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人生初の美女と魔法講義



皆さんこんにちは。

私の名前は岡田美津(おかだみつ)


色々あって聖女として招かれましたが、諸々の怪我の為座ることさえ制限かかってる現状です。


そんな私が異世界[ミスティリア]に来て早三週間。


私は今。

やっと。


「…………た、」


「「立てましたっ!!!」」


産まれたての子鹿にまで進化しました!!!



――――――――――――――――――――――――



「あぁ、それにしても本当に良かった! おめでとうございます、聖女様」


すぐにベッドに腰掛けてしまったが、それでも立てた事には変わりない。

ニコニコと微笑み午後のティータイムの準備をしてくれるシャリティアさんは、立ち上がれた事を我が事のように喜んでくれた。


「召喚陣より現れた聖女様は、本当に酷い状態でした。全身ずぶ濡れでそれはもう冷え切って、見える範囲だけでも血のにじんだ痣や折れてると分かる腕と足………なのに左手の箱だけは絶対に離さなくて…無理に引っ張れば指まで折れかねないと、そのまま治療致しました。」


その節はご迷惑をおかけしました……。

まったく覚えてないけれど、そりゃあドキドキしながら開けたプレゼントボックスの中身が五寸釘だらけの藁人形だったら絶望しか感じない。


「まぁ、その様なお顔しなくて宜しいのです。私は痛みを取り除くだけで、傷の治癒はクルーレが施しましたから。勿論! クルーレは治癒の為触れはしましたが、着替えなどは私達女性のみで行いましたのでご安心を!」

「シャリティアさん………ごめんそんな視線キョロッキョロさせてたら嘘かもって疑っちゃいますって…待ってねぇマジか見られたの私のボンレス部分見られたの!?」

「ご安心を未遂ですみました」


「みすいとは」


「聖女様のあまりの怪我に、私達も始め動転してしまったのです。ですが弟だけが我先にと駆け寄り、聖女様を抱き抱え息の確認をしたあと傷を見ようと、その……。」


「服を剥いた、と。」

「全部では無いので、どうか許してやって下さい。あんなに慌てた弟を、私は久しぶりに見たのです。」

「まぁ、命の恩人なんでそこら辺はもう良いです……クルーレさんも儀式に参加していたんですね?」


まぁ王様が参加するんだから守護騎士様であるクルーレさんは当たり前か。


「いえ、クルーレが居なければ儀式は失敗していたでしょう。」

「え?」


ベッド脇に寄せられた小さな丸テーブルに緑茶のカップ(なんとあった!)を置きながらシャリティアさんは頷いた。


シャリティアさんが言うには。


ミスティリアでは、素養があるものなら呪文ひとつなく火の玉を手のひらに作れるし、数秒だけでも宙に浮かぶ事も出来るそうだ。大切なのは具体的にどうしたいかイメージする事。


勿論威力や持久力を付けるのには鍛錬が必要だが、台所の料理の火力や洗濯の洗い・濯ぎは慣れたら子供でも出来るらしい。


クルーレさんは産まれ持った魔力が膨大であり、なおかつ愚直に鍛錬に励み続ける勤勉さの結果。

城に仕えている魔法に特化した魔剣騎士団の団長さえ、模擬戦で完膚無きまでに打ち破ってしまえる程の腕前になっていたのだそうだ。


さすがクルーレさん!熊(王様)を蹴り飛ばした騎士様です!


そんな事があり、プライドが鬼の様に高かったらしいその団長は……聖女召喚儀式前に心を病み自宅に引きこもったらしい。


らしいと言うのは、魔力が多く必要な儀式と分かった上、参加を拒否し、出て欲しかったらクルーレさんの生意気な態度に対する謝罪を要求したって……なにそのしょーもない嫌がらせ!


「魔剣の団長さんスッゲェウザいっす」

「実力はありましたが人望は皆無でした。由緒ある家の次男坊でもありますし、王も対応に困っていました。そうしたらあの子……。」



『それくらい私でも出来ますので、必要ありませんね』



「………姉である私が言うのもなんですが、あの時の微笑み、ちょっぴり怖かったのです」

「私、クルーレさんにガチギレされない様気を付けます!!!」

「聖女様にその様な事は……いえ気を付けて損はありません。ご自愛下さい。」

「はいっ!」


話が逸れた。


ちなみに魔力が多い人は髪の毛や瞳の色が濃い傾向があるそうです。


シャリティアさんは明るい金髪に濃いアーモンド色の瞳で、ミスティー国では一般的な色合いだそうです。

魔法に関する仕事をする人は髪か瞳どちらかが濃い色味をしているんですって。勿論一部例外はあるでしょうが。


なので黒髪に黒みがかった(あか)の瞳を持つクルーレさんは、規格外扱いらしいです。


しかしもう一つ規格外があるらしく、それがまさに聖女の魔法。


聖女は皆と仕様が違うらしく、火を起こしたり風をふかせたりの魔法は一切使えない。

出来る魔法はクルーレさんとシャリティアさんが私にしてくれた治癒と、瘴気を浄化する事。


シャリティアさんの話では、私が二度目に目覚めたその日から魔法を行使し続けていて、ほんの少しづつではあるが既に瘴気が浄化され始めているらしい。


え、なにそれどこの空気清浄機。

目覚めイコール電源スイッチオンってどないやねん。


「でも、私何にも……分かんないですよ…?」

「………聖女様は、私をどう思っておりますか?」

「へ?」

「率直な感想で良いのです。好ましく思っているのか、疎ましく思って」

「とてもとても好ましく思ってます!!!」


嫌うなんてとんでもない!

そんなんしたらおかんに罰当たりってしばかれる!


「こんなに優しく看病してもらって、お喋りもしてて嫌うなんて……っ」


男兄弟の中に女の子は私だけだったので、母以外で身近で親身にお喋りする女性は少なかった。

お姉さんが居たらこんな感じかなって、お世話されながら思ってたのに。


まさか気付かぬうちに、何かそう疑われる様な態度を私はとっていた?


「ああ、違うのですよ聖女様。私を好ましく思っていてくれている、と貴女様は態度と言葉でちゃんと伝えて下さっています。疑ってなどいません。」

「でも………じゃあなんで、そんな事聞くんですか?」



シャリティアさんは少し困った様な、悲しそうな表情で笑うという器用なことをしていた。



「貴女のその心が、世界の浄化に繋がるからですわ。」






世界観は大事なところ以外は割とゆるっと設定されてるだけなので、ぶれぶれになり過ぎないよう頑張ります。

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