光の神×黒神のネルヴ×残酷なる者……2
ククレアはシュゲンに向かって、唾を吐くとそのまま、聖騎士団と共にエルイの民を狩り始める。
無数の銃弾がフェルドルム大樹海の緊張を高めていく。
次々に背後からの銃弾により、倒れていくエルイの民に対して、ククレアは無慈悲に手足の腱を切るようにとだけ、命じたのだ。
「こんな連中を生かしてあげるなんて、私ってば、本当に神様だよね……あはは」
銃弾を浴びながら、手足の腱を切られたならば、痛みに踠く事すら困難になる。
その事実を知りながら、ククレアは楽しそうに命令を実行させた。
エルイの民が叫び声をあげると同時にキャトルフと黒猫の団が地面に倒れたシュゲンと焼け焦げた二人の男性、更には銃弾により、死亡したエルイの民達の変わり果てた姿を目の当たりにする。
情報収集部隊の隊長であるワーリス=モディカと副隊長であるデルモ=グリムの二名がエルイの民達の生死を確認する。
「どうだ、生存者はいるか」
キャトルフの声に首を左右に振る。
「この場にいる全員が死んでるわね」
「此方もっす、ただ、シュゲンさんなんすが……死んでるのか、わからないっす」
首を傾げるキャトルフに対して、グリムは、脈や呼吸が確認出来ない事実と全身が木のように硬くなっている両方の事実を告げた。
キャトルフは悩まずに飲み水の入った筒をシュゲンの口に突っ込んだ。
シュゲンの体内に向けて流れ出す水。
「グリム、悪いが筒を持っててくれ!」
「え、了解っす」
位置を入れ換えるとキャトルフはシュゲンの胸に耳をあてる。
微かに体内に広がる“ピキ”、“ピキ”という弾けるような小さな音と水が染み込む僅かな音をキャトルフはその耳で確認する。
「起きてくれ、シュゲン……長として、皆を護るのがお前の役目なんだろ……偉そうにいつも、喋るクセに……こんな時に寝てんなよ! シュゲンッ! 頼む……死ぬな……」
次の瞬間、キャトルフの後頭部に凄まじい衝撃が走る。
「妾の胸元にうずくまるだけでは、飽き足らず、更に呼び捨てか……随分と、成長したモノよなぁッ!」
後頭部を押さえながら、キャトルフは喜びを口にする。
「良かった。死んでしまったかと思いましたよ。シュゲン様」
「今更じゃ、キャトルフよ。様なんぞ、なくて構わぬ。今より、敵に対して反撃と転じる……と言いたいが……急がねばならぬ、力を貸せ! エルイの民を逃がす必要があるからのぉ」
即座に動き出すキャトルフとシュゲン、そんな最中、グリムは死んだ者達の遺体を回収していく。
「死んだら皆……平等っす」
キャトルフとシュゲンの後ろに黒猫の団が続いていく。
急ぎ、エルイの郷に向かうキャトルフに向けて、発砲音が鳴り、数発の銃弾が空気を切り裂きながら、頭部、心臓、太股に向けて襲い掛かる。
「くっ! またしても、させるぬわぁッ!」
次の瞬間、シュゲンが防壁を造り出すより早くアルガノがキャトルフの前に出る。
アルガノの魔石が分厚い巨大な盾へと変化すると、銃弾をアッサリと弾き飛ばす。
それと同時にアルガノは敵の位置を確認すると、同行していた獣戦士特攻部隊に合図を送る。
斧と盾を装備した獣戦士達が一斉に銃弾が放たれた方角へと|散開〈さんかい〉しながら、進んでいく。
「う、うわぁぁ──ッ!」
「くそ、来るなッ! 来るなァァァ!」
無情に響く断末魔が静まると、草むらから、襲撃者を討つべく向かった獣戦士達が心臓が止まった状態でキャトルフ達の元へと投げつけられる。
「まったくさぁ……私の駒をあんまり、減らさないでくれる? イライラするから……」
聖騎士団が黒猫の団を包囲するように姿を現し、全員がライフルを装備している。
そんな、聖騎士団の後ろからククレアが姿を現す。
ククレアを睨むように見つめるシュゲン。
キャトルフはそんな二人の睨み合いを余所に、投げ捨てられた同胞達に涙を浮かべた。




