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蜘蛛の生涯×絶望の笑み×雲なき大地……1

 アルガノに向けられた刃が徐々に迫る最中、突如、刃が止まる。

 正式には止められたと言うべきだろう。


 ケルジの刃に絡み付く無数の光、その先には鬼の面を被ったカルミナの姿があった。


「鬼か……だが、そんな物で臆する私ではない」


 しかし、ケルジは明らかな同様を隠せずにいた。

 本来ならば、動けぬ筈の範囲までカルミナが歩いていたからである。


「何故、動けるのか教えて貰えるか?」


「私に勝てたら、教えるわ。ハアァーーッ!」


 会話が終ると同時にカルミナが駆け出していく。


 予期せぬ相手にケルジは防御をメインに動き出す。

 当然のように放たれる閃光がケルジの全身を襲い、次第に両者の動きに差が現れ出す。


 カルミナに斬りつけた剣先は、光の衣に護られ、更に光の衣が刃のように鋭く強固に変わり、防御と回避を繰り返しながら、確実に光の刃がケルジを襲う。


「なんと厄介な……神クラスの魔石(アーティファクト)か……」


 『神クラス』と言う言葉を耳にして、カルミナは驚きながらも、更に高速で回転し、ケルジからの攻撃をすべて受け流していく。


「此処までか……本当に私には運が無いようだ。だが……それも神の与えし試練ならば受け入れよう……力を解放する……去らばだ、強者達よ」


 ケルジ=ハンゼの剣に嵌め込まれた魔石(アーティファクト)が輝き出す。

 その瞬間に無数の糸が剣から放たれるとハンゼの体を瞬時に覆い繭のように姿を変える。


 繭は巨大な球体となり、高速で回転すると上部から亀裂が入った状態で停止する。


 亀裂が大きく拡がり、完全に割れた瞬間、繭の中から肉体の半分が黒く変色し、まるで蜘蛛の化物と人間が混ざりあったような姿のケルジ=ハンゼが姿を現す。

 その手には剣が混ざりあったような形で融合しており、核である魔石(アーティファクト)の姿は剣には存在していない。


「グウウゥ……」


 理性すら失ったように見えるケルジの姿にカルミナは唖然とした。


「……くだらない、化物になれば勝てると? 理性無き化物ならば、本気になれると言うのか……なめられたものだ」


 カルミナは静かに自身の剣を掌で撫でる。剣先から束に到るまで全てが輝きだす。

 その瞬間、ケルジが光に反応するように繭から飛び出し襲い掛かる。


 化物となった手と口から、粘着性の糸を吐き出すと、透かさずカルミナが回避を見せる。

 しかし、光の衣が突如として空中に張り付くようにカルミナの体から離れる。


「な、まさか……し、しまった……!」


 思考すら無いと判断していたカルミナは自身が安易な発想をしていた事実に気づかされる。


 最初の数秒の沈黙と繭の存在はすべてが獲物をテリトリーに引き込む為の罠であった事実と、動き出した瞬間から狩りの準備が整っていた事実が其処にあった。


 繭が回転しながら辺り一帯に巣を形成していたのだ。

 そんな最中、【魔石(アーティファクト)光の衣の力】を装備していたカルミナは地面から数センチ浮かんだ状態であり、地上に張られた巣に左右されないようになっていた。


 それと同時に地上とは違う強固な糸がドーム状に空中に張られていた。


 カルミナは回避した際に空中の糸に触れてしまい、光の衣を剥がされる事となったのだ。


 地上に落下する際にカルミナはケルジと対峙するように地面に片膝をつき、着地する。

 地面に張られた巣に片膝と両足がくっつき、回避が出来ない状況になっていた。


 後方から駆け付けた獣戦士特攻隊の団員達が身動きを取れなくなっていく。


 カルミナに向けられていた敵意が獣戦士達に向けられると標的を変更し、即座に後方を目指し駆け出していく。


 動けないカルミナとアルガノを無視するように移動するケルジ=ハンゼの姿にカルミナが手を伸ばし、片手で伸ばした腕を支える。


「アルガノ! 一瞬でいい、奴の注意を引いてくれ!」


「わかった。食われたら、怨むから……」


「縁起でもないことを言うな! キャトルフの嫁に死なれたら、一生掛けても償えないだろ!」


「わかってるなら、それでいい、信じるよ。()()()さん」


 その瞬間、カルミナの手が輝きだす。それと同時にアルガノが声を高らかにあげる。


「此方だッ! 蜘蛛の化物ォーーーッ!」


 咄嗟にケルジの視線がアルガノへと向かい、進行方向が変化する。


 カルミナに背を向けた瞬間、一筋の閃光がケルジの胴体を貫く。

 光の閃光が形となり日の光に照される。


「グガッ……ガガ……!」


 我武者羅に暴れ、動こうと抵抗するが、カルミナはケルジに対して無情な声を掛ける。


「無駄だよ。【魔石(アーティファクト)線鬼】の攻撃は絶対に千切れない鋼の糸だ。蜘蛛であるお前なら、理解できるだろう? 狩られる側になったんだ……お前は終わりだ」


 カルミナはそう言うと鋼の糸が輝きだし、ケルジはそのまま、切り刻まれ絶命する。


「もし、お前が、素のままで、戦っていたなら……いや、もうお前に言葉は通じないんだろうがな……」


 聖騎士団、総大将であるケルジ=ハンゼは、その生涯を戦場で終わらせる事となった。

 軍人として、戦場を離れ、聖職者として生きて行こうとしたケルジは戦場で人その物を捨て戦い、化物と呼ばれ、生涯を終えたのであった。

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