水路の悪夢×屍の宴×新たなる者達……6
互いの意見が交差し終わると、サルバ司令官は納得いかないと言う表情を浮かべながらもキャトルフの意見に対して質問を口にした。
「ならば、どれだけの兵が残れば貴様は納得するのか、教えて貰おうじゃないか!」
「やっとかよ、だが、安心したぜ。意見すら聞き入れないなら、協力なんて無理だからな」
「御託はいい、早々に話せ、若造」
「そうだな、少なくとも、魔石を所持した兵が五十、更に通常の兵であれば、二千を残したい。これでも少ないくらいだがな」
ラタナ要塞の兵士は総勢五千強であり、ライム女王と帰還した部隊が三千であった。
特務隊や、偵察部隊を合わせても、現在のラタナ要塞の戦力は一万弱であった。
「ぬぅ……三千だと」
「そうだ。寧ろ、この規模の要塞にしては兵が少なすぎる。食糧や物資に関しても詳しく聞かせてほしい」
* * *
リアナ王国──ラタナ要塞
クーデター当日、街としての賑わいを見せていた要塞の市街地で複数の不審火が発生する。
軍部から選ばれた兵士が兵糧庫の見張りと言う口実で配備され、多くの兵士達が要塞内の警戒と市街地での不審者の発見に向けて動き出していた。
その際、サルバ司令官も自ら部下を連れて街に出向き、不安を感じるリアナ王国国民に対して、励ますように声をかけていった。
そんな最中、ラタナ要塞と市街地で複数の黒煙が上がる。
「何事か、くっ! 一番近い黒煙に向かう、お前達は他の黒煙に対して部隊を早急に向かわせよ! あとの者は我に続け!」
黒煙の正体は街に存在する食糧備蓄用の軍事施設であり、外から見れば単なる空き家に見えるようにカモフラージュされた物であった。
「偶然か……いや、そんな分けねぇか……すぐに食糧備蓄庫を調べよ! 急げッ!」
数多の煙の先には最悪のシナリオを現実にしたような光景が広がっていた。
街でも上がり始める不審火に対して兵士達が不審者と実行犯を捕らえたと言う報告が上がる、実行犯が複数である事実が同時に報告され、早急に増援が送られ始める。
次々に増援が合流する事となる。しかし、それこそが相手の狙いであった。
その場で拘束された不審者達の元に増援が合流する。その瞬間、不審者達は命を弄ぶように自身の体に仕組んだ人造魔石を最大で起動させた。
人造魔石の暴走を誘発させ、増援の兵士共々、食糧備蓄庫を爆破したのだ。
その行動はサルバの目の前でも同様に行われた。しかし、合流が若干遅れた結果、サルバは難を逃れた。
それこそが、ラタナ要塞の最悪の始まりであった事実をサルバは直ぐに知ることとなる。
リアナ王国でクーデターが起こると、天高く真っ赤な光が上がる。
ラタナ要塞の内部で其れを合図に新国家グレストロ派の軍が半期を翻し、内戦となる。
半数の者が軍上層部と共にラタナ要塞の占領を強行したのだ。
サルバは即座に部下達を指揮し、グレストロ派の裏切り者達と戦闘を開始する。
リアナ王国最大の軍事拠点であったラタナ要塞の内部で起きた戦闘は七日間続き、それにより、五万を越える兵は最終的に一万まで減る事になる。
サルバは死闘の末に、軍上層部の幹部を討ち取る事となる。
その後、グレストロ側に寝返った兵士達は新国家グレストロに向け逃亡する。
追撃を考えたサルバであったがラタナ要塞の内情は酷く、追撃部隊の編成を諦め、ラタナ要塞の復興に兵を向ける結果となる。
その際、追撃に兵を向かわせなかった理由として、本国より、逃げ延びたライム女王の存在があった。
急ぎ尖兵がラタナ要塞を訪れると女王の無事をサルバ司令官に伝え、更に増援を願い出てきたのだ。
グレストロ派に寝返った兵士達は、本国からの脱出部隊であると即座に気づいただろうが、攻撃はせずに離れたルートを通り逃げおうしていたのだ。
女王の保護に対して兵を動かすか、追撃に対して兵を動かすか、悩む必要もなく、ラタナ要塞はライム女王の保護に兵を向かわせたのだ。
ラタナ要塞の兵は減り、更に食糧は大幅に減る事となり、国民にも被害と食糧問題が起こっている内情が伝えられたのだった。




