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聖職者協会×信徒の祈り×再生の光……4

 三組の戦いであった筈の戦況は三対一の形になり、それは、キャトルフ達の望む結果ではなかった。


「アルガノ、大丈夫かッ! 何が起きてるんだ。スエル……意味がわからねぇぞ、お前は、なんで、何時も命を狙われてんだよ!」


 アルガノを抱えながら、キャトルフの声が響く。


 急ぎ、傷口に布を押し当て、止血するキャトルフ。


「颯彌、血が止まらねぇ! 普通の処置じゃ駄目だ、ゲルダ婆にすぐに見せる必要がある、頼めるか!」


「あ? それならキャトルフがいきなよ。その方がアルガノも……」

「お前より、早く移動できる奴を俺は知らない。頼む、カヤンを死なせたくないんだ……」


「チッ、貸しだからな。任せろよ、アルガノは絶対に助けるから、待ってろよい」


 風薙はアルガノを抱えると、即座に走り出そうとする。


 そんな時、出入口の側で意識を失う神父の姿が目に入る。


「……ハア、起きろ! 意識戻さねぇと、本当に死んじまうぞ?」


 軽く小突かれ、意識を取り出す神父は、アルガノの傷を眼にすると、おろついた表情を変えた。


「その傷は、その娘をどうするつもりです?」


 神父の言葉に風薙は苛立ちながらも、時間を考え、無視しようと考える。


「心配は有り難いが神父さん、悪い……時間ないんだ」


「ならば、直ぐに下ろしなさい! そのまま行けば、確実にその娘は助からない!」


 風薙の動きが止まる。


「三秒で返答しろ、何故、言い切れる」


 一分一秒を争う最中、風薙は力強く叫ばれた神父の言葉に対して質問を返す。


「私は……過去にリアナ王国軍に潰された小国の中級の回復士なんです……人間の争いが嫌になり、信仰の道に進む事にしたのです……だから言える。そのまま、外に出れば、確実にその娘は死ぬ」


 風薙は静かにアルガノをその場に寝かせる。


 苦肉の策とも取れる選択であった。しかし、ウォルベアの外に待機する回復師ゲルダの部隊に戻る前にアルガノの命が尽きるであろう可能性を天秤に掛けた結果でもあった。


 神父はアルガノの傷口に手をあてる。手が輝き出すと神父の額からは汗が噴き出し直ぐに蒸発すると言う、不思議な光景が広がる。


 最初こそ、痛みに苦しんでいるように見えたアルガノであったが、呼吸は次第に落ち着き、顔色に変化が現れ出す。


 アルガノから手を離すと神父は、直ぐに風薙に質問をする。


「貴殿方の仲間に上級の回復魔石(アーティファクト)を有した方は居られますか……傷は治せましたが、出血が酷く、私の力では流れ出した血までは元には戻せません」


 悔やむように、目を瞑ると拳を握る神父に対して、風薙は質問する。


「アルガノ……そいつは、どれだけ耐えられる?」


「え、時間にして、常人ならば、三時間……獣人ならば、半日といったところです……大口を叩きながら、私は……」


 涙すら浮かべ、悔やむ神父に対して風薙は肩を軽く叩く。


「アンタのお陰で仲間が助けられる。感謝する。提案……いや、今すぐアンタも此処を出るぞ」


 出入口の外は魔石(アーティファクト)の妨害により、室内と外で別の空間が出来ており、大量の水が建物を包み込んでいる。

 そんな状況で神父が一人で逃げる事は困難であり、それを理解していた風薙は神父に手を差しのべたのだ。


「私は君達から見れば、敵になるんだが……」


「嗚呼、敵だろうさ、でも、仲間を救った恩人でもあるんだよ。オレの故郷じゃ、恩はキッチリと返すのが当たり前なんだよ? 因みに拒否権は無しだけどな?」


 神父とアルガノを両手に担ぐと全身を風で包み込む。


「外に出たら、少し苦しいが我慢してくれよ、いくぜ!」


 風薙は、そう言うとキャトルフと水神の巫女、ミリアを残しその場を後にした。


 外に出た風薙は即座に水の流れに飲み込まれるが、風を内側から発生させる事で水を弾き、脱出することに成功する。


 風薙は建物の屋根に移動し、次々に高い建物に移動する。


 シュゲンとライム女王を見つけた風薙は、その場に止まると神父を下ろし、アルガノを救おうとした事実を伝える。


「と言う訳だ、このおっさんは恩人だから、手を出すなよな。それじゃ、アルガノをゲルダ婆さんに届けて来るから、後を頼むわ」


 神父は理解に苦しみながら、その場に居合わせたリアナ王国、四十一代国王。ダンベルム=リアナ=ライム女王の姿を前に、頭を下げる。


「ダンベルム女王陛下……御初に御目に掛かります。私はどのような罪も(いと)いません、覚悟は出来ております」


 ライム女王は神父の言葉に対して、静かに声を発した。


「貴方は、黒猫の恩人なのでしょう、ならば、面をあげなさい。私達は殺し合いをしたい訳ではありません。全ての現況に向けて突き進んでいるだけなのです」


 神父はライム女王の言葉に驚きながらも、更に頭を下げたのだ。

 

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