紅の女王×血状の力×否定の王……4
絶望と理不尽の混ざり合う現実がそこに存在した。
「おい、モルガ爺……冗談だよな……なんでそんな馬鹿みたいなことを口にしてやがる!」
「せめてもの優しさだ……お前を他の奴に討たせたくない、最後は儂が、儂の手でゲルダの元にお前を届けてやる……それこそが最後の役目と魂に刻んだのだから!」
グレイヴの剣から滴る僅かな血液、口にされたゲルダの死、すべてが狂い出していく。
「……それは誰の血だ、誰の血なんだ!」
「言わねばわからぬか……この血の意味を……死んで再会するがよい」
「モルガ=グレイヴッ!」
城門の前で向き合う両者、その背後からは無数の足音が近づいていく。
真後ろには二国兵団、その背後に新王帝連合、大陸すらも食らい尽くすであろう、兵力が各自の考えで動き出す。
そんな二人の間に割り込む手。
「モルガ……なんでゲルダさんを……そして、私の大切な弟を殺す? 私は弟の為なら、すべてを犠牲にする覚悟だ……それが育ての親であっても」
「アルミナ、駄目だ、モルガは俺が」
その瞬間、カルミナの腕がキャトルフの背中に回される。
確りと抱き締められた腕、ただ。優しく呟かれた言葉。
「キャトルフ、たまには頼りなさい。私は貴方の御姉さんなんだからさ……家族を大切に思う優しい貴方だから、殺させないよ……」
そう言うと手を振りほどき、腰袋から仮面を取り出し、息をゆっくりと吐きながら仮面を被るカルミナ。
「待たせたな、モルガ……私が相手をする」
「カルミナ……本気で儂に勝つ気か……」
「私は出来ぬ約束を弟としない、それが命を賭けることになろうとな!」
「愚かなり、もっと賢く育ったと思ったが……残念だ、カルミナよ!」
「行けッ! 黒猫! 戦場の死神として、この狂った戦闘を、あの女の死ですべてを終わらせろ!」
二人の戦いが始まると同時にアルガノがキャトルフの手を引き、閉ざされた門へは黒猫の団員達が一斉に襲い掛かる。
リアナ王国軍が守る巨大な城門を数多の魔石を有した黒猫達が抉じ開ける。
黒色を纏いし黒猫が城内へ、なだれ込む。
城内に待ち構えるリアナ王国軍と黒猫の乱戦が始まる。
狭い城内では、範囲タイプの魔石は使えず、得物と得物がぶつかり合う。
城門前では、カルミナとモルガの悲しき死闘が繰り広げられていく。
すべての狂った歯車が崩れながら激しく廻る。
城の真上から真下を眺める紅に染まりし女王ライムはその光景を見て、神に祈りを捧げながら笑った。
激しくぶつかり合う二人。
カルミナの魔石【線鬼】が数百の線を束ねた数ミリの無数の鋼の糸が弾丸のような速度でモルガ=グレイヴに襲い掛かる。
“ギッギッギギーー”
モルガへと向かい来る鋼の糸を次々に剣の角度を変えて、受け流していく。
連続で繰り出すカルミナの糸が剣に弾かれ、それと同時に距離を詰めるモルガ。
そして、モルガの剣がカルミナが操る鋼の糸を抜け、腹部目掛けて襲い掛かる。
ブシャ……肉体が貫かれる音が鳴り響く戦場、カルミナはその瞬間、歯を食い縛り、苦悩する。
「繋がりなくとも、立派に育ったものよ」
「モルガ……」




