番外編 ―ネトゲでクリスマスだと!?― 前編
少し早いですが、クリスマスネタで箸休めということで。
『……少し肌寒いな』
首都ベヨシュタットも冬になると雪が降る。シュタイス山ほどでは無いものの、それなりに街並みが白く染まっていく。
そんな昼下がりの街中を、俺は一人でとぼとぼと歩いている。
……本編で追い出されている筈だろってツッコミは無しの方向で。
『こうやって毎年思ってしまうのは、冬用の耐寒装備を備えておくべきだという後悔だな』
いくらタイラントコートに耐性があろうと、下には普通の防具をつけている俺にとってはそれなりに応える寒さがある。
さて、どうして俺が一人でいるのかというと――
『ラストは久々の《七つの大罪》の会合があるとか言って、どっかに行っちまったし……』
シロさんは廃人思考でありながら寂しそうな背中で期間限定モンスターを狩りに出かけて行ったし、グスタフさんは元ギルドのメンバーとのクリスマス会があるとか言ってたし、女性陣は何故か音信不通だし、街にはMMOだっていうのにそれっぽいカップルでにぎわっているし……。
『くっそ、現実のクリスマスと変わらねぇじゃねえか……』
刀王とあろう者が、まさかのボッチクリスマスってか?
「ぼっちの王……ハハッ、ハハハハハヘックシュ! ……チクショウ」
イカン、一蹴周って笑い過ぎて変になってきた。
『……こうなったら家に引きこもろう』
外に出るほど惨めになってくる。
◆◆◆
「…………」
「――本当に、サプライズで驚いていただけるのでしょうか?」
「大丈夫よ。あいつなら今頃外でぼっちってことに嘆いていることだろうし、家に帰ってこんなことになっているなんて微塵も想像できないでしょ」
「それは言えているかもねー。ジョージくんぼっち気質だし」
「それでも、連絡を無視するのは少々心を痛めてしまいました……」
「大丈夫よぉ。ジョージなら他の女性のところにフラッと誘われない限り返ってくるでしょうから………………あっ」
そこで俺の家に集まっていたラストにキリエ、姉さんにイスカ、それにベスはハッとしてある事に気がつく――っていうか、何で俺の家に勢ぞろいしてんだよ!?
『……だがまあ、確かにエルフ族の村からは呼ばれているけど』
あそこに行くと深夜の貞操の危機が――って俺既にラストに犯られているからいいのか。
いやいや待て! エルフ族は確かこの時期は繁殖期の終わりごろだろ? しかも最後にクリスマスと重なって《豊穣祭》とかいうちょっと繁殖がヤバいイベントが重なっていた気がするワケだが――
『――今行けば確実にめちゃくちゃに犯される……主にペルーダ辺りに』
下手をすればそのまま干からびて死ぬかもしれないという怖れを感じた俺は、まだ理性と良心のある方へと足を向けることを決意。
しかし――
『……流石に何も持っていかなくてもいいのか?』
ぼっちだから家で豪華に食べようとしていましたー、っていうそれっぽい体で何か食べ物でも買っていった方がいいかもしれないな。
『……もう少しだけ市場を見回るか』
◆◆◆
さっき窓から覗いた限りだとメインディッシュは用意できているようだから、デザートでも用意するかな。
『とはいっても、ただ普通に買って帰っても面白くない……』
俺はそう言ってステータスボードを呼び出し、インフォメーションのページを開く。
ここにはこのVROゲーム《キングダムルール》の最新の情報や更新が記されている。
『……期間限定エネミーモンスター、《極上ショートケーキをドロップする暴食家》だと?』
これって確かシロさんも狩りに行っていなかったっけ?
『……よし、改めて連絡をとってみよう』
一応シロさんがいれば、ブレーキにもなってくれるでしょうし。
というワケで俺はシロさんとともにこの謎のエネミーモンスターを狩って、その《極上ショートケーキ》とやらをゲットするクエストへと出ることに。
――っていうか、これ後半に続くのか? 続けていいのか!?
NEXT QUEST ――期間限定任務「極上グルメ!? ホールケーキを喰らう暴食家」――
後半に続きます。




