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地獄の双璧

 "Banditバンデッド Rebellionリベリオン".


 そう称される彼らは、リーダーであるメガネコブトリの優れた指揮のもと、次々と暗黒領域からの襲撃者達を撃破していった。


 この地上において唯一といって良い異界への対抗戦力を有した彼らに、政府と国連は支援する事を決定。


 『”山賊”と名乗ってるくせに、権力者と手を組むってどうなの?』という声も内部からあったりしたが、彼らは政府・国連からの物資、ネットワーク環境、メンタルケア、etc……。


 そういった手厚い支援と、自衛隊や国連軍との共同作戦によって、なろうユーザー達は迎撃だけでなく暗黒領域の攻略にまで繰り出すようになっていた。


 未だ踏破とは行っていないモノの、足掛かりくらいは出来始めており、昨今では死者や重傷者を出さない状態で暗黒領域から持ち帰った情報や物品をもとに、更なる解析に励むというのが通例となっていた。





 そうこうしているうちに、一カ月の月日が流れた。


 現在なろうユーザー達は、慌ただしくも比較的平穏な日々を過ごしていた。


 暗黒領域顕現によって数を多く減らしたなろう人口も、現在なろうに志願するユーザーが激増したことによって、その数は300万人へと到達していた。


 失われた命は戻ってこないが、それでもメガネコブトリは新生したなろうユーザーの面々とともに、"Bandit Rebellion"としての心構えを教え、彼らも日夜研鑽し続けメキメキと頭角を現すようになっていた。


 また、ウルティマリアの襲来からの復興作業も、なろうユーザー達と政府の協力のもと、急ピッチで進められていく――。


 あれから、新しい暗黒領域は一つも出ていない。


 このまま、何事もなければ一つ一つ領域を攻略していくのも難しくはない、とメガネコブトリ達は判断していた。





 ……しかし、当然の如く、それで終わるはずなどなかった――。








 ~~封絶独裁王国『ウルティマリア』・女王の間~~


 この世界の絶対的な支配者であるレティシア=ウルティマリア。


 彼女は現在、この部屋で爪を苛立たしげに噛みながら、憎悪に満ちた表情を浮かべていた。


「……何よ、何よ、何よ!!単なる弱小世界のくせに、何で私の思い通りにならないの!?……おまけにアイツ等、こっちの世界にまで平気で踏み込んでくるし、本当に何なのよッ!!!!……あんなカス世界とは比較にならない数の兵力を送った他の領域も全滅するし……どうしたら……!!」


 レティシアが強行した『七大世界同時侵攻作戦』は、全部隊の全滅という最悪の形で当然の如く失敗に終わった。


 現在彼女は、”反・山賊教育”をどう用いても隠蔽するのが難しい今回の敗戦と、苛烈なまでにこちらの領域に侵攻を繰り返すなろうユーザー達への対応といった責任について、民衆から酷く追及されていた。


「……どうしたら、本当にどうしたら良いの……!?」


 まるでこの世の地獄を全て目の当たりにしたような表情を浮かべるレティシア。


 だが、彼女の絶望はそれだけで終わらなかった。


 突如、物凄い轟音とともに、盛大に建物が揺れ始める――!!


「――――――ッ!!」


 揺れがおさまったと同時に、慌てて外をみやるレティシア。


 それを見た瞬間、これまで以上に彼女は顔面蒼白となっていた……。


「ま、まさか……ついに、アレが……!?」









 第九領域:灼熱紅蓮焦土・『ダイナウェルダン』


 領域支配者:炎竜帝王・”グレンカイザー”


 廃滅属性:炎上


 灼熱のマグマが至る所で噴出し、炎竜が飛翔・闊歩する超危険地帯というほかない世界。


 この領域の支配者は、一度暴威を振るえば留まる事を知らない炎竜帝王・”グレンカイザー”


