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32話 片思いの盛り上がり

レベッカ視点です

 学園に来てしばらくして、私の考え方は前とはかなり変わっていた。変なプライドがなくなったというか、天狗の鼻をへし折られたというか…。


 理由は簡単。この学園にはすごい生徒が多すぎた。生まれ育った環境とか今までの教育レベルの差だけでは到底説明できないくらい、私と比べものにならないほど力を持った生徒も何人かいたし、そういう化物級を除いても全体的なレベルがめちゃくちゃ高かった。


 私なんて光属性の魔力の特殊性を除けばせいぜい「中の中」の実力といったところだった。


 そして多くの場合、優秀な生徒たちは今の実力に満足せず、毎日ものすごく努力していた。彼らが今までも環境に甘えることなく努力し続けてきただろうなということは、彼らの姿を見ていると容易に想像できた。


 「私は甘やかされて育った貴族とは根性が違う」。そう考えていた自分が恥ずかしくなった。


 もっと恥ずかしい事実というか、誰にも言えない黒歴史なのは、私が入学前はこの国のエリートコースの第一歩って呼ばれる「生徒会執行部」にたぶん選ばれるんじゃないか、もし選ばれなかったらそれは身分の問題で、「平等」という学園の理念は建前にすぎないって結論になるね、と本気で思っていたことだった。


 …誰にも言わなくて本当によかった。


 結局どうなったかって?もちろん選ばれるわけがない。魔力は属性が変わっているだけで「比較的強い」というレベルにすぎず、入学テストではちょうど真ん中くらいの成績だった。


 そんな生徒が光属性持ちって理由だけで選ばれたら、それこそ「平等」という理念は嘘なのかって話になっちゃう。


 まあ、実際には王家や三大公爵家出身の生徒はほぼ無条件で選ばれるらしいので、「平等」は建前なのかと聞かれれば、たぶん答えは部分的にYESである。


 実際に今年の新入生に関しても生徒会執行部には王家と三大公爵家出身の生徒が選ばれているが…彼らが身分だけで選ばれたかというと、その答えは全面的にNOである。


 実は先ほど説明した「私と比べものにならない力を持った化物級の生徒」の代表格がその王家と三大公爵家出身の生徒だった。特にチェルシー・ローズデール公爵令嬢は…まさに規格外?もはや奇想天外?といった感じのチートキャラだった。


 私の光属性と並ぶレア属性である闇属性の魔力を持ち、その闇属性の魔法はすでに最上級魔法まで操ることができるらしい。


 魔力ばかりが注目されがちだが、実は剣術に関しても相当な実力者らしい。


 彼女が13歳の時から活動を始めた、彼女の所属パーティーは、今や地元ローズデール・ラインハルトの冒険者ギルドで三本の指に入るトップパーティーになっているらしい…。


 そして実際に彼女が実技の授業中に見せる魔法の火力や、剣術の腕を見ていると、たぶん彼女の噂はほぼすべてが事実に基づくものだろうなと思ってしまう。


 ちなみに入学テストでは筆記も実技も当然のように学年トップの成績を叩き出していた。


 外見はまさに「高貴な貴族令嬢」という感じの上品な美少女で、とても現役の冒険者には見えない。


 ただ、黙っていると結構冷たそうに見えるし、本人はどちらかというと物静かなタイプで自分からはあまり他の生徒と係ろうとしないため、私はまだ彼女と話をしたことがほとんどない。正直にいうと、ちょっと、いやかなり怖い。


 彼女と仲の良い人たちの話によると実際には全然怖い人ではなく、むしろ気取ったところが全くないフレンドリーで優しい人らしいが…まだ私から声をかけてみる勇気はなかった。


 ちなみに彼女と仲良くなれている人たちは、彼女が放つ氷のようなオーラが与えるプレッシャーを乗り越えて自分から積極的に話しかけた猛者たちである。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 学園に来てへし折られた私のプライドはそれだけではなかった。この学園には、私が持っていた、自分の女の子としての魅力に関するプライドを粉々にした人物もいた。その人物は私の片思いの相手であるベックフォード先生だった。


 先生に恋した私は、当然ながら剣術講義の受講を決めた。先生の教え方とテキストはめちゃくちゃ分かりやすく、私はまるで新しい魔法を習得するような感覚で剣術を習っていくことができた。剣術に関する才能も悪くないようで、私の剣の実力は順調に伸びている。


