傭兵の維持×大地と大樹×神の器……4
土人形に向かって放った一撃は、土人形の腕を切り落とし、ライム女王の救出を成功させる。
「よし、手の掛かる姫じゃな、いくぞ……クッ!」
しかし、その直後にシュゲンの肩に激しい痛みが襲い掛かる。
凝縮された鈍器状になった土の塊が肩を粉砕したのである。
「ヌガァーーーッ!」
「ウゴォーーーッ!」
雄叫びのようにあげられる土人形の叫び声。
次第に地面から形成される土人形達にエルイ・リアナ王国軍は更なる窮地に追い込まれていく。
しかし、シュゲンは土人形に対して、樹木兵を即座に向かわせる。
「足止めと怪我人の移動を優先じゃ! 相手は知能無き土人形じゃ! 冷静になれば、恐るる相手にあらず! よいなぁッ!」
シュゲンの言葉は皆に一瞬の光を与え、兵の心を高ぶらせる。
その時、土人形達が一斉に片腕が動かせぬシュゲンに向けて襲い掛かったのだ。
慌てて樹木兵達が壁となり、土人形をエルイ・リアナ王国軍が攻撃する。
暗闇の中で僅かな光に照らされる終わり無き敵の強襲、異常な状況であり、混乱すら生まれる状況の最中……只、静かに耳を澄ますシュゲンの姿があった。
「シュゲン様ッ!」
「長様!」
「何をしているのですか! シュゲン様ッ!」
次第にシュゲンの元に土人形達が迫り始めるも、動かぬシュゲンにエルイの戦士達が声をあげる。
ライム女王も同様に涙を浮かべながら、シュゲンに訴えかけるように服を掴む。
そんなライム女王の頭を優しく撫でるシュゲン、その顔は勝利を疑わせない自信に満ち溢れた物であった。
「皆、よく耐えた。今より反撃に転じる……よいな!」
「シュゲン様……はい!」
シュゲンは砕けた肩の復活を優先していた。しかし、沈黙していた理由はそれだけではない。
地面に手を伸ばすシュゲン。
その瞬間、エルイの戦士達はシュゲンが動かなかった真の目的を把握した。
シュゲンを中心に土人形達が発生していなかった事実が露にされる。
地中から無数の樹の根が姿を現し地面を砕く。
それと同時にシュゲンが即座に走り出すと兵士の一人に斬り掛かる。
「ハアァーーーッ!」
「うッ!」
兵士が慌てて、シュゲンの剣を回避する。
シュゲンと反対側に逃げる兵士の背後には土人形の大軍がいるも、兵士を襲う気配はない。
「な、何で襲われないんだ?」
「どうなってやがる、此方は未だに、攻撃してくるのに!」
攻撃を回避した兵士を指差すシュゲン。
「猿芝居をやめよ。もう、キサマが異種であると明らかになったからのぉ!」
兵士はクスクスと不気味に笑みを浮かべ、変装に使っていた防具を投げ捨てる。
「もうバレちゃったか、本当につまらない……馬鹿ばっかりなら、もっと楽だったのにさ……」
一番巨大な土人形の肩に抱き上げられると、すべてを見下すように上から下に向けて視線を向ける。
「私は土神【ディエラ】の巫女、グヤル=テスト……あんた達みたいな虫ケラを潰す存在よ、あはは」
土人形が壁から次々に生まれ出される。数十体の土人形が勢いを強めていく。
「さあ、どうする? どうする? アンタ達も他の連中と一緒ね……」
シュゲンはグヤルの言葉を嘲笑うように声をあげる。
「ふっ、仲間を信頼できぬ小さき器に愚弄されるなど、笑止! 貴様に足りぬ物を有する妾達が負ける訳なかろう?」
「はあ? 意味がわからないし……アンタの言い分なんか、そもそも……」
「悔しかろう? 信用できる存在がおらぬのだからなぁ……哀れよなぁ?」
シュゲンの挑発、その瞬間……怒りを露にするグヤルは、すべての土人形を即座にシュゲンへと向ける。
「お前みたいな奴が一番ムカつくんだよッ!」
次々に襲い来る土人形達、しかし、シュゲンの前には盾を構えたエルイの戦士達が攻撃を防ぐ。
「おいおい、何で、うちの長に向かって、いきなり攻撃してんだ?」
「だな、俺等の長姫に、もう攻撃させるか!」
最初の一撃を自分達の力不足と感じていたエルイの戦士達は防衛に全力を尽くす。
「さあ、大将戦と行こうじゃないか、主の力を示すがよい。戦神として、全力をもって屠ってやろうぞ!」




