続編の番外編[嗜む程度が理想です]
お母ちゃん復活の宴。
もう産まれてますからね。母乳も要らないですからね。やっと出せますよ!酒!!!(え)
黄色い妖精復活したその日のうちに、友人である王族達と女神様夫婦に連絡を取ったスティーア家では、妖精希望の食事とお菓子を用意してささやかな宴を後日、開くことにしました。
ミスティー国からは王女オリヴィエとその護衛騎士オックス。余談で、王は頼もし過ぎる息子にお縄になってるらしい。
リアーズ国からは王女ミッシェルと、その婚約者。(実はシャリティアさんと文通してたミッシェル様。主にオリヴィエ関係の話題で盛り上がってたそうです/笑)
女神ティアラと王子レオナルドも参加出来るように、瘴気浄化休業日に日時は設定されました。
招く人数を最小にした、ささやかな宴。
それでもこの場に集まるのは将来の国を、世界を支える者達であることに間違いない。
感謝しても仕切れない、女神の心を変えた一人である妖精の復活と共に、これからも友好な関係を、素晴らしい世界を国として目指していこう。
瘴気に怯える事なく、理不尽に愛する者と離れる事なく生きていける世界を夢見て。
……そう。
真面目に考えてスティーア家に訪れていたのは、リアーズ国代表と、その護衛騎士達のみでした。
遅れてやって来たリアーズ国代表が扉を開いた時には、既に始まっていたのです。混沌とは、そういうモノです。
「…………もう、好きにして。」
「「「ミッシェルさまぁ!!?」」」
――――――――――――――――――――――
話は、リアーズ国代表が到着する、数時間前に遡る。
公務があるので遅れてしまう。先に宴を始めてほしい。
律儀なリアーズ国民筆頭のミッシェル様の連絡が届いたのは、まだ明るい夕方。
手紙を覗き込みながら、ちみっこ組はお腹を空かせて私の許可を待ってる。
「……お言葉に甘えて、始めちゃおっか?」
「なら?」
「せーのっ!」
「「「「「「おかえりなさーい!!!」」」」」」
クラッカーは無いけど、ティアラちゃんが魔法で降らせた花びらによってお祝い感が倍増されました。
改まっての挨拶なんて、必要ない。
言いたい言葉は、これだけだもの!
「あ、ありがとうなぁ、皆!」
「それじゃ、皆!好きなもの食べて、飲んでくださいね!おかわり自由やから!!!」
「「「わーい!!!」」」
そしてクミル、お母ちゃん、ティアラちゃん(妖精姿)が真っ先にご飯に飛びついたのは言うまでもありません。
「……何故、女神様は妖精姿で来たんですか?」
「…………食べ物が、大きく見えるから得した気分になる、と。」
「……ティアラ……気のせいかとも思ってましたが、考え方が美智子に似てきましたわ。」
ミスティー国の王族三人は、がっくりしながらの乾杯で始まってました。うん。まさかの影響力。
お母ちゃんが、なんかすんません。
「あっ、クミちゃんハンバーグあるで!とったろか?」
「!……うん!あぃがとーばっちゃ!」
「……ばっちゃって、美智子の事?」
「そーそー!クミちゃんおしゃべり上手やろー?」
「えへー。クミル、じょおず!」
「むぅ。美智子だけずるいわ!ねーねークミル!私はティアラ!ティアラって、……言える?」
「う?もぐもぐもぐ………………てら?」
もぐもぐタイムのちみっこ、落ち込む黒い妖精と慰める黄色い妖精の姿は、ずっと昔からこんな日常だったのではと思わせる程の自然さ。
私は喜びと感動から流れ出る涙を我慢しながら、少し甘めのオレンジジュースを一杯飲み干した。
……あれ、これ美味しい。
御飯時の飲み物がお茶派の私でも、これなら飲める。甘いけど後味すっきりさっぱり。うまうま。
小さめのコップやから一気飲みしやすかったなー。……後でおかわりしよっと。
「……良かったですね、美津。」
「うん。皆楽しそう!」
いつもなら私とシャリティアさんの二人で夕食を作るんやけど、今日だけ、果樹園で働くお姉様方が料理や給仕をかって出てくれた。
せっかくの家族との再会を祝ってね、と。頭を撫でられ。
その言葉に甘えて、私は旦那様の隣に座ってるのだ。
クルーレさんも、目の前で繰り広げられる愉快なちみっこトリオ(女神は要らない/byクルーレ)を眺めながら幸せそうにハンバーグと唐揚げを食べていた。
