番外編その三 ―ギルド内におけるそれぞれの役割―
メタ発言注意です。
「――と、次の話に移る前に」
『ん?』
「シロさん、何処に向かって話しているんです?」
「どこにって読者様にでしょう? そのくらい光速で理解してください」
あーあ、とうとうシロさん壊れちまったか? なんだよ読者って。どういうことなのさ。
「ちなみに今の状態だとジョージさんの考えていることが手に取る様に読み取れますので注意してくださいね」
マジかよ……やめてくれよそんなこと。
「いえいえ、だた殲滅し引き裂く剱における我々一人一人の役割分担、得意分野をこの際もう一度確認しておこうと」
まあこれから六人で大規模戦に臨むわけだからその辺も確認しておいて損はないか。
「そういうことです」
だから俺の思考を読まないで!
『ゴホン! まずは誰から確認していくか?』
「では加入時期が若い順から行きましょうか」
となると最初はグスタフさんからか。
「うむ、それがしからだな」
……流石に今のはメタい発言じゃないよな? 俺の心を読んだわけじゃないよな?
「このグスタフ、戦士という職業柄から前線に出る攻撃手を得意とする役割である。その中でも特に集団戦を得意とし、一対多数でも難なく戦える。それと共に、荒れ地における奇襲の技術ももっている」
「使っている武器は戦斧・《ゴウライ》。レアリティレベルは114。雷神を模したかのような装飾がなされ、振るえば雷がともなう嵐を巻き起こすことができるそうですが……」
「うむ、シロ殿の言う通りである」
背中に背負っている得物は、斧にしては規格外の大きさ。あれで竜の頭蓋を叩き潰すというのならば、誰も疑いはしないだろう。
あの武器は、少なくとも乱戦で使われたら相手にとってはかなり不利な状況に置かれるだろう。なにせ何もない所からいきなり嵐が発生するのだから。
『次は――』
「私ですね」
イスカは自分の番だと主張するために、その場でピシッと手を挙げる。
『じゃあイスカだな』
「はいっ! 私ことイスカは竜騎士という職業上、遊撃や前線での支援を得意としています。得意武器種はレイピアとバヨネットの二つです」
いずれも小型で取り回しも簡単。いざとなったら投げて飛び道具にもできる代物だ。基本は竜に騎乗した状態で上から敵の急所を突き刺す形で攻撃、そして退避のヒット&アウェイの戦法をとっている。
「今回は少人数で大軍と戦うので、私も積極的に前線に出たいと思います!」
「フンッ、撃ち落とされない様に気をつけなさいよ!」
「分かっていますってば!」
そうこうしている内についさっき嫌味を言い放ったキリエの番へと変わる。
「この私、魔法剣士を生業とするキリエは主に後方支援や防衛戦、特に籠城戦を得意としているわ。私が関わった防衛戦では一回も負け無し、ちまたでは私のことを《要塞女帝》と呼ぶ人がいるくらいかしら」
『前回のナヴェール山地での防衛戦でも、その手腕は見事に振るわれたもんな』
敵の死体を味方に引きずり込むという戦法は、相手にかなりのプレッシャーをかけることが出来る。何故なら単純に計算すれば人数の差が倍ずつ変わっていくのだから。死体で自軍からマイナス1、相手軍に蘇生で相手側にプラス1と、その差は2となる。
『お前の主な魔法は召喚術だよな?』
「そうだけど……後は、魔法の触媒に魔剣を使っているくらいかしら」
魔剣・《ネビュラ》。レアリティレベル116の闇属性に特化した直剣で、同じく闇属性の魔法を放つ際に杖などの魔導具の代わりに触媒となってくれる代物だ。
「私については以上ね。次は――」
「では私がお話ししましょうかねぇ」
その口調からは信じられないほどに残虐な少女、ベスが話を始める。
「この私、ベスは騎兵という職業についているわぁ。主なメインウェポンは槍で、サブで相手を痛めつけるための大鎌も所持しているわぁ。モチロン、攻撃手がお仕事よぉ」
そしてベスというプレイヤーに対して一言付け加えるとするなら、この六人の中で最も奇襲を得意とするという点だ。
グスタフのように正面から決して突っ込まず、相手の死角から必ず最初の攻撃を仕掛けるのが彼女流だ。そして冷静さを失った相手をじわりじわりといたぶっていくのが、ベスにとっての至福のひと時らしい。
「こんなものかしらぁ……?」
『そんなもんでいいんじゃないか? じゃあ次は俺だな』
兎にも角にもタイマンにおいて最強。それがこの俺ことジョージだ。
侍という職業上使える武器は刀だけだが、自分を強化する各種スキルや技、そして何より全職業で唯一、この職業だけが多彩な即死技を使える。
とまあこのようにメリットを挙げるとゲームバランスぶっ壊れな職業に思えるかもしれないが、そこはきちんとうまく出来ている。
DUR(耐久力)を底上げしなかった場合そこらの銃を持つ歩兵よりも素のDEF(防御力)が低く、そして刀をより上手く取り扱うためにPRO(器用さ)にもステータスを割り振らなければならない。
更にDEF(防御力)をATK(攻撃力)に転換する特殊技など、使い方次第では敵にも自分にも一撃必殺という状況に陥ることにもなり、意外とピーキーな職業なのである。
そんなピーキーな職業で戦場を生き残れるのが、俺の細やかな自慢なんだけどね。
『――とまあ、こんな感じか』
もちろんこの六人の中でもタイマン勝負をするのであれば俺は確実に勝つ自信がある。それくらいか。
『最後にシロさんか』
「ええ、ボクですね」
シロはニコリと笑うと、この場を統括するに相応しい自己紹介を始める。
「#FFFFF――皆さんからはシロと呼ばれているこのボクではありますが、主に皆さんの盾となる役割を担っています。職業は勇者であり、かつどんな武器種でもそつなくこなすことができます。大体は戦況に合わせて動き、皆さんの被弾が減る様に防御スキルを活用しています」
『嘘ではないけど、PvPだとシロさんは盾がメインじゃないでしょ』
「あっ! そうでしたね」
全く、昔だったら確かにメインの役割だけど、今の環境じゃ違うでしょうに。
「PvPですとボクは盾と矛、両方の役割をこなす万能型の動き、いわゆる遊撃をさせてもらっています」
得意武器は双刃剣。柄の両端に刃が付いているという少々特殊な武器だ。そういえばシロさんの武器の為に、昔ベスと俺とシロさんでとあるダンジョンを必死でクリアしたっけなぁ。
「今回は双刃剣ではなく、皆さんと連携して動くために剣と盾の装備でいくつもりです」
ちなみにこの人のシンプルな盾と剣での動きは洗練されている。ある意味勇者らしい装備の使い手といえるのか。
「――と、一通り確認はできたようですね」
『そうですね。攻撃手はベスとグスタフさん。後方支援及び前方支援はキリエとイスカ。そして俺とシロさんで全体的な遊撃をするといった形ですね』
「簡単に言えばいつも通りですね」
だったら確認する必要ないんじゃないのか……?
「さて、この位にしておきましょう。後は向こうでも作戦会議はできるでしょうし」
そう、俺さえ遅刻しなければね――って遅刻はもうしませんから!
『……じゃあ皆、次の戦いでも生きてこの場に戻ってくるぞ』
「当たり前のことを言わない!」
うるさいぞキリエ! 俺が綺麗に締めようとしているんだからそんなこと言わないでよ!




