決着の雄叫び×小さき女王×悪意ある宴……6
シュゲンの提案により、エルイの長に移動する一行、昼食を食べながらの話し合いの準備が開始される。
リアナ王国の一行がエルイの郷に到着する頃にはエルイの戦士達の言葉はわからなくなり始めていた。
そんな中、寺院まで案内される。エルイの郷の存在と地上では見られない独自の世界観に目を奪われるリアナ王国一行、そんな驚きを露にする最中、広間にて、振る舞われるお猪口。
当然、最初の出迎えは木の根と樹液の飲み物が振る舞われる事となる。
警戒するアストゥト達の心配を他所にシュゲンの笑みを見て、ライム女王が猪口の中身を一気に飲み干す。
酷い苦味と土臭さ、最後に僅かな甘さと葉の香りが全身を抜けていくような感覚に恐れる。
「なんと、ケホッ、ケホ、酷い味なのです……毒かと思いました……」
覚悟を決めたライム女王のいっき飲みに対して、シュゲンが“ニンマリ”と笑みを浮かべ、手を叩きながら声をかける。
「実によい飲みっぷりじゃのぉ。今ならば、妾の言葉が再度正確に聞こえるじゃろぅ」
ライム女王は、軽く、うなづく。
「説明無く、振る舞った事は詫びよう。じゃが、やはり、一番に飲んだのは女王であったか、本当に面白い」
ライム女王の次にアストゥトが続き、次々に特務隊がお猪口を空にしていく。
そこからは、部屋を変えての話し合いになり、リアナ王国側からは、ライム女王とアストゥトが参加する事となりシュゲンの案内で部屋を変える。
別室で待機していた獣帝軍の将軍であり、【獣帝国ガルシャナ】総大将──サンジャラム=ペリグロッソも話し合いに加わる為に移動する。
用意された部屋には黒猫、獣帝国、エルイ、リアナ王国と言う四勢力の代表が顔を揃える事となった。
黒猫からは団長であるアルベルム=キャトルフと副団長、風薙=颯彌が参加した。
現状確認から始まった話し合いにリアナ王国側からは、驚きの声が上がる。
黒猫と獣帝国のつながり、更にエルイとのつながり、それに対して、敵と成り果てた【ウォルベア】からの進軍と、リアナ王国側の知り得る情報以上の物が存在していたからだ。
最終的に決めてとなるのは、黒猫の言葉である事実にもリアナ王国側からは驚きの表情が窺えた。
一つの傭兵団が国と地域を率いるリーダーとなっている事実にリアナ王国側としては反応出来ずにいたからだ。
そんな話し合いの中で黒猫、キャトルフが口を開く。
「アストゥト、黒猫はリアナ王国と協力する意思がある。どうする?」
「それは、金を用意すれば、力を貸すと言う意味に取ってよいのかな? アルベルム=キャトルフ団長」
アストゥトの言葉にライム女王が手を前に伸ばし、言葉を塞ぐ。
「アルベルム=キャトルフ殿、私達、リアナ王国側としては、一切の金品の受け渡しが出来ない状況なのです。ですので、此度の席を用意して頂きましたが、大変申し訳ございませんが……」
「早とちりするな、今のリアナ王国に金が無いことは理解してる。だから、成功報酬として土地を貰いたい。要求する地域は【ウォルベア】と【シスイ】のある第五、第四の関所の街とその周辺だ。どうだ?」
キャトルフが取り出した地図に円が描かれる。それは、リアナ王国が勝利を手にしても、国土の五分の一を失う事になる要求であった。
しかし、ライムはそれを確認すると深々と頭を下げる。
「了承致します。勝利した暁には必ずや、お渡しいたしましょう」
アストゥトは慌てて口を挟もうとするも、そんな事が赦される雰囲気ではなかった。
その後は昼食を交えた宴となり、キャトルフがライム女王に改めて話しかける。
「何故、承知したんだ? 本来ならば、金を提示した方が簡単だっただろうに?」
「今のリアナ王国に元の領土を管轄する程の力はありません。それに金品となれば、どれ程に民を苦しめる事になるか、想像も出来ませんので」
「流石は、一国の女王だな、意地の悪い提案だったが、改めてよろしく頼む」
「此方こそ、勝利とリアナ王国の復興に力を全力でお貸しくださいませ、アルベルム様」
したたかに宴が進む最中、互いの考えは合意した。此処にバルメルム大陸最強の連合軍が完成したのである。




