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緊急防衛戦 ―VS一万の軍勢―

『さてと。何だかんだで協定結ぶことができそうだし、これで良しとするか』

「私も結構掘り出し物買えたし満足だわ」

「…………」


 ん? ラストはそんなに真剣な表情をしてどこを見ているんだ?


「……主様」

『どうした?』

「どうやら、襲撃者が来るみたいです」

『……そうか』


 やはり、プライドに関する勢力が来るか。


『その数いくつだ?』


 俺が敵の規模を聞いたところで、ラストは更に表情を厳しくする。


「これは……!」

『マズいのか?』

「主様! 急いで戦闘の準備を!」


 ラストの言葉を聞くなり、俺とキリエは即座に武器を構える。


『どれくらいの規模だ!?』

「千、二千……一万!?」


 歩兵や騎兵、その他もろもろを合わせて、その数およそ一万。


『どれだけ集めてきたってんだよ……!』


 一万となると確実に都市を陥落しに来ているとしか思えない。どうやら意地でもここを獲るつもりで相手は来ている様だ。


『色を確認しろ!』

「色は……黄土色と……深緑しんりょく!」

『黄土色……マシンバラに……キャストラインか……!』


 プライドを仕込んでいたのは、械王かいおう率いるマシンバラの方だったということか……!


『マズいな……破魔ノ太刀だと分が悪い……!』

「主様! 武器の召喚を!」

『ああ! 鋸太刀ノコギリダチを召喚しろ! あと籠釣瓶カゴツルベを――』

「主様! ですがまた精神汚染が――」

『汚染を気にして抹消されたら元も子もないだろうが!!』

「……はい!」


 流石に遠距離の召喚となると座標の都合で召喚に時間がかかる。ラストが魔法を詠唱している間、俺はキリエとこの街の地理を確認する。


『お前街を一周しているなら大体の地形は把握できているな!?』

「え、ええ! 大体は!」

『俺とお前、後はミリアの先導で防衛する! 《要塞女帝フォートレス・エンプレス》のお前なら、防衛戦のプロならこれくらいいけるだろ!?』


 俺はキリエの両肩を掴んで、自信がなさそうな目をしっかりと見つめて説得を試みる。

 彼女につけられた異名。それは彼女の関わった防衛戦において、一度も拠点を陥落させたことが無いという実績からつけられた異名。


「……やってやるわよ! やればいいんでしょ!」


 キリエがやる気になった所で、俺は早速キリエに指示を出す。


『お前とミリアでこの都市の部隊編成、及び配置を完璧にしろ! 俺はラストの召喚が終わり次第、すぐに遊撃に動く! ……絶対に生きて帰るぞ!』

「分かっているわよそんなこと!」


 キリエが走り出すと同時に、俺は街の者に大音量で情報を伝える。


『聞いてくれ!! この街にマシンバラとキャストラインの混合軍勢が向かってきている!! 敵の数およそ一万! 戦闘ができない一般市民は急いで避難しろ!! 戦える奴は俺と共にここに残り、この街の長であるミリアの指示に従って、この街を防衛するんだ!!』

「えぇっ!? 一万の軍勢!?」

「嘘だろそんなの……」


 俺の発言に対し、ある者は懐疑かいぎ心を持ち、ある者は怯えてパニックに陥る。だが今はそんなことをしている場合じゃない。

 現にラストの【遠望ビューイング】を使わなくてもいい程に、地平線が動いているのが目で見える。


「ほ、本当に来ているのかよ!?」

「そんなの勝てる訳が――」


 俺は皆の言葉をさえぎって、もう一度吼える。


『勝つんだ!! この街を、お前達の住むこの都市を、お前達で守るんだ!!』


 時間は一刻も争う事態だ。無駄な時間など一切ない。


「主様! 鋸太刀ノコギリダチの召喚は終わりました!」

『急いで籠釣瓶カゴツルベも準備しろ! 終わり次第、俺達は先頭に立って奴等を迎え撃つ!!』

「仰せのままに!」


 奴等が近づく音が聞こえる。奴等が近づく地鳴りを感じる。


『ここを獲らせはしない……《刀王》の名に懸けて……!』



     ◆ ◆ ◆



「――【大地防衛壁グランドウォール】!!」


 この街を守る憲兵達が次々と土を盛り上げて城壁を作り上げる。更にそこから追加詠唱を使って、壁一面に上ったりしてこられないよう棘を生やしてさらに防衛を固める。


『これでひとまずという所か?』


 流石にレアリティレベル120の召喚は時間がかかる。俺はやってくる敵の軍勢を確認しながら籠釣瓶の召喚をまちつつ、キリエに現状を問う。


「いいえ、まだよ」


 キリエはこの街の魔導師ソーサラーが創った防衛壁に飾り付けをするかのように、更なる召喚儀式を始める。


「――四方しほう! 静定せいてい轟雷ごうらい蒼天そうてん陸地くがち! 天地万象てんちばんしょうにおける精霊の御心のままに、われが生ける世を守りたまえ!! ――【四顛守護方陣フォースフィールド召喚サモン・ガーゴイル】!!」


 街いっぱいに広がる魔法陣に、ナイフを突き立てる。キリエの詠唱が完了すると同時に、街の四か所から、この街を守護するガーゴイルが召喚される。


「ゴボゴボ…………」


 あぶくのような鳴き声を発しながら現れた石造の悪魔は、背中には羽が、そして頭部にはねじれた角が生えている。


「いずれもレベル70はあるわ。ある程度の盾にはなってくれるでしょうね」

『これで、まずまずか……』

「まさか」


 まさか、更に召喚をするつもりか?


「【呼出コール召喚サモン】」


 キリエはニヤリと笑って、自分の一番お気に入りのTMを呼び出しに入る。


「――出てきなさい。むくろの王、ノーライフ・キング」


 キリエの目の前の魔法陣から、マントを身に纏い王冠を被った骸骨が現れる。杖を持った骸骨は口から瘴気を吐きだし、辺りに不気味な空気を纏い始める。


「フシュー……」


 俺はそれを見て、キリエが何をしようとしているのかをすぐに察知する。


『……お前、マジでやる気か』

「ええ。触媒しょくばいならこれからいっぱい出るでしょうし。それに……ここで出さなくて何時いつ出すのよ」


 あー、こりゃ敵さんご愁傷様だわ。二重の意味で。


『……そろそろ来るぞ』

「ミリアは上で避難している市民を【超防衛壁ハイディフェンスフィールド】で守るらしいから、指揮権は私が持っているわ」

『そうか……できる限り、こっちの死者は出すなよ』

「……善処するわ」


 一瞬の溜めが気になるが、ここはキリエを信頼するしかない。


『ラスト、召喚は完了したか?』

「只今終えました」


 そう言ってラストは、うやうやしく俺の前に刀を献上する。


『……本気で行く。ラストは俺の援護を』

「もとより、そのつもりで」


 異国での防衛戦。相手にとってイレギュラーである俺達が、どこまで喰らい付けるか――



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