うん、男らしく肉オンリーのチョイス。……後でサラダ持ってこよう。栄養は、バランスが大事。病気になるから、偏り駄目絶対。
ちなみに、ちみっこ達の目の前に並ぶのは、妖精二人が選んだ料理を私がお皿に取り分けただけ。
本日は来客ありなので、バイキング形式の夕食なのです。
メニューはお母ちゃんのご要望で和食が多め。
肉じゃが、豚の生姜焼きに大根おろしの和風ハンバーグ、それに唐揚げと天ぷらをメインに、副菜には夏野菜をふんだんに使ったサラダやお浸し。夏に嬉しい冷製スープもある。
あ、ちゃんとお客様用にオシャレ料理なカナッペもご用意してます。カリカリフランスパンの上には、ツマミ系は炙りハムチーズと炙りサーモンバジル。
デザート系はスティーア印のジャムとクリームチーズがそれぞれ乗ってます。
瘴気が無くなって一年は経ったけど、まだ生は抵抗あるかなって事で加熱してます。
サラダも蒸した野菜なんで安心です。
初めて作ったから味見したけど、カナッペ美味しかったです!
まあお母ちゃん達はお酒のツマミには見向きもせえへんけど(笑)
……あ、お母ちゃん。私の作っただし巻き卵をかなり気に入ったようで、クミルとティアラちゃんにも勧めてる。……ピンポイントで私が褒められてる。えへ!
お母ちゃんは自分が美味しいと思ったから、とクミルとティアラちゃんの口にも放り込んでる。
ふふ。三人仲良くもがもが話しながら食べてるわー。
まあ今日は大目に見るけど、今度から飲み込んでから話しなさい。お行儀悪い。
そしてご飯の後は冷やしたゼリーとプリンとババロアのぷるぷるトリプルが待ってるから。お腹の隙間、空けといてね!
小さな注意とデザートの存在を伝えたら、ちみっこトリオは破顔してから天ぷらと唐揚げを食べ始めました。
それを横目に見ながら、私も熱々の茄子の天ぷらを口に放り込む。
うん、とれたて野菜で作ったので本当に美味しい。
でも思ったより熱かったので、天ぷら飲み込んだ後にまたも飲み物を一気飲み。今度はブドウジュースやった。うん、これも後味すっきりさっぱり。うまうま。
さっきのオレンジジュースも思ったけど、いつも飲むのと少し風味が違う。
……ティアラちゃん達のお土産かな?美味しいなーこれ。も一杯飲もう。
うんうん。この世界の食べ物っていうか、野菜や果物、今日はなんでも美味しぃなー。食べ物が美味しいのは良い事や。幸せー。
トマトが好きなお母ちゃんも、さっき丸ごと一個、プチではない蒸したやつ、大きいの捕食してた。
……気に入ったのかもう一個いきそう。あ、自分で取りに行ったな。
クミルが、尊敬の眼差しでお母ちゃんを見てる。
……トマトが苦手なあの子が、大口開けてトマトを放り込むのも、遠くないのかもしれない。
「お母ちゃんら、大丈夫?お茶かジュース飲む?」
「……あ、さっきブドウジュース貰ったから大丈夫やで!」
「あ、ほんま?……ならこれ飲みきって大丈夫やなぁー。クルーレさんは?」
「私はりんごジュース貰いまし……ん?」
「ん?どしたん?」
「ぁ、いえ。」
「ん?あ、天ぷら美味しかったよ!取ってきたろか?……早くせな、お兄様が食い尽くす勢いやで?」
「自分で行きます!……兄上待って!茄子とオクラと海老は私も食べたいです!!!」
料理の並べられた机の前で、お皿を天ぷらで山盛りにするお兄様の背中に突進するクルーレさん。
その姿が楽しくて可愛くて、うふうふ笑いながら私はブドウジュースを飲み干した。
私の旦那様は素敵やなぁ。
……お母ちゃんも帰ってきて、自分でも気分が高揚しているのが分かる。
ふにゃふにゃ顔から、元に戻らない。
ふふふ。嬉しいなぁ。楽しぃなあ。
…………こんな日が、ずっと続いたら良いなぁー。
「…………あれ、みっちゃんあんま食べてないなぁ。」
「ぇえ?食べてるよぉ?」
「天ぷらは食べてたけど、二、三個やったや………………み、美津?…………御飯時にお茶以外飲むの、……め、珍しいなぁ?」
「うぅん。そうやねぇ。でもこれ美味しかってん!一本全部飲んでもーた!えへ!」
「もぐもぐもぐ。美味しかったなら良かったわね、美津!……あら、美智子?どうしたの?食べすぎ?」
「……ばっちゃ?くるしぃ?」
「…………く、く、クルちゃーんっ!!?」
何故かばびゅんとクルーレさんに向かって飛んで行ったお母ちゃん。
……はて?何を慌ててるのかなぁ?