 でも肝心の先生は、私がどんなに頑張ってアプローチをかけても全く興味を示してくれなかった。私は自分から男の人にアプローチをかけるなんて人生初だから、私のやり方があまり上手ではなかった可能性ももちろんあるとは思うが、それにしても、である。


 私がどんなに好意をアピールしても、わざと隙を見せてみても、彼は完全に無反応だった。髪型変えてみたり、メガネをかけてみたり、自慢のおっぱいを強調した服装にしてみたり、もういろいろ試してみたけど、先生は私が何をしても私に目もくれなかった。


 というかたぶん私の外見や服装に全く興味がないから、変化に気づいてもいないと思う。


 旧校舎のベンチでジャンクフードを食べようとしている先生を偶然見つけて、チャンスだと思って一緒にランチしようとした時なんかは、明らかに私を避けるような感じで仕事に戻っていってしまった。正直めちゃくちゃ傷ついた。


 しばらくして、先生はキャスカートさんと付き合っているという噂が出回った。


 言われてみれば、誰に対しても苗字で呼ぶことを徹底している先生は、彼女のことだけは「アイリーン」とファーストネームの呼び捨てで呼んでいた。しかも長い付き合いだし、師弟関係だし、パーティーメンバーだし。…これ以上ないくらいお似合いだし。


 なーんだ、そういうことだったのか、あそこまで先生に一途に想われてるキャスカートさんうらやましい爆発しろーと思ったけど、諦めるにしても先生本人に確認してからにしたいと思って先生に聞いてみた。


 そしたら「アイリーンは信頼するパーティーメンバーで大事な友人だけど、恋愛関係ではない」と言われた。やったまだいける!と思ってまたアプローチを頑張ってみたものの、先生の反応は何も変わらなかった。


 教員として生徒の私に対して剣術や冒険者の道に関する指導やアドバイスはするが、それ以外はお断りって姿勢が明確に伝わってきた。手作りクッキーは引きつった顔で受け取ってくれたけど、ランチの誘いは3回くらい断られた。

 

 ……今まで美少女としてチヤホヤされてきた私のプライドは木っ端微塵になったけど、正直、逆に燃えた。


 「私をこんな風に扱った男はあなたが初めて、ますます興味が湧いてきたわ」とか「悔しい。絶対に振り向かせてやる」と、物語に出てくるちょっと残念な美少女のように意地になった部分ももちろんある。


 でもそれよりも、光属性の魔力にも私の外見にも一切興味を示さない彼にどうにかして私のことを好きになってもらえたら、彼は素の私自身を心から愛してくれそうな気がした。それこそ何かの理由で私が魔力を失っても、年を取って可愛くなくなっても。


 そう、彼は私の光属性の魔力にも全く関心を示してはくれなかった。まあ、彼は魔導士じゃないからね。何がどう珍しいのか分からないだろうし、特に興味もないだろうね…。


 ……いや少しは興味を持ってよ。この大陸に10人もいないんだよ?超レアキャラだよ?あなたが少しでも興味を持ってくれたら私喜んで光属性の特殊性とかすごさとか、いくらでも説明するのに…。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 

 先生の様子がおかしい。突然魂が抜けたような感じになってしまった。一応仕事はちゃんとこなしているけど、最近の彼の顔の生気のなさと言ったら…まるでゾンビのようだった。こっそり浄化魔法でもかけてみようかと思っちゃったくらい。


 彼の異変に気づいたのは私だけではないようで、剣術授業を受講している女子の会話は先生に何があったのかという話題で持ちきりになった。


 ローズデールさんと仲が良いリズが、先生と長い付き合いのローズデールさんにも聞いてみたらしいけど、彼女も全く原因が分からないらしく、むしろ分かったらすぐに教えてほしいと頼まれてしまったらしい。


 女子の間で出した結論は「おそらく失恋ではないか」というもので、どうも先生に気があるように見えて内心警戒しているクレスウェルさんは「傷ついた男性の心を癒すにはどうしたら良いだろうか…」と真剣な顔でつぶやいていた。


 …いやあんた名門伯爵家の娘だろう。平民との交際なんかまず無理だから諦めなさいよ。あの完璧超人のカイル王子の方があんたにとってはまだ可能性高いんじゃないの。


 そして、先生の様子がおかしくなってから約一週間、友人たちと一緒に商店街で食事に出かけた私に、千載一遇のチャンスがめぐってきた。例の死人のような生気のない顔で、一人寂しく酒屋に入っていく先生を見かけたのである。

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