第五の関所×領主の所有物×優しい声……2
関所の門を閉ざそうと役人達が動き出す。そんな慌ただしい時刻、1つの集団が馬の手綱を握り、関所の入り口へと進んでいく。
マスクを装備している姿に気づいた役人の一人が面倒だと言わんばかりに、ダミ声で声を掛ける。
「お前ら、旅人か? 悪いが関所の門は閉めさせて貰う、明日の朝にでも来るんだな」
厄介払いをするように手を軽く振って見せる役人。その瞬間、先頭を歩いていたキャトルフが時計台を指差す。
「まだ、終了の鐘が鳴ってないだろ……それとも、法律を重んじる第五の関所【シスイ】では、時間すら守らないのが一般的なのか?」
役人が苛立ちながらも、ゆっくりと口を開き、笑みを浮かべる。
「た、確かに、まだ鐘が鳴ってなかったみたいだな、失礼した……取り敢えず、身分が分かるものを提示してくれ」
役人はそう語ると真っ先に、兄妹に視線を向ける。
明らかに他の者達と違う身なりをしている幼い兄妹、装備を整えたキャトルフ達と並べば、不自然としか言いようがない違和感を役人に与えていた。
予想の範囲であったキャトルフは親権が書かれた書類を役人に確認させる。しかし、予想外の答えが返される。
「おい、おい、此れは身分を証明するには不十分だ。残念だが……その二人は通せねぇなぁ?」
確かめるように、もう一人の役人も書類を確認する。
「嗚呼、確かに不十分だ、残念だな、だが……少し通行料を多く支払ってくだされば、此方で足りない部分は何とかしますが? どうなさいますか?」
揶揄うような、歪な笑い声を役人達が微かにあげる。
狂気に満ちた殺気が関所を包み込むように向けられる。
「おい、今、うちの団長を笑ったな?」
「……間違いなく、マスターを侮辱した……」
「そうっすね、間違いなく笑ってたっすね」
「悩まず、切り刻めばいいのよ……時間の無駄だわ」
団員達の言葉に役人達は煽るように声を張る。
「なんだ、お前ら! なんか文句があるのか! この第五の関【シスイ】は、身分を示せぬ者を通す訳にはいかぬのだ!」
その言葉に真っ先に反応したのは、団長アルベルム=キャトルフであった。
「身分を示せばいいんだな、その言葉に偽りなく、引っ込める事もないんだなっ!」
役人達は声に出来ない程の恐怖を感じながらも、首を縦に振って見せる。
「ならいい……黒猫の団として、身分を示すっ! 傭兵である俺達は今より第五の関所【シスイ】を攻略、ならびに……敵対象の生きたままの捕縛を行う!」
「あははっ! そう来ないとね、殺すよ!」
「待って、モディカ隊長、生け捕りっすよ!」
情報収集部隊の隊長と副隊長が速攻で動きだす。
「たく、団長……いきなりすぎっしょ? 参ったなぁ、まあ、仕方ないか? なぁ、アルガノ特攻隊長?」
「風薙……うるさい。関所ごと……擂り潰すから、邪魔しないで!」
団長命令を耳にし、悩む事無く武器を手にする9人の傭兵。
「ゲルダ、俺も戦って来るから、兄妹の事を頼む」
新しい玩具を目の前に箱を破り遊びたいと迫るような目をした者、全てを壊し尽くしたいと破壊衝動に駆られる者、たった十人の傭兵が武器を手にしただけの状況とは思えない殺伐とした空気に役人達は慌てて、閉じかけた門の中に飛び込み、内側から板を嵌め込み鍵を閉める。
関所とは本来、敵を通さぬ為の砦であった。門が閉じれば籠城する事が可能であり、役人達は直ぐに【シスイ】の領主の元に報告に向かっていく。
しかし、黒猫の団は門が閉ざされようと止まる気など無かった。寧ろ、壊すと決めたキャトルフの思考には最初から中止などと言う考えは存在しないのだ。