 巨大な体躯と翼を誇り、このダイナウェルダンにおいて最強の戦闘力を有していることからも、まさに炎竜の中の帝王と呼ぶに相応しい風格を誇っている。


 古城ろっくをもっとも象徴する”炎上”の廃滅属性を持っているが、グレンカイザーはそれすらも自制する強靭な胆力と、理知的な視点、そして炎竜族としての誇りを兼ね備えているため、迂闊な発言や言動など決してしないその威風堂々とした在り方によって、力ずくではない”竜望”という形で多くの竜族から慕われている。


 とはいえ、グレンカイザーが帝王として親愛の情を見せるのは、竜族の同胞のみである。


 ロクに竜族の食物となるモノが育たないダイナウェルダンという暗黒領域において、同胞を飢え死にさせないために、グレンカイザーは部下の飛竜を多数引き連れ、他の世界に生息する多くの餌を調達する遠征を幾度も行う。


 古城ろっくの因子を継いだ者の中でも、他の追随を許さない圧倒的な強さを誇る存在である。



『――これよりは純然たる生存競争である。”聖”でも”悪”でもなく!この世界に根差した一個の生命として我等の喉笛に剣を突き立ててみせよッ!!!!』





 第十領域:絶対暗黒魔界・『ベリアライズ』


 領域支配者:ダークエルフ女将軍・”ギリアナ”


 廃滅属性:復讐


 常に闇で世界が覆われ瘴気が辺りに満ちており、闇の勢力である”魔族”と呼ばれる者達が支配する世界。


 この領域の支配者は、個としての武術も部下を率いる統率力のどちらにも優れているダークエルフの女将軍・”ギリアナ”。


 古城ろっくの因子を継いだとは思えぬほどの生真面目な性格のギリアナだが、彼女の行動理念は『古城ろっくを追放した文明社会へと復讐する』というモノであり、古城ろっくの因子としての資質ではなく、彼の意思をもっとも正統に受け継いだ存在と言える。


 自身の副官を務める大柄の魔狼種の獣人:マグルは、ギリアナにとっていくつになっても可愛い弟分であると同時に、自身を支えてくれる頼もしい恋人でもある。


 古城ろっくの生まれ故郷である世界を滅ぼすための前哨戦として、魔族の軍を引き連れながら数多の人間達の世界を攻め滅ぼしている。



『覚悟するが良い、卑劣なる現代人どもめ!……我等ベリアライズの魔族は、決して”チャリチャン”を忘れたりなどせぬ……!!』









「あ、あぁ……そんなッ!?」


「そりゃ、このまま終わるわけはないと思っていたけどよ……まさか、コイツ等が同時に出てくる事ぁないだろッ!?」


 古城ろっくの因子を受け継いだ中でも、最強クラスと称されるのが、この『ダイナウェルダン』と『ベリアライズ』と称される二つの世界であった。


 ”炎上”と”復讐”。


 まさに、なろう界にその名を轟かせた魔王:古城ろっくを代表する廃滅属性であり、どちらとも世界そのものからそれを冠するに相応しい王者の風格を放っていた。


 周囲の者達が激しく動揺する中、メガネコブトリは皆の指導者として冷静に状況を分析していた。


「……そうか。他の暗黒領域とは比較にならないほどの強大さだから、こちらの世界に顕現するための容量を蓄えるためにこれだけの時間がかかっていたのか……!!」


 メガネコブトリの呟きを聞いて、周囲のなろうユーザー達が驚愕の声を上げる。


 周りの者達がざわつきながらも、急いでこの事態に対処しようとする中、メガネコブトリは今自分自身が言ったばかりの発言に、何かひっかかりを感じていた。


(本当にそうなのか……?ただ、顕現が遅れただけで、こんな強大な世界が二つも同時にタイミングを合わせて、この世界に浮上してくるモノなのか……?)


 何の確証もない。


 だが、メガネコブトリは今回の出来事に何か作為的なモノを感じていた。


(考えてみたら、十大暗黒領域はすべて”小説家になろう”というサイトを通して顕現している。……現在の政府や国連の支援によるネットワーク環境整備がこれまで以上に充実しているのに、この二つの到来を予期出来ないなんてことがあるのか……?)


