過去の悪夢×リアナ王国×囚われし者……6
小屋の外へと向かうキャトルフ。そこには二人の団員が深刻な面持ちで立っていた。
一人はワーリス=モディカ。
ワーリス=モディカ
──【黒猫の団】情報収集部隊、隊長。
美しい容姿に完璧なスタイル、小麦色の肌に銀色の長い髪、誰もが認める絶世の美女だ。
性格は残虐非道、不意討ちと暗殺を得意とすると同時に拷問を愛するサディストである。
拷問部隊からも、モディカの拷問は異常であると言われる程であり、高い知能と好戦的な性格とは裏腹に子供に優しい一面を持っている。
「単刀直入に言うよ、キャトルフ団長。あの子達は絶対に連れていく!」
予想だにしないモディカの強い口調に驚くキャトルフ、そんな横から手を伸ばしモディカを宥める男。
「ちょっと、ちょっと、落ち着いてください。モディカ隊長、いきなり過ぎて団長が困ってるじゃないっすか」
男に諭され、モディカの勢いが収まる。
「いやぁ、すみません、団長。モディカ隊長、今回の情報収集で、かなり頭に血が上ってるっす。困ったもんす」
団長に対して、頭を下げる男、名をデルモ=グリム。
デルモ=グリム
──【黒猫の団】情報収集部隊、副隊長。
頼りない雰囲気を持ち、影が薄く、ワーリス=モディカのパシリ的存在、情報収集を得意とする。
普段は黒猫の団に対する傭兵の依頼などを散らばっている団員に知らせる文章などの作成を行っており、戦場を好まない性格。
隊長である、ワーリス=モディカがやり過ぎて、対象を死亡させた際などに死体の処理なども担当している。
「実はですね。少し問題もありまして……あはは」
「笑ってんじゃないよ! グリム!」
怒鳴り声に体を震わせるグリム。
話が本題に入ると、キャトルフはその事実に驚愕する。
「情報収集の結果から報告するっす、【シスイ】の周りにある、まぁこの小屋もなんすけど、全て領主の所有物なんす。因みに……あの兄妹もそれに含まれてるっす」
兄妹が所有物である事実を聞き、キャトルフは自身の過去と重ね合わせた。
当然ながら、未だに奴隷制度は廃止となっている事実は変わらない。
しかし、第五の関所である【シスイ】では、当たり前のように人間が商品として扱われていたのだ。
「まだ、続きがあるっす。ちょっと言いにくいんっすけど、あの兄妹の所有権が既に領主から他の者に移ってしまってるみたいなんっすよね」
グリムからの報告を聞いている最中、商人とおぼしき男と数人の柄の悪い男達が小屋に姿を現す。
「オホホ、さて、今回はどんな子なのかしら、セットの特売品なんて、ワクワクしちゃうわね」
オカマ口調に似合わない、品のない顔とたるんだ体型、見た目から不快感を漂わせる商人は奴隷商人だ。
「ボス、小屋の周りに誰かいますが、どうしますか?」
「関係ないわ、あの商品の所有権を持っているのよん。誰も私を止められないわ。 さぁ、ボーイズ、早くお行き! 今すぐ離れたいの、臭くて堪らないわ」
男達は言われるがまま、小屋に向かって駆け出していく。
「はぁ、困るっすね。まだ、報告の最中なんっすけど?」
小屋に向かって走り出す男達の前に凄まじいスピードで移動するグリム。その両手が先頭を走る男の体を確りと掴み、宙を舞うように地面に向けて叩きつけられる。
一瞬の出来事であり、その光景を目の当たりにした、男の仲間達すら何が起きたのか理解できず、呆然とその場に立ち尽くしていた。
「な、何が起きたんだ?」
地面に横たわり、気絶する仲間の姿に再度、混乱する男達。
呆れるように男達に対して溜め息を吐くグリム。
「テメェがやったのか! チビが!」
男達の一人が大声で怒鳴り、罵倒を開始する。
脅しや牽制のつもりだったのだろう、その言葉はグリムの逆鱗に触れた。
キャトルフとワーリス=モディカが止める間も無く、それは起きた。
男達が宙を舞い、地面に顔面から叩きつけられる……速攻にして単純なまでの狂激。
低身長のグリムから誰が想像しただろう、その光景に奴隷商人は口を大きく開き、身を震わせた。
「な、なんなのよ……意味が分からないわ……何で、私のボーイズが、なんで地面にめり込んじゃってるよ!」
怒りのままに暴れるグリムを前に声を震わせる奴隷商人。そんな震えた肉の塊の前に殺気だった瞳が静かに向けられる。




