第六話 黄金の瞳(4/7)
「なっ……一対一の決闘では無かったのですかっ!?」
「あっ、アモンが……ッアモンが――!!」
突然の加勢に、フロンスとセイルが驚嘆する声が聞こえた。
俺は次々とのしかかって来る捨て身の騎士の肉を引き裂きながら、姑息な人間共の断末魔を聞く。
「我々は誇り高き騎士だ。この様な行為を反吐が出る程嫌悪するだけのプライドもある。だがしかし! 例え汚名を着て永劫罵られようと、貴様ら悪はここで断罪しなければならないのだ! それが民達の安寧となるならば、我等は喜んで卑怯者の名を頂戴する!」
――こんな事でこの俺を抑え込んだつもりでいるのか? 自分の身を矢面に曝け出して、そんな僅かな時間を稼いで貴様達に何が成せる!
憤った俺は覆い被さった盾や甲冑をこの腕で引き千切りながら騎士を血祭りに上げていく。だがこいつらは我が身が惜しくも無いかの様に次々と俺にのし掛かって来る。
だがそんな事をしてどうする。貴様達は何に賭けている。
もしやそこに佇む腑抜けの男に何かが出来ると。この俺を滅するだけの力があると、そう信じているのか。
――だったら嗤えるぜ。この不甲斐ない男に本当にそんな事が叶えられると、本当にお前達はそう信じているのか。
「お前達っ! どうしてっ!」
ダルフもまたそんな悲痛の声を上げている。その行為が命を賭した一時だけの時間稼ぎにしかならない事が奴にもわかっているからだ。しかし騎士達は俺に覆い被さって来る事をやめようとしない。
この手に引き裂かれる間際に、コイツらは言葉を遺して死んでいく。
「隊長、あんたが死んだら全部終わりなんだ!」
「あんたは俺達の、この世界の希望だ! この男を殺せるのは多分! 俺達の認めたアンタだけだしなぁっ!」
「だから……って……」
「負けんなよダルフッ!」
ダルフに向かって最後の微笑みを見せながら、黒い腕に掴まれ潰されていく。その様を奴は立ち尽くして見つめていた。
いい加減に鬱陶しく感じた俺は、山となった甲冑の中から叫声を上げた。
「皆殺しだ! 貴様ら全員肉塊にしてやるっ!!」
振り被った俺の腕が正面の盾を吹っ飛ばした。そこに開けた視界の僅かに、金色の瞳に光が宿っていくのを見た。
「続けダルフ!」
向こうからガリオンが走り出して来ていた。俺は奴に向かって拳を突き出したが、勢い良く振り下ろされて来たガリオンの戦槌が、この肘をピンポイントで捉えて地に叩き付けた。走る激烈な痛みに声を上げるしか無い。
「がぁああっ!!」
だがそれでも体制を立て直して、残った腕で自身に覆い被さる盾を貫き剥ぎ取り続ける。
「ダルフっ!」
奴の名を呼んだガリオンに続けて、覆い被さっていた騎士達もまたダルフへと振り返っていた。
「いけダルフっ!」
「貫けッ! その正義の剣を!」
四つん這いになって呻き、身動きの取れぬアモン俺の背中が盾の隙間に見えていた。
「みんな……っ!」
立ち上がってクレイモアを構えたダルフは、ガリオンが豪快な笑顔で叫び上げるのを見た――。
「終わらせてしまえこの混沌を! ダルフッお前の剣で!!」
奴の全身に電撃が駆け巡る。そして弾かれたように飛び出して、隙間に覗いている伏せた俺の背骨に向かって全力のクレイモアを振り下ろしていた。
「――ガアアッッ!!!」
飛び上がって放たれて来たの渾身の一撃に合わせ、一気に散開していた盾の群れ。そこに残された俺の背にはクレイモアが突き立っていた。
体内で何かが砕ける音がしたのを感じた。堪らず血を吐いて意識を失い掛ける。引き上げられていったクレイモアの後に、砕かれた背中から温かい鮮血が噴いて、口からも赤い液が垂れる。
……意識が――とぶ………………。




