生きる者達×戦う者×ガドロヌの夜明け……2
静まり返った霧雨が降る最中、四勢力連合は歩みを進める事となる。
要塞に残る者達は第二の関所がある【ガドロヌ】へと向かう同胞を数多の感情を懐きながら見送る。
ラタナ要塞を出発して、二日目の夜がやってくる。目的地である【ガドロヌ】まで一日の距離に移動していた。
雨は止むことなく、強まり続け、四勢力連合の全員が移動中は雨に晒される結果となり、体力を予想より早く失っていく。
士気その物は高いが、二日も降り続く雨に体力回復は厳しく野宿の際にも、雨の中でのテントに慣れぬ一部の兵士達の存在があり、士気の低下は時間の問題である現実が僅かながら見え隠れし始めていた。
“たった二日”皆はそう思い、口に出さないよう、自身に言い聞かせて歩いていく。
足元は悪く、泥と砂利が混ざり合い、各々の体力を削っていく。
連日の雨と足場の悪さ、戦場へと近づくにつれて、状況は徐々に悪くなっていた。
そんな最悪の状態を嘲笑うようなタイミングで、グレストロ軍は四勢力連合に奇襲を掛けたのである。
グレストロ軍が選んだ奇襲場所は木が生い茂る獣道の坂であり、登りきれば、平地が広がる狩人が使う山道であった。
四勢力連合も普段、軍が使っていない道である事から、奇襲を予想する者は少なからず居たが、突如現れた大軍に対して即座に対処出来る程、皆に余裕は存在しなかった。
雨により、滑りやすくなった坂道、その頭上からはグレストロ軍の兵士が矢を放つ状況となっていた。
坂を必死に登ろうとも、弓矢で射ぬかれていく現実に、獣帝国軍は、身軽な者から次々に木々を足づたいに坂の上を目指して反撃を開始する。
しかし、それを予想していたように、木々を移動していた獣帝国軍が木から落下していく。
既に木の枝には鋭い切り込みが入れられており、子供が二人程、ぶら下がれば落下する状態になっており、木々を即座に移動する獣人と言えど、足場が着地と同時に落下すれば、対処のしようがなかった。
敵の手中にハマった事実を知り、次に動いたのは黒猫の団、獣戦士特攻部隊であった。
一人の獣人女戦士が剣を構えると次々に頭上から降り注ぐ矢を物ともせず、坂道をただ、只管に真っ直ぐと駆け出していく。
最初に我慢の限界を迎え動きだした一人とは、黒猫の団、獣戦士特攻隊──副隊長、セラ=シェルムであった。
「団長、済みませんが……先陣を頂きます!」
そう告げるセラに対して、キャトルフは自身も動こうとするが、セラの部下達がそれを制止する。
「すみません、団長。ですが、姐さんは本気です。どうか、見ていてください!」
「お願いします! 団長!」
キャトルフの動きを止めるとセラの副隊長直属の部下達が続いていく。
そんな最中、次々に矢がセラに命中していく。
しかし、セラは矢を軽々抜き払うと笑みすら浮かべる。
グレストロ軍も先陣の切るセラの異常さに気づき、新たな手段を用いる。
「今すぐアレを使うぞ!」
「わかりました! 直ぐに前線を下げます!」
弓矢部隊が後方に下がると同時にセラ隊が一気に坂を進む。
それを合図に坂の上から黒い液体が大量に放出される。
その瞬間、風薙が最大で声をあげる。
「早く逃げろッ! それは油だ!」
風薙の声が響くと当時に、煌々と赤く燃え上がる松明が坂道に大量に投げ放たれる。




