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神の裁き×怒りの矛先×狂喜……4

 少女の拳にキャトルフの掌を滑らせる。


 互いの距離が零になり、両者の攻防に風薙が目を奪われる。


 圧倒的な実力差が有りながら、必死に急所への打撃を防ぐキャトルフ。


 加速する拳は勢いが増していく、しかし、拳がキャトルフの体に命中する事はなく、少女の苛立ちが次第に高まっていく。


 そんな攻防の最中、少女は足を更に一歩前に踏み出す。


 その瞬間、キャトルフは回避はせずに、身を屈め、顔をガードすると思い切り少女の懐に突進する。


「&※:±℃@#!?」

〔なにをうわぁ!?〕


 キャトルフの予想だにしない行動に驚くと同時に、踏み出した足と拳のタイミングがズレ、威力が弱まる。

 その僅かな隙をいかし、少女を押し倒す形になる。


「はぁはぁ、悪いな、形振り構えなくてな……」


 少女を四つん這いの体勢で押さえつける形となり、キャトルフは必死な謝罪を口にする。


 少女は初めこそ、死を覚悟して、抵抗しようとしていたが、キャトルフの困ったような必死な表情を目にして“きょとん”とした顔を浮かべ、笑いだした。


 通じぬ言語が少女から叫ばれると、数十人の待機していた戦士達が姿を現す。


 キャトルフと風薙も流石に突破を諦め、少女を解放すると、巨大樹の内部に連れていかれる。


 二人は覚悟を決めていたが、いざその時が来たと感じると不思議と笑ってしまっていた。


「なぁ、キャトルフ。オレは故郷にも帰れないまま、死ぬんだな、まったく不思議だぜ」


「済まないな、お前をリアナ王国軍に確りと頼んでいたら、こんな事に為らなかったのにな」


「今更だぜ、だが、オレも異世界に来たんだって、浮かれてたんだ……冒険したり戦ったり、ギルドを作ったり、仲間と宝を探したり……はは、案外未練がありまくりだなな……」


 そんな事、二人が案内された場所こそ、エルイの郷であり、言葉が一時的に通じるようになると、木の根と樹液を口にする事になる。


 キャトルフと戦った人物こそ、若き日のシュゲンであり、当時の“エルイの長”の侍女であった。


「あはは、さっきから、聞いていれば、主達は死にたいのか? 誰も殺すと言わぬのに、死ぬことを話しておるのか?」


 予想外の言葉に呆気に取られる二人。


 その後は、長の元に案内される事となり、シュゲンの客とするように命じられた。


 シュゲンの客とすると言う発言に侍女達が騒ぎ出す。


「お、長殿! それはあまりに!」

「そうです。シュゲンは戦闘こそ、輝きますが、人を見る目に乏しく存じます!」


 シュゲンは侍女達の話を聞き、クスクスと笑う。


「あははッ! 長様の言葉に意見する程によう、偉くなった者よ! いつか、我らより、新たな長が生まれる。その際にも同様の発言を期待しようじゃないか……期待しておるぞ」


 そう告げると侍女達はシュゲンを睨み付ける。


「調子に乗れば、神の裁きが下りますよ、言葉を慎みなさいシュゲン」


 一人の侍女はそう告げる。


 そんな時、長が声を出す。


「それくらいにしなさい……争いをする為に、この場に来たわけではないでしょう……あとは任せます、シュゲン。いいですね」


 その日の夜、シュゲンの屋敷に招かれたキャトルフと風薙、使用人達が食事を作り、三人で済ませた後、寝間を用意される。


「今夜は此処で寝るが良い、夜は騒がしくなるだろうが、ゆるりと休むがよい」


 夜が更け、シュゲンの屋敷に無数の足音が忍び寄る。


 騎士であったキャトルフはその動きに気づき、警戒を強める。

 僅かな時の流れの中で、足音が即座に駆け出していく。


 風薙を起こし、キャトルフが外を確認する為に駆け出していく。


「ぎゃあぁぁ!」

「や、ぬあぁ……」


 屋敷の庭では既にシュゲンが刺客と思われる数名を相手に決着を着けた後であった。


 シュゲンが最後まで、生かしていたのは、侍女の一人であり、その最後の一言はシュゲンに笑みを与えた。


「こんな事をして、長殿の怒りを買うぞ……シュゲン……」


「ふむ、ならば、長様に直接、聞きにいかせて貰う、安心してエルイの根に帰るがよいぞッ!」


 その後、シュゲンはその場で眠りについた。

 刺客達が流した血溜まりに髪をつけるその姿は生々しくも美しくキャトルフの目に焼き付いた。


 眠れぬまま、朝を迎えた後、キャトルフはシュゲンに目的となる魔力文字の復活についての質問であった。


「ふむ、取り敢えずは在るまいな? 普通に考えれば、魔力文字が砕かれずに残った事実その物が不思議なのだから」


 溜め息混じりにキャトルフが頷くとシュゲンは不思議そうなその顔を見つめた。


「肩書きの身分など、意味はないと思うが……主は強いぞ? 力で上がるもまた、道であり身分であろう」


 自身で身分を手にする事を少女に諭された事実に驚かされる。


 長くない、朝の会話が終わるとシュゲンはキャトルフ達をフェルドルム大樹海の外に続く扉まで案内する。


「去らばじゃ、旅人よ。主達の事は忘れぬぞ」


「俺もだ、シュゲン。あと、俺はアルベルム=キャトルフ。此方は風薙=颯彌だ。いつか、また会えるように願っている」


「次は確りとした宴を催すと約束しよう。キャトルフ、颯彌よ。達者でな」


 その後、シュゲンはエルイの郷で、長と成る。


 それから十年と言う時間が流れる。


 エルイの郷でキャトルフとシュゲンは再会した。


 しかし、それは本来望んでいた再会の形ではなかった。


 長となったシュゲンはキャトルフに質問をする。


「のぉ、キャトルフ。主は未だに魔力文字の復活を願っておるのか?」


「今は……仲間と戦い勝つことを考えている。あの日のシュゲン様の戦いは本当に印象的でした……」


 二人は互いにグラスに酒を酌み、軽く飲み干していく。

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