黒い球体。
鈍い音と共に地面が窪み、すべてが丸く抉られていく。
その光景に、キャトルフ達は一瞬、身を震わせる。
「俺達の敵は凶悪、いや、最悪の相手だ……たが、奴を討たないとすべてが終わる! いくぞッ!」
キャトルフの声に皆が頷くと上層へと進んでいく。




