神の裁き×怒りの矛先×狂喜……2
シュゲンは立ち去るように命じた際に、キャトルフ達に対して、【フェルドルム大樹海】が受けた被害状況を語った。
「短時間の攻防において、術者の力は強大じゃった。ほんに、驚かされる。まして……幼き少女が姿を変えて刺客にされた事実は常軌を逸しておるわ」
そう語ると次にエルイの郷への被害を心配している事実を語り、今回の【フェルドルム大樹海】への奇襲で防壁に使われている特殊な魔石にも、損傷が生じた事実と、自動復元が終了するまで防衛に専念せねばならなくなった事を告げた。
「済まぬな、キャトルフよ。妾がもう少し外の動きを理解しておれば良かったが、面目無いのぉ」
そう語るシュゲンは六人の侍女達に指示を出す。
「のぉ、キャトルフよ。外の者達を正門より、エルイの郷に招きたいのだがよいか?」
「かまわないですが、先程、立ち去るように言われたばかりなのですが?」
「うむ、今日中に立ち去って貰うが、エルイの郷の長として、客人に饗さぬ訳にはいかぬじゃろ、エルイで一番の湯殿も用意させる、一日となるが、鋭気を養うがよいぞ」
「お心遣い感謝致します」
キャトルフはシュゲンの言葉に感謝を示すと、内側からのみ開く事が出来る正門から外で待機していた獣帝軍と黒猫の団員達をエルイの郷に招き入れた。
最初に案内された寺院の広間より更に巨大な部屋に案内される。
テーブルが並べられ、床に直接腰掛ける獣人達、すると洗礼となるエルイの根と樹液が振る舞われる。
皆が苦しみ終わると、食事が運ばれてくる。
魚や野菜、魔物肉と次々に運ばれ、獣人達は食べ慣れぬ魔物肉を堪能し、注がれる酒を楽しんだ。
賑やかな宴が盛り上る最中、シュゲンがキャトルフを傍らに呼び寄せる。
「のぉ、キャトルフよ。あの者達の中に鞘に成る存在はおるのか?」
「……その、いますが」
「ほぅほぅ、そうか、そうか……初めて会った際の事を覚えておるか?」
「覚えてます、不思議な運命を感じた出来事だったので……」
キャトルフがそう告げるとシュゲンは不敵に笑い、出会った日の事を突然語り出した。
キャトルフとシュゲンの出会いは突然であり、偶然が幸いして導かれたものであった。
その当時、リアナ王国の騎士として、鍛練を積み、副団長としてキャトルフは将来を期待される身であった。しかし、上官の裏切りにより、騎士としての運命を奪われたのだ。
身分を奪われた事実と、恩人達に騎士として生きると誓った後の絶望は大きく、一人だったならば、死を選んでいただろう。
そんなキャトルフの不幸中の幸いは、風薙=颯彌が一緒であった事実だった。
リアナ王国から逃亡者同然の生活をしながら、二人は各地を回り、立ち入り禁止区域である【フェルドルム大樹海】であった。
立ち寄った町の老人が語った夢物語の酔うな、エルイの郷の存在を確かめようと二人は危険を覚悟を決めて調べる事にしたのだ。




