エピローグ~『あの日』と「この日」~
『拝啓 自分様
俺は橋本祐樹です。過去に飛ばされこうして手紙を書いています。未来の俺はどうしているのでしょうか』
「橋本先生! 定期検診を受けてなかった妊婦の受け入れ要請です。どこも受け入れ拒否されているようで陣痛の感覚が非常に短くなっているようです。かなり前の検診では逆子の可能性が高いと言われたようで……」
『俺はとある先生から命の尊さを学びました』
「病室は?! オペ室は?!」
「あいてないです!」
『そこにいる俺はあの先生と同じ後ろ姿をしているのでしょうか』
「病室は何とかしてくれ。オペは早急に済ます。オペ室に連絡をいれてくれ。今日は四件に変更だと」
「わ、わかりました」
『父さん、母さん、もしもこの手紙を読んでいたら、俺が医大生だったことを誇りに思ってください』
「受け入れろ!」
『父さんも母さんも大好きです。生きて戻れたら、医者として精一杯生きて行きたいと思います。
敬具』
『拝啓 自分様
私は佳川藍です。ずっと昔の時代にきてしまっています。未来の私へ。どうしてますか』
「佳川先生、待ってください!」
『私はずっと一人で行動することができない人でした。周りと同じようにただただ何も考えず生きてました』
「はやくしてー。おいてくよー」
『だけど私は色々な人に出会い、色々な考えを知って、色々な生き方を知りました』
「そんなこと言っても……こんな山の中に墓が眠ってるんですか」
『大切な人もいました。私の無二の友達です。彼が私の意思の後押しになっていました』
「色々な資料を調べたところによるとこの辺りはまだ手をつけられてないのよ。年代的にもあの人の墓はあるはずよ」
「そう言って何度目ですかー」
『自分の信念に従って生きたいと思うようになりました。未来の私は自分の信念を貫いてますか』
「うるさいわね。失敗は成功のもとよ」
『まだはっきりとした夢は描けないけれど、大切な人たちの意思を、身近に感じることができる仕事をしたいと思っています』
「原田左之助がどこで死んだとか、先生は本当に原田さんが好きなんですね」
『家族のみんな、友達のみんな、これを読んでないことを祈ってます。もし読んでいる時は、こう言います』
「そんなあなたも一緒にモンゴルに探しに行ったり、こうして山登りしたり、充分、原田左之助が好きよ」
「へへ、まあそうなんですけどね」
『みんな大好きです。ありがとう。
敬具』




