生きる者達×戦う者×ガドロヌの夜明け……6
街の中心から吹き荒れる風は次第に激しく鋭い物へと変わる。
風薙は全身に再度、風を纏わせると二本目の刃を抜く。
両者の刃がぶつかり合う最中、双剣となり、敵の懐へと刃を滑り込ませようと前に刃を押し出す。
「ハアァァッ!」
その動きに対して、ダゥは空いていた片手を刃に合わせて前に出す。
ダゥの出した手には、数個のビー玉程の大きさをした鉄球が円を思わせるように獣の皮紐で各指と手首に固定されている。
「いい判断ですが、無駄ですね……」
風薙の速攻による攻撃に合わされた手が刃を軽く弾き飛ばす。
それと同時に、ダゥから距離を取る風薙。
攻防と言うには明らかな実力差があり、攻めるも通らぬ攻撃に対して風薙は危機感を全身に感じていた。
〈間違いなく、魔石の能力だろうが、訳がわからねぇ!〉
「おや、流石に仕掛けてきませんか……残念ですねぇ……」
ダゥは悲しそうに呟くと、小刀に込めていた力を緩める。
一瞬の緩みは風薙の刃を懐へと誘うと同時にバランスすらも飲み込んでいく。
次の瞬間、風薙の刃を軽々と躱したダゥの刃が風薙の腹部に突き立てられる。
「ぐっ!」
「……ふむ、浅かったですか……ギリギリで致命傷を回避するなんて、正直、驚きました」
風薙はダゥに対して風を起こすと同時に自身に対しても風を当てる事で小刀の先端のみが微かに当たるギリギリで回避に成功していた。そうでなければ、腹部から脇腹にかけて切り裂かれていただろう。
「私は……貴方みたいな人は嫌いじゃない、実に優秀な戦士だと感じます」
「誉めて頂き、ありがとうよ……なら、引き分けって事で済ませてくれないかなぁ……なんて思ってるんだが……無理かな?」
ニヤリと笑うダゥ。
「無理だなぁ! お前は戦士として素晴らしい、本当に心からそう感じるぞ! だからこそ……始末しておかねばならん!」
前に伸ばされたダゥの手に付けられた小さな鉄球が形を変化させ、かえしの付いた刃へと変える。
両者が距離を取ると、互いに両手に握った刃を全力で前に向ける。
激しくぶつかり合い、刃が火花を散らすように音を発てる。
風を切り裂くダゥの刃が次第に風薙を追い詰めていく。
そんな猛攻が続く最中、ダゥの刃が風薙の肩を掠める。風薙の体勢が崩れた瞬間、ダゥが心臓目掛けて刃を突き立てる。
ダゥの一撃を予想するように起こされた砂埃、その瞬間、ダゥの足に激痛が走る。
「ぐあっ!」
「へへ、イテェだろ! 悪いが……負けてやれないんだよ! ハアァァッ!」
両足に投げつけなられた双剣、ダゥの怒りに満ちた一撃を回避する風薙。
そして風薙の背後から、ダゥの予期せぬ一撃が凄まじい速度で射ち放たれる。
ダゥの両肩を撃ち抜いたのは、先端が折られた木製の矢であった。
「クァァッ! 戦士の戦いに横槍を入れるかぁッ!」
ダゥの怒り、しかし、両手に力は既に入らず、小刀とナイフが地面に落ちる。
「終わりだ! お前は勘違いしてるぜ。此れは傭兵の戦いだッ!」
ダゥに振り上げられた拳が顎に打ち出され、ダゥの意識が揺らぐ。
朝の空気に包まれた奇襲はこの一撃と共に成功させたのである。
気絶したダゥを見つめる風薙は軽く両手を合わせると本来の作戦をそのまま、遂行する事になる。




