蜘蛛の生涯×絶望の笑み×雲なき大地……6
ソル=シシルを討ち取らんと戦い傭兵団からは多くの犠牲が出る事となり、団長各の全滅は傭兵団員達の冷静な判断を鈍らせる事となる。
それはソル側も同様であり、生き残った双方の陣営は弔いを誓い胸に誓いぶつかり合う。
「よくも、うちらの団長をッ!」
「エレドリオ団長の仇ッ!」
次々に怒りと憎しみが混ざりあった感情を刃にのせ、傭兵達が聖騎士に襲い掛かる。
聖騎士側も、主を失った事実から、激しく抵抗し、両者共に大量の血が流される。
しかし、人間が鍛えられた獣人部隊に勝てる筈もなく、最初の勢いとは裏腹に次第に戦力が削られていく聖騎士達。
完全に傭兵団が有利な戦況に傾くと、ソル陣営は覚悟を決めたように静まり返る。
傭兵達は、そんな聖騎士達に向かい武器を振り下ろす。
「くたばりやがりッ!」
武器が触れる瞬間、聖騎士は笑いながら、声をあげる。
「風の聖女様……バンザイ……“解風ッ!”」
“ズッガーーーンッ!” 激しく市街地の建物が軋み、天高く風柱が舞い上がる。
その途端、次々にソル側の聖騎士達が同様に叫び、人造魔石を暴走させていく。
慌てる傭兵団に対して、一人の聖騎士が皮肉のように呟く。
「無駄だ……今更間に合わない、風の巫女等と皆は言うが……ソル様は聖女だった……優しき笑みに、我々は感謝致します……ソル様、バンザイ……」
聖騎士達の握り締めたすべての人造魔石が起動する。
次々に風が舞い上がる最中、傭兵達は慌てて駆け出していく。
「くそ……全員逃げろ! うわぁ──」
数秒の無音の世界が広がる。
次々に舞い上がる風柱はすべてを粉塵に変えていく。
聖騎士達が発動させた人造魔石は建物を丸く削り、最初から何も存在していなかったかのように、大地を剥き出しにさせた。
大空から雲が消し去られ、巨大な青空と太陽の輝きがすべてが無になった市街地に差し込んでいた。
風柱が天に舞い上がった瞬間、傭兵団が進む市街地へと向かっていたペリグロッソ指揮の本隊が瓦礫と突風により、吹き飛ばされる。
十数秒の間の沈黙、その後の空を丸くくり貫いたような青空にペリグロッソは慌てて声をあげる。
「直ぐに向かうぞッ! 被害の有無が分からぬ、直ぐに処置できるように治療部隊を護衛しつつ前に! いくぞ!」
ペリグロッソと獣帝国軍は目の前に現れた裸の大地に唖然とする。
「な、何があったと言うんだ!」
「ペリグロッソ大将! あれ、何かあります!」
兵士が見つけた物はエレドリオ=ホーンのシールドであり、それは傭兵団の全滅を意味していた。
「……探せ! 敵味方、どちらでもよい! 直ぐに生存者を見つけよッ!」
「落ち着いてください! ペリグロッソ大将、直ぐに捜索はします」
ペリグロッソも、兵士達も、生存者の存在は皆無だと理解していた。
ソル側の聖騎士達は結果として、予想だにしない功績をあげていた。
それこそ、ペリグロッソ指揮の本隊を足止めする事に成功した事実であった。




