25話 時に強引に、我を通してみせる
「くっ……!」
炎で作られた邪神の分身体。
それはなかなかの強敵で、ライラックを始めとした騎士達を苦戦に追い込んでいた。
「みなさん、大丈夫ですか!?」
「ええ、これくらい……くっ、なんともありません!」
ライラックを始め、騎士達は交戦しつつ、問題ないと返す。
しかし、苦戦していることは一目瞭然だ。
分身体を倒すことができず……
時間が経過すると共に、少しずつ追い込まれていく。
「あなたは……邪魔です!」
ユースティアナは、音を超える速度で剣を閃かせた。
邪神の体を切り刻んでいく。
しかし、邪神は強い再生能力を持つ。
斬られたところから修復が始まり、ユースティアナの攻撃がなかったことにされてしまう。
邪神を倒す方法は二つ。
修復不可能なほどの痛烈な一撃を与えるか。
あるいは、核……人間で言う心臓を破壊するか。
邪神の防御力は高く、両断することはユースティアナでも難しい。
また、核は体内を常に移動しているため、その場所を特定することは不可能に近い。
結局のところ、地道にダメージを与え続けて、邪神の魔力が尽きるのを待つしかない。
ただ……
「ぐあっ!?」
一人の騎士が分身体との競り合いに負けて、吹き飛ばされた。
ライラックが前に出てかばう。
「今のうちに後退を!」
「し、しかし自分はまだ……」
「後続と後方支援にこのことを伝えてください!」
「くっ……わ、わかりました!」
一人、欠けた。
たった一人。
されど一人。
その戦力は大きく、ライラック達は一気に分身体に押されていく。
時間が経てば援軍が来るだろうが……
果たして、それまで保つか?
「こうなれば……!」
邪神も分身体も、まとめて全て叩き斬る!
ユースティアナは覚悟を決めて、全身の力を……
「団長!」
「えっ」
広間の入り口の方にフェルミーの姿が見えた。
なぜ、彼女がここに?
後方支援に徹しているはずでは?
驚きのあまり、ユースティアナの動きが止まってしまう。
ライラック達も同じだ。
その隙を見逃すことなく、邪神が動いて……
「!?」
突然、その体にワイヤーが絡みついた。
そのまま、ぐいっと強烈な力で引かれ、邪神は、洞窟のさらに奥に消えていく。
「え? 今の……なんですか?」
フェルミーに気をとられていたため、なにが起きたかわからない。
何者かが邪神を奥に引きずり寄せた?
なぜ?
ユースティアナは、次々と起きる事態に混乱するものの、
「……邪神は後回しにします! 今は、ここに残った分身体を掃討します!」
「「「はっ!!!」」」
すぐに思考を切り替えて、そう命令を飛ばした。
――――――――――
「フェルミーはうまくやってくれたな」
わざと姿を見せて、ユースティアナ達の気を逸らす。
その間に、邪神を洞窟の奥に強引に移動させる。
邪神がいなくなれば、ユースティアナは分身体に専念できる。
まず負けることはないだろう。
そして俺は……
「お前を倒せばいい」
「ラーーー……♪」
表情はわからないものの、狩りの時間を邪魔されて、邪神は怒りを覚えているみたいだ。
さきほどよりも空気がピリついていて、発せられるオーラの量が違う。
邪神は歌う。
狂い、歌う。
さきほどとは比べ物にならないほどの炎が湧き上がる。
ここの空間を埋め尽くすほどの量で。
触れただけで全身を燃やし尽くすほどの熱で。
全てを灰に帰すだろう。
「ルー……ラー……♪」
邪神は勝ち誇るように歌う。
まったく……
「耳障りな歌だ、もう少し練習しろ」
俺は、あえて前に出て……
紅蓮の炎を乗り越えて、うっとうしい歌を撒き散らす邪神の顔面に拳を叩き込んでやった。
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