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続編の番外編[嗜む程度が理想です/裏側]



ビクビク夫と酔っ払い妻、その後の夫婦話。

めっちゃ久し振りに性的な表現とモラル的な表現で色々怪しいのがあります。



それでも宜しかったらどうぞ。








寝室に辿り着いてすぐに私はベットに突き飛ばされ、美津の抱き枕状態になった。



……私の身体をまたぐ様に乗っかり、無言で胸にぐりぐりと頭を擦り付ける真っ赤な美津、すごく可愛い。

でも許しも何も無い状態で調子に乗ったらどうなるか、今の私には()()()()()から出来ない。



驚くべき事に。

抱きつかれているこの状態であるにも関わらず、私には美津の心が見えない。何を考えているのか、全く分からない。


美津の温もりは、ちゃんとある。……まさかの結界越しに触れてるのかと思ったが、そうでも無い。



なら考えられる原因は、私と美津の魔力量にあまり差がないという事。

女神とレオナルド、それにクミルの思考を読み取れないのと同じ現象なのだろう。



……やっぱり、うっかりしてるじゃないかあのクソ女神。



美津の飲み干したあの酒は、女神からのお土産だった。

正しく言えば、女神の信者が、女神に献上した代物。


……信者は女神に喜ばれる様に、純度の高い魔力を込められた酒を渡したのではないか?


美津は無意識でも、魔法コントロールがとても上手いから……お酒から、しっかり魔力を取り込んでしまったとしたら。



……ど、どうしよう?




「…………ゔーぅうー。」

「うっあ!?」



私の胸板に頭を乗せていた美津が、身体を跨いだまま起き上がり、飛び出したままだった私の犬耳に噛み付いてしまった。



私の顔を潰さない様に、美津は少し身体をひねってくれたけど。

……あわわわ!コリコリしないでっそれ駄目痛気持ちいいから待って美津待って!!!

今私が色々反応したら絶対許してもらえなくなるから!

お願い少し待って!(涙)



「み、美津許してっ……な、内緒にしてたの謝りますからぁ!」


犬耳は駄目なんです!美津の息遣いと水音が響いて駄目なんです!!!


「…………内緒ちゃうもん。………………クルーレしゃ、嘘吐きやった。」

(ガジガジ)

「あうっごめ、ごめんなさ……そこ、もうやめてぇ。」

「…………なら始めっから、自分の口で説明せぇや。……私、このまま聞いてるから。」

(ガジガジ)

「あぅううーっ!」




そうして私は息も絶え絶えになりながら、結婚式前にピーター様から教えられた事実によって、自分勝手に自殺を考えた事。

そして美津が知ってしまってから女神が現れ、……女神の山での出来事までを、詳しく説明する事になってしまった。



この説明の合間も、美津は私の犬耳を解放してくれなかった。

噛み付いてない方は、指で敏感な内耳をグリグリといじり倒され。

私はまた身悶えてしまうが、……一つだけ、確認しなければいけない事がある。



「……み、美津……女神に、その。……消してもらった記憶、……。」



消した記憶と、書き換えた記憶。



記憶をお母様と共有しているかも、と言っていたレオナルドの言う通りなら……書き換えた筈の、あの忌まわしい記憶も、美津は覚えている可能性がある。



私の言葉に、犬耳から離れた美津は私の胸板に遠慮がちにくっ付いて。




「…………私、……きたなぃ?」

「そんな事ない!!!」



その言葉で、私は悟ってしまった。

許しは貰っていないけれど、美津の身体を力一杯抱き締める。


抱き締めながら身体の位置をずらして、何度も何度も愛しい番いに口付ける。



「そんな事……考えないで。私の愛しい人を、そんな風に……思わないで。」



汚くなんかない。

美津は、綺麗だ。

誰よりも綺麗で、可愛い可愛い、私の番い。



「……同情せんでええよ。」

「してないっ!」

「……だって、()()()()()()()()()()。……くすん。汚いのに、離れたくないって思う……私があかんのや。ぐす、我が儘なんや……。」

「そんなの、我が儘でも何でもない!」



美津の顔は、まだ酒が残ってるのか赤いまま。

でもその表情は、虚ろなのに嫌悪を露わにしている。





美津は元々、傍目から見ても疑問に思う程、自己評価が低い。


太ってるから、という一点だけでの考えではない。




……女性である、お母様は何となく気付いていた。

私も、美津の夢を覗き見たあの時からずっとずっと考えて、思い至った事がある。




美津は幼い日のトラウマから、無意識に『自分は汚い、醜い存在』だと認識していた。



子供は、周囲を見て育つ。

友人だと思っていた子供達と、その親達の心無い態度で、幼い美津は深く傷付いていたから……そう思ってしまったのだろう。





自分は汚く、穢れている。


なら。こんな自分は、誰かと一緒に居ては駄目だ。


大事な人(あいするひと)まで、汚れてしまうかもしれない。


そんなの…………相手が、可哀想。





誰にも迷惑掛けず。独り、ひっそりと生きよう。


美津は……幼いながらも、そんな考えに至っていた。


だけど美津は、とても寂しがり屋だった。


孤独に、独りぼっちで居る事に、美津は耐えられない。





……美津が自身を犠牲に出来る程、盲目に家族を愛している根源は……この、過去のトラウマから来ていると思う。




だから、今の美津が()()()()()()



