第80話
個室に入り、数分が経った。その間、俺は父さん達から今回、何で領地に父さんが直に行くのかを聞いた。
「……クリフもこの間の資料整理の時に目にしたと思うけど、今クールベルト領に1匹の竜が現れているんだ」
「竜……」
そう言えば、この間の資料整理の時、偶然父さんの机から落ちていた紙を取ってみると「竜が——」と書かれている紙を見つけた。でも、あの時は父さんに直ぐにその紙を取られ書かれている内容を読むことは出来なかったけど、まさか領地に竜が出現しているなんてな……
「それは、危険な竜なの?」
「いや、それはない。と断言はできないけど、その竜が居る山の近くの村の村長に少し問い詰めたら数年前から山に住んで居るらしいんだよね」
「この事って、爺ちゃんは知ってるの?」
竜となら、あの最強の爺ちゃんに言えば片付けれると思うしな、だって魔王すら倒している爺ちゃんだ。
「いや、義父さんにはまだ話してないよ。義父さん、最近クリフが家から出た後何処かに出掛けてるみたいで話機会が無いんだよね。エレミア達には学校の勉学に励んでほしいし、リサラに言ったら絶対に1人で討伐に行くかもしれないし」
「……母さんって、そんなに好戦的なの?」
「義父さんの娘だよ?」
「あ~」
爺ちゃんの子、そう言われたら納得してしまうな……、そして話が一区切りついた頃、ノック音と一緒に扉を開ける音がし、1人の男性が部屋の中に入って来た。
「よっ、数日振りだなクリム。って、そいつが【獄炎の魔女】との子か?」
「紹介するよ。この子は、クリフ。クリフ、この人は父さんの友達兼商業ギルドSランク商人のアイザックだよ」
「よろしくお願いします。アイザックさん」
「おう、よろしくなクリフ」
そう言いながら、俺達とテーブル挟んであるソファにドカッと座り「それで、今日はどういった頼みだ?」と言った。
「ああ、ちょっと領地に行く予定が出来てしまってね。食料と衣類、それと武器の調達を頼みに来たんだ」
「成程な、どの位の量欲しいんだ?」
「そうだね。食料は、村1個分は欲しいかな衣類の方は下着と上着をセットで50人分、武器の方は魔法が付与されてるのを10本、片手剣と両手剣を5本ずつで頼みたいかな」
父さんがアイザックさんにそう言うと、アイザックさんは少し考え「分かった。この量なら直ぐに出せる」と言った。
「いや、アイザック。今回は、運びまで頼みたいんだ」
「運びって、クリムな……前にも言ったが、俺はこれでもSランクの商人なのだぞ? 爺に面倒な紙提出するのに何日掛かると思ってんだ?」
「そこは、大丈夫だよ。先にギルド長の方には、話をつけてるからアイザック本人が同行許可したら、連れて行っていいって言われてるんだよ。だから、来てくれないか?」
その言葉を聞いたアイザックさんは、「手回しが早いな……」と呟き、「良いぞ、行ってやる」と言った。
「でも、まさかあの爺を既に黙らせてるなんてな、どうやったんだ?」
「簡単だよ。レグルス様に頼んでアイザックを借りる許可を取ってもらったんだよ」
「なあ、クリム。まさか、また俺を面倒な事に引き込もうとしてないか?」
「そんな、訳ないだろう? 私がいつ、アイザックを面倒な事に引き込んだい?」
「……「簡単なダンジョンに行くから、荷物持ちで付き合ってくれ」と言われ、当日向かった場所は当時、最難関だったダンジョンに連れて行かれ。「リサラと2人じゃ手に負えないから、手伝いにちょっと来てくれ」と言われ、手伝いに行ったら他国との戦争に巻き込まれ、「良い素材が手に入りそうなんだ。アイザックも一緒に行こうぜ」と言われ、付いて行ったら聖獣との喧嘩に付き合わされ、俺はお前に何度も面倒な事に付き合わされてるんだよッ!」
アイザックさんは、フルフルと肩を揺らしながら父さんに怒鳴りつけると、父さんは笑みを浮かべ「アイザックも楽しそうにしてたから、ごめんな面倒な事に着き合わせてるつもりは無かったんだよ。……」と謝った。
「ああ、もう! 分かったよ。付いて行ってやるよ!」
「本当かい?! ありがとう、アイザック。なら、早速この用紙にサインしてくれ」
「ああ、分かったよ。ペン貸せ」
アイザックさんは、父さんから出された紙にペンを貸せと言い、父さんからペンを受け取りサラサラと自分の名前を書いた。
「はあ~、それで今回何で領地に行くんだ?」
「言って無かったね。ちょっと、領地に竜が現れてさ大変だから見に行くんだよ」
「……」
アイザックさんは、父さんのその言葉を聞きペンを持ったまま固まり、その隙にサインした紙を父さんは取り自分のカバンの中に入れた。
「ふ、ふざんけなよ。クリム! 竜なんて聞いて無いぞ! 俺は、行かないからな!」
「もう、契約書にサインしたから着いて来てもらうよ。アイザック、それじゃ出発は3日後だからよろしくね」
そう言って、俺とヴェルトさんの腕を掴み父さんはサっと部屋から出て行った。腕を掴まれていた俺とヴェルトさんも部屋から出て行き扉を閉めると、怒声が聞こえた。
「ふざけんなよ。クリム!!!」
父さんは、その怒声が聞こえてないと言わんばかりに階段を降り受付の人に「そりじゃ、話し合いは終わったから」と言って、俺達は商業ギルドを出て行った。




