聖職者協会×信徒の祈り×再生の光……2
四勢力連合は合流後、市街地を抜け、中央に聳え立つ聖職者協会の本部へと進んでいく。
既に住民達は敗北と蹂躙を覚悟しながら、ロザリオを握り締め神に救いを求める者ばかりであった。
絶望と不安が街全体を包み込む最中、キャトルフは聖職者協会の扉に手を掛ける。
罠が無いことは既に確認されていたが、扉の向こう側には、魔石避けの結界が造られており、敵の人数と扉から離れた位置の罠は把握できない。
扉の向こう側に何十人といった敵が待ち構えていた場合、先手を取れる存在がいなければ、最後の最後で更なる被害に繋がると判断した結果、元より予定していた黒猫から、キャトルフ、アルガノ、風薙の三名が先人を任される事となったのだ。
目で合図をするとキャトルフがドアノブをゆっくりと回す。
扉が開かれた先は教会になっており、ロザリオを手に必死に祈る信徒達の姿があった。
キャトルフ達の存在に気づくも祈りを止めぬ信徒の姿に皆が驚くも、一人の神父が、そんな異常な世界に声をあげる。
「帰りなさい! 此処に争いを持ち込む事は赦されません!」
神父の力強い声が室内に響き渡る、声事態は震えている。
勇気ある行動と言えるだろう。しかし、それは戦場では意味を持たない危険な勇気でしかないのだ。
「先に争いを持ち込んだは、お前達、ウォルベアだ、それとお前はともかく、後ろの連中は殺気が駄々漏れだ……下手な芝居をうったな?」
キャトルフの発言に信徒として振る舞っていた聖騎士達が襲い掛かる。
長椅子の間に身を潜めていた者も含めて、三十人程がキャトルフとアルガノ、風薙に向かって剣を手に駆け出していく。
その行動はキャトルフ達の予想を遥かに上回る単調な動きであり、アルガノが前に即座に移動すると長椅子の背を含め、敵もろとも全てを切断する。
凄まじい力で周囲の全てが壁に向かって叩きつけられ、室内が真っ赤に染まる最中、キャトルフは腰を抜かす神父を見下ろす。
「教皇は何処だ? 言いたくなければ構わないが、うちの新しい情報収集隊長は、優しくは聞いてくれないぞ?」
神父は固唾を飲み込み、顔を青ざめさせる。
そんな最中、奥にある階段から小さな足音がする事にアルガノが気づく、その直後、室内に入ろうとする四勢力連合に対して、大きく「水ッ! 逃げろ!」とアルガノが声をあげる。
凄まじい量の水が突如現れると、アルガノを背後から一気に押し流す。
キャトルフは即座にアルガノを捕まえると刀を床に突き立てる。
「颯彌ッ!」
「わかってるっての! ハアァーーー!」
キャトルフの刀に風薙の魔石が風を作り出し、水が左右に切り裂かれていく。
その間に、外に待機していた四勢力連合の者達も水に回避するように移動を開始する。
移動が間に合わないリアナ王国の兵士達も獣人達により、建物の上に次々に投げられる。
シュゲンの魔石により、植物の根や蔓が建物の屋上で兵士達を受け止めていく。
そうこうとしている間に地上が水で溢れ出す。
「くっ、キャトルフ達は大丈夫じゃろうか……妾も、先人に加わればよかったかのぉ」
シュゲン達は外から内部に魔石を使い侵入出来ぬ事実に顔を歪める。
室内の水が全て外に流れ出すと、キャトルフ達の前に一人の少女と二人の人影が姿を現す。
水神【コリエンテ】の巫女──エリスト=ミリアの姿があった。
その背後には姉であるエリスト=スエルとその父であり聖騎士長である男の姿があった。
キャトルフは三人を前に面倒くさそうに声を出す。
「たく、嫌になるんだが、もう、あの時の言葉を忘れたのか? パパさんよぅ?」
聖騎士は笑みを浮かべると口を開き語り出す。
「貴様こそ、この状況を理解していないんじゃないか? この場所は我々のテリトリーなのだが?」
余裕を口にする聖騎士長に対して、アルガノが前に出ようとするが、それを風薙が止める。
「悪いが、女をいたぶる趣味はないんだ。野郎は譲って貰うぜぇ」
「あんた、勝手、でも、誰が相手でも構わない……好きにしていい」
「ありがとうよ、アルガノ」
その瞬間、互いに相手が決まる。
風薙 対 聖騎士長。
アルガノ 対 エリスト=スエル。
キャトルフ 対 エリスト=ミリア。
と、言う図が出来上がる。自然五精神最後の一人であり、水の都【ウォルベア】の化身と言える存在であり、聖職者協会の最後の砦であった。




