蜘蛛の生涯×絶望の笑み×雲なき大地……5
地上でエレドリオが動き出すと同時にリア=バレル達を攻撃していた突風が弱まり、其れを皮切りに空中からの援護が開始さる。
ソルの苛立ちが更に増す最中、護衛の聖騎士達が弓を放つ傭兵に対して人造魔石を発動させて対抗する。
風弾を作り出すと屋根に向けて次々に撃ち放つ、その爆風はソルの突風とぶつかり合い、突風の勢いを削る。
「何をしているの! バカじゃないのか!」
「私達相手に余所見とは余裕だなッ!」
ソルが激怒すると同時に、弱まった突風の隙間からリア=バレルが急降下を開始する。
直ぐに突風の威力が強められるも、加速しながら急降下するリア=バレルは突風に逆らわず渦のように巻き上がる風を利用して落下速度を上げていく。
リア=バレルは魔石により、全身に電気の膜を作り出すと眼にも止まらぬ早さでソルへと向かっていく。
ソルは危機感を感じていた。その結果、ソルの集中力は極限に達したのだ。
地上に向けていた風を弱めると同時にまるで、風を手のような形に変えるとエレドリオを弾くように突きだしたのである。
予想外の行動に押し戻されるエレドリオ=ホーン。
ソルは弱めた分の力を空中から迫るリア=バレルへと即座に向ける。
風の流が変わると一瞬のふらつきが起こる。
更にソルは風を内側と外側で作り替え、内側を小さく、外側を大きくした風の渦を作り出す。
リア=バレルは空中で風の檻に閉じ込められる形となる。風の檻は回転を早めると次第にリア=バレルの電気の膜を削っていく。
「ぐぁ! ちくしょう……前に進めない!」
〈ダメだ……風が強すぎて、息が……もたない〉
既に勝敗は決したであろう、戦い……しかし、エレドリオ=ホーンは風で作られた巨大な手に向けて、ナックルを全力で打ち出す。
激しい一撃に、風の手が引き裂かれると、一瞬の間にシールドを空中に向けて投げ放った。
シールドは真っ直ぐに風の渦の中心に吸い込まれると地上からの風をすべて拡散する。
その瞬間、ソルは地上に向けていた風を一気に強めると風の手を力いっぱいに閉じた。
リアは、絶句した……風の手が閉じた瞬間、エレドリオの両腕が落下し、肉体からも激しい出血と血飛沫が噴き出す。
「エレドリオッ!」
「グッ……! 今、今やらねば、ならぬ事を……殺れ、リアッ!」
「うわぁぁーーーッ!」
リアの掛け声に慌てて、エレドリオを壁に投げつけるソル。
そして、真っ直ぐに突っ込んで来るリアに対して両手を合わせ竜巻のような荒々しい風を作り出す。
リアをギリギリで風の檻に閉じ込めたソルは勝利を確信していた。そんな最中、予想外の攻撃がソルを襲う。
浪牙の副団長であるナサリ=ディムが地下水路を移動し、ソルの足元から地上に向けて、シャノワのひび割れた魔石を全力で波動したのだ。
「シャノワ……一人で行かせる程、私は優しくないぞ……」
地上に向けて激しい突風が舞い上がり、水路の破片がソル目掛けて襲い掛かる。
一瞬の出来事であり、ソルの予想だにしない激痛が足元から襲い、崩落した地下水路に落下する。
「うわぁ! クソ……」
地下に落下したソルの目に入ったのは、全身を深く抉られたナサリ=ディムの姿であり、崩落のせいもあり、下半身が落石で埋り、絶命した姿であった。
「痛い……クソ……クソ……、痛い、痛い!」
痛みに耐えられないソルは叫び声をあげる。
次の瞬間、ソル=シシルは上空から凄まじい勢いで落下してくるリア=バレルの存在に気づく。
「クソ……はっ! ない、ない!」
ソルは身に付けていた魔石が失くなっている事実に気づく。
視線を下に向けたソルは即座に魔石に手を伸ばす。
「遅いんだよッ!」
「ぎゃあぁーーーッ!」
ソルの背骨から腹部を貫くようにリア=バレルの会心の一撃が命中する。
それと同時にリア=バレルの腹部から心臓に目掛けて真っ直ぐに風の刃が襲う。
「チッ……柄にもなく……熱くなりすぎたよ、エレドリオ、本当に私達は馬鹿だねぇ……」
風の聖女、ソル=シシルはその生涯に幕を閉じた。