良い子で善人な、誰にでも優しい美津。


優しくすれば、……利用される事はあっても、嫌われる事は稀で……独りになる確率は、低いから。



そうして彼女は、汚らわしい過去を心の奥底に沈めた。


汚れを受け入れて欲しいと願いながら、穢れを許して欲しいと望みながら。


無意識に……自己防衛の為に、彼女は自分自身に強い暗示をかけていた。






自身がそうされたいから。見捨てられたく、ないから。

誰でも受け入れられる、許すことが出来る……優しい美津になったんだ。






……結婚する前に思い出していたら、美津は私から離れただろう。どんな方法を使ってでも、逃げただろう。



愛する人(わたし)が汚れたら、可哀想だから、と。



きっと、今も少し、考えてる筈だ。

……離れるなんて、許さない。



私を、こんなに夢中にさせておいて。

子供だって産まれて、お母様も戻って来てくれたのに。


今更私から逃げるだなんて、絶対に、許さない。




「…………美津が、汚いなら……私は汚物に等しい生き物ですね?」

「……ぇ………………なん、で?」

「だって私、美津が大嫌いな()()()です。」

「!!!」

「……私の通り名、知ってるでしょう?[血染めの死神]……魂を刈り取るから、死神。言葉通りの意味なんですよ?」




美津が現れる前のこの世界(ミスティリア)は、一部地域とはいえ色濃い瘴気が空にまで満ちていて、犯罪も比例して多かった。



詐欺。強盗。強姦。そして、殺人。



特に強盗や殺人が多く、集団で町や村を襲う輩まで現れて。



……だから討伐と聞いたら、私は喜んで殺しに行った。



当時、探せど見つからない実父を殺せぬ代わりに。

私の八つ当たりで消えていった命が大勢居た。



……話せば改心して、何処かで真っ当な商売をしていたかもしれない者も居ただろう。

だが私は、そんな可能性のある若者たちでさえ、問答無用で切り捨てた。



黒い装いは、血の汚れが目立たない。好んで着ることが増えた。



……戦争が起これば良いのに、と思った事も一度や二度じゃ無い。



私の話を聞いて完全に酔いの覚めたらしい美津は、青褪めた顔で……それでも、私から離れない。

むしろ、私にしがみ付く力を強くした。



……馬鹿だなぁ、美津。

私が、()()()()()()()()()()って、気付いてないね?



「……私は、頭のネジが何本か飛んでいた化け物だった。でも美津が、……私の無くなったネジを新しく新調して、オマケに付け直してくれたから…………人になれたのに。」

「…………。」

「ねぇ……美津より、私の方が汚いでしょう?」

「……っ!」

(ぶんぶん!)


泣くのを我慢して、美津は力一杯首を横に振る。

私にしがみ付く力をより一層強くして。離れないって、言外に伝えてくれる。



……ねえ、美津。

私は貴女とは比べ物にならない程の、極悪人なんです。



だって私、こう言えば美津は何処にも行かないだろうなぁって、計算して話したんですよ?



「なら……私が汚くないなら、美津も汚くないですよね?ね?」



ころりと私と美津の上下を入れ替えてから、美津に覆い被さってその潤んだ瞳を見つめながら返事を待つ。


五分、十分位だろうか。

美津は、遠慮がちではあったけど、私の首に腕を回してくっ付こうとしてくれた。

嬉しくて嬉しくて、私も押し潰す形で美津を抱き締めた。



「……私は本当に、全然思った事ないけど。でも、もし美津が、本当に汚いって気にするなら…………私が、美津を綺麗にしてあげる。ふふ、私、舐めるの得意だから全身綺麗になるよ!」

「………………………………スケベ。」



私が抱き締めながら笑顔で言えば、少しだけ微笑んだ美津にチョップをされてしまった。まあ痛くはないが。


私がチョップされた額を撫でていたら、ちゅっと可愛い音をたてて鼻先にキスされた。……ああ、駄目だ。



ずっとずっと我慢していた、喰いつきたい衝動にかられる。


今も、美津の心は見えない。

その事実に、結婚式前の私なら絶望していたかもしれない。

不安で、気が狂っていたかもしれない。


……でも今は、見えなくても分かる。



「……美津。愛してます。ずっとずっと、私は変わらないから。……安心してね?」

「…………私の事捨てたりしたら、黒いビリビリやから。」

「ふふっ。なら……次に、私の事嫌い、なんて可愛くない嘘言ったら……いっぱいいっぱい可愛がって、その後お人形みたいに丸一日抱っこして持ち歩いてあげる。……ね、嬉しい?」

「…………知らんし。」

「……ふ、あははっ!」



真っ赤な顔して知らないって、ねぇ?

やっぱり美津は、分かりやすいなぁ。



「……今日の事、忘れないでね。」


お酒のせいにして、無かった事にしないでね?



美津の身体を久し振りに堪能しながらの私の懇願に、美津は鳴きながら、それでも私の手を力一杯握る事で返事をしてくれた。




明日、私と美津はお休み。


さっきした約束通り、綺麗にしてあげるから。


だからその可愛い声で、もっと鳴いて。


お母様達にもう一人、孫を抱かせてあげないとだし、ね?







歪んだラブラブバカップルなオチでした。


結構イジられた後だったので黒騎士様に幸せ運んであげたら、何でかヤンデル様召喚するハメに(召喚したのは私ですねハイ。)


この日を境に(大まかな)隠し事は無くなったので、らぶ度は上がりました。ヤンデル度もこっそり上がりました。



本人達はこれからも幸せそうなので、良いと思ってあげてください。






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