ティアラちゃん達と一緒に首を傾げながら、私は飲み干したブドウジュースと同じ瓶の蓋を、キュポンと開けた。
――――――――――――――――――――――
「…………く、く、クルちゃーんっ!!?」
後頭部に激突してきたお母様は、そのまま私の髪の毛を引っ張ってくる。少し痛い。もぐもぐ。
「ごくん。……どうしたんですか、お母様。オクラ食べたいんですか?」
「ちゃうちゃう!み、みっちゃん飲んでるの、あれってジュースか!?」
「あ、いえ。アルコールの匂いがしたのでお酒です。女神がお土産で持って来た物ですよ。……確か、信徒に貢がれたお神酒みたいな物だったと思います。」
授乳していた事もあるが、美津は元々酒に魅力を感じない様で、元の世界での同僚との飲み会でもいつも二杯までだった。
せっかくの祝いの席。私と違って飲めない訳じゃないなら、少しくらいハメを外しても……。
「…………………。」
なのに。少し青褪めた表情で、お母様は私の目の前に浮かぶ。……無言が、怖い。
「お、お母様?……私、何か問題が?」
「…………い、嫌な予感する。クルちゃん、悪いことは言わんから、今すぐ美津連れて部屋にこもるんや。」
「はい?」
「ええから!」
「は、はい!」
そうしてお母様と共に美津に近寄れば、何か様子がおかしい。
クミルと女神が美津の隣に座り、心配そうに頭を撫でているのだ。
「美津?どうしました?」
私の声に振り向いた美津は何故か半泣きになっていた。
私が驚き固まると、美津がこちらに腕を伸ばしたが、……すぐに腕を下ろし、椅子から立ち上がって私から離れようとする。
「み、美津?」
心配になり、頭にお母様をくっつけたまま近寄れば。
「……っ!………………ぅ、ゔゔゔ〜、あーーーーん!!!」
突然の号泣と、バチバチとほとばしる放電が開始されました。
「えっ!!?」
「おー、おかあちゃんも、ビリビリ?しゅごい!」
「喜んじゃ駄目なのよクミル!」
「あわわわわ!?」
女神が慌てて魔法でクミルを持ち上げ私の背後に隠れたのは、褒めましょう。
何事かと皆近寄って来るが、美津が泣きながら放電しいてると分かると仰天していた。
……確かに、美津の魔力は元々お母様のモノだったが。
でも今まで、魔法を使おうとしてもやっぱり治癒しか無理で。
それなのに、いきなり放電なんて!!?
「美津!?一体何がっ、」
「あーーーーーん!!!」
ばきん、と皿やコップが砕けた。
窓ガラスも振動し始めてる。
……間違いなく、これは魔力暴走だ。
幼い頃から経験した私には、分かる。感情の高ぶりでの制御不能状態。……な、何故?
あ。
美津が座っていた席、そのテーブルの上で砕けたワインボトルが、二本。
…………まさか?
「お、お母様。……もしかして?」
「美津めっちゃ酒癖悪いねん!!!」
「そんなの聞いた事ありませんよ!!?」
「だって言った事も深く考えた事も無いもん!!!」
ああ、なんということでしょう。
下戸の私以上に、美津はお酒が苦手だったみたいです。
みっちゃんは、酒乱?なんですって(笑)
安心して下さい。犠牲者は一人です(笑)




