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聖職者協会×信徒の祈り×再生の光……6

 時間にして、八分が流れようとしていた。

 全身から流れ出る血液に次第に疲労感と内側からの(かわ)きが動きを鈍らせる。


「ハァ、ハァ……そろそろ、決めないとか……」

〈マジに限界が近いな……急がねぇと……〉


 キャトルフは既に自身の体が限界である事実を理解していた。

 それと同様に、魔石(アーティファクト)の制限された空間で強制的に魔石(アーティファクト)を発動させていたミリアにも変化が現れていた。


 水の膜を延々と削られたミリアもまた、魔力の限界を迎えようとしていたのである。


「……お願いだから、もう……死んでよ」


 小さく呟かれた幼い言葉、キャトルフはその言葉に刀を強く握り直す。


「悪いな、大人の事情で負けてやれないんだ……だから、止めさせてもらう」


 キャトルフが一歩前に足を踏み出した瞬間、水の散弾と刃のように鋭い水の鞭が一斉に襲い掛かる。


「悪い……大人でごめんな、俺に触れる飲み水以外のすべての水を“否定する”……」


 水がキャトルフに触れる寸前で蒸発する様子にミリアは更に水の散弾を連射する。


 それこそが互いの勝敗を決める事となった。


 本来、戦闘になれている者ならば、戦術を塞がれても致命傷を相手に与えた時点で無理に攻めたりはしないだろう、しかし、戦闘に対して素人であるミリアはそうは考えなかったのだ。


 キャトルフは次第に小さくなる水の膜に迫り、ミリアの間合いに入ると刀を確りと握りながら、ゆっくりと下に向ける。


 生きている以上、死は免れない現実であり、その恐怖を目の前にしたミリアの感情に変化が現れる。


 無意識に震える体が水の膜を震わせ、更に抵抗しようと思考を巡らせていたか、答えを見つけられずにいた。


 次の瞬間、刀が下から斜め上に向けて振り上げられる。水の膜が切り開かれ、ミリアの姿が露になるとキャトルフは刀をゆっくりと、床に突き立てる。


「遅くなったし、色々とずるをしてしまったな、ミリア……俺はミリアの感情を縛る事を“否定する”……怖かっただろう」


 キャトルフは優しく、ミリアを抱きしめる。


「う、うぅ……うわぁ……皆、皆……死んじゃったの、なんで、なんで……私の家族は普通だったのに、私が、私が選ばれたから……うわぁぁ……」


 幼い少女の泣き声が室内に響き、縛られ闇に飲まれていた表情が噴き出すように内側から溢れ出したミリアは自ら無意識にキャトルフを抱きしめていた。


「すぐに、俺の仲間がミリアを助けてくれる。大丈夫だ、泣くな……俺はまだ、やる事がある……此処で待っているんだいいな?」


「だ、ダメだよ……だって、血がいっぱい出てるじゃん……おじさんも死んじゃうよ……」


 優しく微笑むキャトルフ、しかし、次の瞬間、その場に倒れる。


 ミリアが慌てる最中、奇跡は起きたのだ。


 聖職者協会本部を突如として、凄まじい震動が襲う、四方で別々に起きた爆発と震動の後、出入口と壁が粉砕され大勢の獣人と人間、エルイの民達が姿を現す。


「遅くなったッ! 大丈夫か、おい、キャトルフ!」


 少女が怯える程の恐ろしい声と表情を向けるペリグロッソ。


 そんな、横から姿を現したのは、風薙が外に連れ出した神父であった。


 水神の巫女であるミリアの存在を恐れながらも、酷い状態のキャトルフを前に駆け出していく。


「いけない、こんなに血を流しては、助かるものも助からない……なんとかしなければ!」


 神父が慌てて、回復に全身の力を使う、そんな時、ミリアが神父に声を掛ける。


「血液を集めて、流れ出す前の状態に戻します。その為に、おじさ……キャトルフさんの血を私にください」


 ミリアはそう語るとキャトルフの血を指に取り、口に持っていく。

 魔力の全てを使いきる勢いでキャトルフの流れた血液が球体状になり、混ざった不純物を取り払われる。


 輸血するように体内にゆっくりと戻される血液と神父の必死な回復が開始される。


 ペリグロッソは数名の部下をその場の護衛に残すと奥にある階段を目指して歩きだす。


「ソイツは大切な義理の娘の婿でな、済まないが助けてやってくれ」


 そう語ると獣の本能を表面に出すように怒りを露にするペリグロッソ。


 そんな最中、予想が外れ、ミリアが敗北した事実に気づいた教皇ダルムンドは慌てて逃げる用意を始めていた。

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