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溺るるは慟哭のヴィクティム  作者: 神宅 真言
二章:黙する湖水と、秘する声
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幕間:後輩の話と、同級生



『え、ミズチの話ですか?


 噂に関してはだいたいこないだ話した通りですけどね。そうそう、女の幽霊が出るとか女の叫び声が聞こえるとか、川から化物が出るとか山にでっかい蛇みたいな影を見たとか、概ねそういう感じですよ。


 ああそうそう、同じ中学にね、そのミズチの出身って子がいたんですよ。同級生というか同じ組だったんです。


 名前はですね、静宮さんって言うんですけどね。静宮シズクさん。詩に雫って書くんです、綺麗な名前ですよね。


 すっごい細くて肌とか真っ白で綺麗な子でした。でもちょっと変わってて、髪とか目が灰色なんですよ。それがまた神秘的で。


 身体弱いみたいで、体育とかずっと見学だったし、時々ちょっとふらついたり倒れたりしてましたね。僕その時保健委員やってたんで、何度か保健室に付き添ってあげたりしたんです。それでちょっと仲良くなったりして。


 それでその頃からもう、ミズチの噂ってのはあったんで、聞いてみた事があるんですよ、その静宮さんに。


 そしたら苦笑して、そんなの無いですよ、夜とかももうみんな寝てて真っ暗だし静かだし、私もそんなの見た事無いです、って言われちゃいました。住んでる子がそう言うんだからそうなんだろうって。


 でも噂は後を絶たないし、お祓いしてくれって寺に来る輩も減らないし、不思議だなーってずっと思ってるんですけどね。まあ別に普通に人が住んでる所でも幽霊に会う事もあるだろうし、山なら何かを見間違える事も有り得るんで、まあそんなもんだろうと思う事にしてます。


 いえ僕は見た事無いですよ、幽霊なんて。そりゃ寺ですからね、目の前に墓もいっぱいありますけど別に何とも無いし。先輩だってそうでしょ、ね、そうですよね。


 え、静宮さん? いや、ちょっと仲良くなっただけでその……、なんも無いですよ。無いですってば、ええ、いやその……。


 ああもう言います、言いますから! ……その、告白しましたよ、しちゃいましたよ。見事に振られましたけど。


 別に嫌いとかそんなんじゃなかったのが救いっていうか。家継がなきゃいけないからって、静宮さん中学卒業したら家でいなきゃいけないからって。僕も次男とは言え寺の出ですからね、それ言われるとまあ、仕方無いよなって。分かるでしょ、先輩も。ですよね、皆そうですよね。


 それでまあ、告白も無かった事みたいな風にその後も接してくれてて。僕としては諦め切れないっていうか、思うところは無くは無かったですけど、普通に仲良くはしてました。相変わらず身体弱いし静宮さん、時々学校休んだりとかしてたし。


 静宮さんが休んだ分のノート取ってあげてたりしたもんで、組の皆にはバレてたとは思うんですけどね。あ、休むのも体調が悪い以外に、お客様が来るから、みたいな理由の時がありましたね。何やら接待しなきゃいけなくてとか愚痴零してた時もありました。その次の日とか学校来ると凄く疲れてて心配でしたよ。


 お客様とか接待とか、凄く疑問だったんですけど、なんか聞いちゃいけない気がして、とうとう聞けず仕舞いでした。お遍路さんの御接待とかとは全然違うんだろうなってのは分かるんですけどね。


 そういえばうちの檀家からもミズチに嫁いだ人とかいましたけど、お盆に棚経行っても居ないのが不思議でした。お盆って実家に里帰りとかするじゃないですか、普通。ミズチはお嫁さん、帰省もさせてくれないのかなって。


 色々考えると妙ですよね、あそこ。


 あー、静宮さん元気にしてるかなあ。中学の同窓会とかも全然来てくれないんですよね。綺麗になってるんだろうなあ、会ってみたいなあ。


 ──あ、消灯五分前!? もうこんな時間ですか。やべ、部屋の電気消してない。僕部屋戻りますね。


 はい、じゃあどうも。失礼しまーす。お休みなさい』


  *


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