 政府や国連が、なろうユーザーを内心では脅威に感じており、彼らを始末するために『ダイナウェルダン』と『ベリアライズ』の到来を阻むことなく通過させた……。


 だがそんなシナリオを書いたところで、このような暗黒領域を制するための方法が政府や国連にはないからこそ、彼らは自分達のような反社会的ともいえる”山賊”を名乗る"Banditバンデッド Rebellionリベリオン"のなろうユーザーを支援しているのであり、よしんば、この目論見が本当だったとして、その通りに自分達なろうユーザーを始末する事が出来たとしても、制御不可能な二大最強領域がこの地上に残る結果となるため、本末転倒である。


(考えてみたら、違和感といえば最初のときからあったんだ……ネット上には、”運営神群”がいるはずなのに、彼らがこの異常事態を前にして何の反応も示さぬままに沈黙を保つだけ、なんて明らかに常軌を逸している……!!なんだ、何が起こっているんだ!?)


 もしも、この場に自分よりも遥かに優れた推理力の持ち主である男装少女(彼女)がいてくれたら……。


 この場において、そんな今となってはどうすることも出来ないような仮定に囚われるほど、現在のメガネコブトリは焦りで思考がまとまらず、激しく追いつめられていた。


(考えろ、考えろ、僕!!……そもそも現代社会を滅ぼすだけなら、こんなに呼び出さなくても一つや二つだけで充分なはずなんだ!!……この暗黒領域を現実世界に浮上させている奴は、一体、何を企んでいるんだ!?)


 まるで考えなしのように次から次へと暗黒領域を浮上させてきたからこそ、



 『セプテムミノス』の支配者:テラスの石化の魔眼を恐れて、他の三大勢力が動けなくなり。


 『パラダイスロスト』と『アトラクエデン』の両勢力による武力衝突が引き起こされ。


 そして、『ウルティマリア』の七大世界同時侵攻作戦などという壮大な内ゲバが発生したのだ。



 決定的な答えは見つかっていないが、これらの情報に一人戦慄するメガネコブトリ。


 だが、現実はそんな彼のことなど待ってはくれず、刻一刻と過ぎ去っていく。





「ここは、我々も協力いたします!!」


「fuckin'JAP!!」


 なろうユーザー達のもとへ、派遣されてきた自衛隊と国連軍が協力の名乗りを上げる。


 彼らはなろうユーザーほどの決定打を異界の者達に与えることは出来ないが、卓越した戦闘技術と強力な近代兵器を駆使して、これまで幾度もなろうユーザー達のアシストを務めてきていた。


「ハイ、よろしくお願いいたします!!」


 なろうユーザー達の了解を取り次いだ自衛隊と国連軍は、颯爽と『ダイナウェルダン』から飛翔してきた炎竜達や、『ベリアライズ』から溢れ出てきた魔族達を相手に、ロケットランチャーやガトリング銃をぶっ放していく――!!


 彼らの攻撃は決定打にならずとも、着実にその戦力を削ぎながらあとはなろうユーザー達が上手く片付けていく……はずだった。





「ッ!?そうだ、まだ『ワーキングホリデー(第八領域)』だけが、この地上に浮上していない!!」





 メガネコブトリの叫びを聞いて、訝し気な視線を向けるなろうユーザー達。


 その直後のことだった。





 パリィィィ……ンと、何かが破砕するかのような音が皆のもとに聞こえたような気がした。


 それは、なろうユーザー達の中から自作品との繋がりを完全に断ち切る破滅の幕開けに過ぎなかった……。

本作は「すげどう杯企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1299352/blogkey/2255003/(あっちいけ活動報告))』


※本作の執筆にあたって、『古城ろっく』さんの名義を使用させて頂く許可を、古城ろっくさん本人から頂きました。


慎んで、深く御礼申し上げます。

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