光の神×黒神のネルヴ×残酷なる者……1
有り得ない程の圧倒的な力が地上に舞い戻る。
高笑いを浮かべていた赤髪の女が沈黙する。
「なんじゃ、ちと、楽しめると感じたが、期待はずれか……まだ、炎を操っておった、前者の者の方が優れておったわ」
羽虫を叩き落としたかのような振る舞いはエルイの民達を歓喜の声が叫ばれる。
“ザザザザ……”
シュゲンが赤髪の女を見下ろしながら、髪を掴み、引きずっていく。
「呆気ない二番手だったが、防壁へのダメージが凄まじいのぉ……三番手が来ても問題は無いが……フェルドルム大樹海から、厄介な奴等が外界に放たれぬように警戒せねばなぁ……」
“タアァァンッ!”
無数の空気を切り裂く発泡音が大樹海にこだまする。
「くっ! 皆走れ、ハアァァッ!」
その瞬間、シュゲンが振り向き様に両手を前に出し、三本を一組として、木の壁を広範囲に展開する。
壁の内側では、歓喜の声を上げていたエルイの民達の混乱の声があがり、壁まで間に合わなかった外側からは、全ての声が失われた。
フェルドルム大樹海に今まで存在して来なかった火薬の薫りと鉄が燃える生々しい嫌に重たい空気が漂っていく。
「なんと愚かな……フェルドルム大樹海に火薬を持ち込むとわ……」
発泡された先にエルイの民が視線を向けた瞬間、シュゲンの足から全身に電流が走る。
「逃げろ! カハッ……」
シュゲンの声にエルイの民達が走り出す。
「はぁはぁ、テェな……クソが……雑魚を逃がしたし! 髪も服もボロボロだし、マジに最悪なんだけど……さっ!」
赤髪の女はそう言いながら、電流を流され、倒れ込むシュゲンの顔面に蹴りを入れる。
「ククレア様! 大丈夫ですか!」
キャトルフ達と入れ違いになるように別ルートから姿を現した聖騎士団。
ククレアと呼ばれる赤髪の女。
聖職者協会の【自然五精神】光線……光神──【アクリョナ】に選ばれた存在、その名をククレア=ネルヴ。
好戦的かつ、冷血な性格を持ち、聖職者協会の中でも危険視される存在である。
小悪魔のような服装を好み、光の神に選ばれながら、“黒神のネルヴ”と呼ばれている。
ククレアを心配し駆け寄る聖騎士団に対して、手を前に出す。
即座に聖騎士団が整列する。
「嗚呼、大丈夫よ、それより……お前と、あと、お前! 前に出てきてくれる?」
若い男と、中年の男が一歩前に出る。
「アンタ達さ、フェルドルムには、奴らしか居ないって報告したわよね? しかも、フェルドルム大樹海に非戦闘員が隠れてるとか……?」
若い男が青ざめる最中、中年の男が口を開く。
「申し訳御座いません……」
「いいのよ、私は優しいから……でも、顔は痛いし……体も痛いわ……だから……お前が私の代わりに痛みを与えなさい……いいわね」
「は、はい!」
中年の男は剣を抜くとククレアは艶やかな視線を若い男へと向けた。
「勘違いするな……お前が切り刻む顔は、あっちだよ……あっち」
視線の先に立つ、若い男が後退しようと後ろに足を下げようとした瞬間、中年の男が声をあげる。
「動くなッ! 動くな……いいな……」
楽しそうに二人の男を見つめるククレア。
「ククレア様……命は取らなくてよいのですよね……」
震える声で質問が口にされる。
「そうね……顔面の半分と……片耳でいいわ……た、だ、し、耳障りな叫び声が聞こえたら、喉まで切りなさい……わかった?」
即座に頷く中年の男。
「はぁ、はぁ、や、やめて……」
「声を出すな! すまない……」
「と、父さん……ウワァ……! ウゥゥ!」
口に布が押し込まれ、若い男の頬に涙が落ちる。
そこからは声にならない押し込まれた叫び声、舌を噛まぬようにする意味を込めた布に若い男の歯茎から流れ出した血液が染み込んでいく。
ククレアは艶かしい笑みを浮かべながら、中年の男の背中に手をあてる。
「どんな気持ち……息子の顔の皮を剥ぐって……? お前は間違ってないから大丈夫……安心して、でも、身内への暴行や残虐行為は、聖職者協会の規約に反するわね……」
その瞬間、背中にあてられた手から全身を焦がす程の電流が流される。
中年の男から、若い男に電流が流れ、二人の男が重なるようにして、煙をあげる。
「親子仲良く、逝きなよ。私ってば優しい……あはは!」
その場に居た聖騎士団が困惑する最中、響く笑い声、誰もが間違っていると理解しながら、笑みを浮かべていた。
「さぁ、逃げた奴等を狩りにいくよ! 次に私を怒らせたら、全員の顔の皮を剥いで、丸焼きにするからね、わかった?」
「「「はい!」」」
エルイの郷に向けて、聖騎士団が前進していく。




