光の神×黒神のネルヴ×残酷なる者……3
部下に向けて、涙を流す姿を不快に感じたのだろう、ククレアは睨み合っていた視線をキャトルフへと向ける。
「そんなに悲しいなら……お前も仲間入りさせてやるよ!」
ククレアがそう呟いた瞬間、シュゲンが拳を前に突き出す。
「余所見か……妾を前に余裕よなぁッ!」
シュゲンの動きに対して即座に後退するククレア。
凄まじい速度で突き出された拳を難なく躱す。
通常の反応速度で躱せる距離でなかった事実、更に有り得ぬ程の回避速度でシュゲンの一撃を回避した事実は、シュゲンに違和感を感じさせた。
距離をとった後に、ククレアは不敵に笑みを浮かべ、シュゲン達を指差し声をあげる。
「さぁ、楽しい虐殺の始まりだッ!」
当然ながら、シュゲンとキャトルフ、黒猫の団も包囲された時点から攻撃がいつ起きても対応出来るように身構えていた。
ククレアと同じタイミングでキャトルフは声を上げる。
「敵を駆逐ッ!」
キャトルフの声に反応し、黒猫の団が動き出す。
「いいな、黒猫を止めようとする者達がいるならば、すべてを否定し前に進むのみだ! いくぞッ!」
放たれる銃弾に対して、獣戦士達が巨大な盾を前に出すと重なるようにして、前進する。
一ヶ所に集中された突撃に対して、二射目の弾を発射しようと聖騎士団達が慌てふためく。
そんな動きを赦さぬと言わんばかりに、黒猫の団からの攻撃が開始される。
聖騎士達は、黒猫の雑兵と考えており、剣を抜くと弾を込めている仲間を護る為に勇猛果敢に剣を振るう。
その間に、慌てて弾を装填し、聖騎士が銃を前に構えた瞬間、額に刃の先端がむけられる。
それは一人だけではなかった。周囲を見れば、音も無く、刃を突きつけられた聖騎士達の姿が其処に存在した。
「な、なんなんだ……お前達は神の名の元に裁かれる! 今、悔い改めれば……ギャア!」
喋り始めた聖騎士に対して刃が突き立てられる。
「ぐだぐだ、喋り過ぎだ。それにお前達を生かす気はない……」
緑色のマントで全身を隠した数名の者達は即座に聖騎士達を始末する。
緑色の集団は、黒猫の団──副団長直属の人・獣混合部隊【鎌鼬】である。
副団長、風薙は団長であるキャトルフの助けとなればと自身の直属部隊から精鋭を選び、キャトルフ達に気づかれぬように同行させていた。
「全員、次を狩るぞ。見つかると、団長様と副隊長様、両方に御叱りを受けるからな」
そう言うと【鎌鼬】は移動を開始する。
それは正に好機であった。銃弾が次第に勢いをなくし、更に獣戦士達が無理矢理作り出した突破口は黒猫の団に勢いを与えた。
聖騎士団の前衛が崩れると包囲していた聖騎士達は銃弾を込める暇すら惜しいと自ら、銃をその場に起き、腰に掛けられた剣を手に応戦した。
当然ながら、獣戦士を相手に聖騎士団が勝てる筈もなく、聖騎士達はククレアが助けに来るまでと必死の抵抗を見せた。
しかし、そんな期待を裏切るように、ククレアはキャトルフと対峙していた。
更に聖騎士団はシュゲンを見失うと言う失態を犯していた。
エルイの郷に舞い戻ったシュゲンは即座に出撃準備を整えていたエルイの大部隊を地上へと向かわせる。
この時点で、聖騎士団は、前方からの黒猫、後方からエルイ、中間にて、黒猫の特務隊【鎌鼬】を相手にせねばいけない状況に立たされた。
聖騎士達はククレアが本気になれば、黒猫に勝てると信じていた。それ程までにククレア=ネルヴと言う狂気の存在は聖騎士達の心を鷲掴みにしていたのだ。
しかし、ククレアはキャトルフと言う予想だにしていなかった強者と戦っていたのだ。
ククレアの雷はキャトルフに触れる前に消え去り、次第に二人の距離が詰められる。
回避した瞬間に、予想だにしない方向からの斬撃が放たれ、ククレアは困惑する。
「ワケわかんないんだけど、何で当たらないんだよ! ふざけんなし……」
ククレアが全身から雷を放電し始める。
キャトルフはその瞬間に駆け出していく。
放たれる放電の中、怒りに満ちた目でキャトルフを睨みつけるククレア。
正に互いの力がぶつかろうとしていた。




