エピローグ 次代の魔王
パルマーが氷漬けにされた後、次の皇帝となったピエールは、巨大な氷塊となったパルマーを秘密裏に城から運び出し、地下の奥深いところにあるマグマ溜りに放り込むが氷は溶けなかった。規格外の魔力を持つ勇者が死力を尽くして魔力を絞り出した上、生半可な威力では魔素爆弾が生み出すエネルギーに負けると思ったピエールは、魔法陣を起動させる時に全力を出してしまっていたからだ。
パルマーがこの大陸を統一してから15年。新聞などの情報操作の力もあり、既に国民の大多数の人間が親しみを感じていたパルマーの死は、ディール帝国の国民に深い悲しみと怒りをもたらした。既に後に引けなくなっていたピエールは、パルマーが残した遺言から最適だと思ったパターンを選択する。
そしてパルマーの正妻であり、皇妃のブルクリンデが説明を行う。レイ王国の勇者が皇帝パルマーを殺し、半死半生だった勇者をピエールが殺したと。ディール帝国の怒りの矛先が向いたレイ王国は、それから僅か3日でディール帝国軍に全土占領される。
ディール帝国が統一した北の大陸の、およそ2倍の広さの南の大陸は1か月ほどでディール帝国に占領されることとなる。南の大陸の統一が済んだ時、北の大陸に住む国民の多くは次代の皇帝、ピエールの支持をした。
この引き継ぎ事業が成功した大きな理由は、パルマーが育て、パルマーを支えていた元奴隷の公爵、伯爵の全員がピエールを支えていたからになる。元奴隷には40代の人間が多く、彼らにも若くて優秀な息子娘が居たため、パルマーが表舞台を去っても国が傾くことはなかった。
その上で、大陸に平穏をもたらしたパルマーの子であるという影響は大きい。戦争と平和が短期間で交互に訪れていた国々を纏め上げ、15年もの平和な時代を築いたのはパルマーの功績であり、それは戦乱期を生きてきた老人達にとって何よりも得難いものだった。
またこの15年間の間に生まれてきた子供達はパルマーの悪行についての実感がなく、被害に遭わなかった地域の国民にとっても、平和な期間というのはパルマーから残虐なイメージを遠ざけた。
結果的にパルマーを恨み続けるのは被害のあった地域に親戚や親や子が居た一部の国民だけに過ぎず、それらもほぼ淘汰されていたため、安定した政治基盤を引き継いだピエールはディール帝国を更なる繁栄へと導いていく。
パルマーが文字通り命を賭けた結果、次代のピエールは長く統治をすることになり、更に安定した政治基盤を子へと引き継がせる。ディール帝国は長らく繁栄を続け、350年もの間、北の大陸を支配し続けた。
これにて『ガチの中世って分割相続制なんですね……公爵家三男に生まれましたが無事領土は貰えそうです。そんなに多くない上、チートな兄達が狙って来ていますが。』は完結です。これまでたくさんのお気に入り登録や評価、感想をありがとうございました。完結出来たのは読者の皆様のおかげです。
このあと番外編などを投稿するかもしれませんが、前に完結後のあとがきで同じようなことを書いて結局書いていないので、今後この作品が更新されるかは不明です。というかたぶん更新されないです。
今は少し疲れたので、ちょっとだけお休みして新作を書きたいと思います。おそらく普通の少女が異世界でキャッキャウフフをする話になると思います。一応骨組みは固まっていますが、今作のように主人公最強系ではないと思います。
改めて読者の皆様、ここまでの読了お疲れさまでした。最後に評価を付けて下さると非常に嬉しいです。また次回作や他の場で会えることを楽しみにしています。これまでありがとうございました。
↓次回作
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330658740091741




