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第83話 準備期間

平和とは戦争と戦争の間の期間とはよく言うけど、幾つか特殊な例が存在する。対抗勢力が戦争により文字通り消滅した場合、次の戦争は確実に内乱になる。俺の子孫達がどこまで優秀かにもよるけど、大陸全土を統一したから200年から300年ぐらいは平和な期間が訪れるだろうし、その間に国民意識がちゃんと育まれた場合、その戦乱期は短いものとなる。初代から2代目の引き継ぎさえ上手く行けば、後は何とでもなるはずだ。


暗愚が国のトップにならないようにするための、後継者指名制度。パルパル教が一夫多妻制を認めているので、そう簡単には御家断絶による滅亡に至らないだろう。第二次5カ年計画の結果、食料自給率は大幅に上がり、国内は物で溢れかえる状態となった。


3年前、統一後初となる飢饉は日照不足による冷害だったが、前年度までの蓄えが十分にあったのと、生産量が5割以下になってもなお国民全員が食事に困らないだけの生産力があったため、特に問題にもならなかった。海軍が新設されてから造船技術は発達を続け、漁業も盛んになったため、多くの海産物が国民の食卓に並ぶこととなる。


無事に刺身が一部地域で定着してくれているようで、個人的には嬉しい。相変わらず食べる時は醤油じゃなくて塩を付けて食べているけど。


人口も回復傾向にあり、この10年で人口は9000万人から1億200万人にまで増加した。その国民全員が国勢調査の時、支持不支持のアンケートで相変わらず100%の人が支持を表明しているので、俺が望むならこの先死ぬまで好きに生きることが出来そう。不支持を表明した人を処刑にすることで得た偽りの100%だけど。


10歳になったピエールは、剣術と水属性魔法がどんどん伸びていって、結構な威力の氷魔法を使うことが出来るようになった。まあ魔力量が相変わらず少ないから一発撃っただけでガス欠になる残念な魔法剣士だけど、剛力の特性もあり剣の実力はかなり高い。


そしてそのピエールを、南の大陸のあるレイ王国に送り込む予定。人口は5000万人ほどで、王国とは思えないほどの領土の広さだけど、そもそも文化が違うから王国や帝国の概念も違っていた。


直接的な外交はしていないというか、表では一切接触をしていないレイ王国。距離もあるし、向こうは向こうで他の国と争っているからこちらの大陸に仕掛けて来ない。そして密入国してもバレないザルな世界だから、10年がかりでディール帝国の諜報員達をレイ王国へ送り、定住させている。


この後、5年ほどピエールをレイ王国に住ませて、魔王パルマーを倒す勇者のパーティーに入れさせる。前に召喚された勇者はまだいるようだけど、俺を対象にしてないから貰っている恩恵は少なそうだし、さっさと殺して俺を倒せる勇者を召喚させよう。


「10歳で親元を離れるのは、ちょっと早すぎると思います」

「リンデが実家を出たのも11歳とかそこら辺じゃなかったか?

まあ年に1回は戻って来させるし、6年後には玉座に座ってるはずだぞ」

「……死ねますの?」

「どんなに内政とかでポイント稼いでも、8桁殺している時点でアウトだろうよ。

この前、久々に交信出来たから今のカルマ値聞いたらマイナス7000恒河沙だって言われたし」


リンデさんはピエールの旅立ちに強く反対しなかったけど、6年後に玉座という言葉を聞いた時に複雑そうな表情をしていた。……たぶん、俺が標的となる次の勇者は相当な恩恵を受けて召喚されるはず。


どういう計算をしたら7000恒河沙も罪が積み上がるのか不明だけど、1人の殺人で‐10000という具体的な数値は聞けたから後は謎補正をかけていくしかないな。殺した人の数が増えていくと、補正も指数関数的なペースで上がって行くらしいし、10の52乗の単位が出て来ても不思議ではない。殺した理由の大半が見せしめとかそういうのも影響してそう。


その勇者を召喚させるためにも、第三次5カ年計画では軍事力を強化していく。魔素爆弾を落としたらそれで終わりなんだけど、それはともかく軍艦を量産して艦隊作って海の上に浮かべたい。圧倒的な軍事力で、蹂躙したい。向こうは剣や槍で戦っている最中、大きく射程の伸びた大砲や小銃で薙ぎ払うとか楽しそう。


特に原子力戦艦みたいな戦艦とか、浪漫の塊みたいなものじゃない?国力には余裕があるので、こういう海に浮かべる玩具を作っても国民は誰も反対しないという。反対したら村ごと消えるし。


……この10年間で、蜂起した村や男爵領は8つ。いずれも魔素爆弾で纏めて吹き飛ばしたのでもはや暴君ってレベルじゃないな。次の5年間では国費を費やして軍人を増やし、魔素爆弾エネルギーを使う戦艦の建造に入るから、もっと蜂起されそう。連鎖されると厄介なので、なるべく事前に察知して対処したいけど、告発とかが中々上にまで届かないから対応は難しい。


俺のカルマ値が、マイナスのままというのは俺自身の価値観と一致している。俺が戦争で大量虐殺をする前の人口が1億人だとして、それが1億200万人に増え、飢える人もその日の暮らしに困る人もほぼ皆無となった。食文化は豊かになり、識字率は右肩上がりだ。


で、それが1000万人殺したことの免罪符になるかと問われれば俺はならないと判断している。実際に免罪符にはなってないし、この世界のシステムさんは現代日本に近い価値観なのだろう。というかどんな世界であれ、殺人が一番重い罪なのは当たり前だ。そう言えば宣戦布告していない時もあったから、戦争中という免罪符も使えなさそう。そりゃ雪だるま式に増えていくわけだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺し殺されが常識の中世に放り込んでおいて 殺しまくって生き残ったら七千恒河沙とか 絶対女神から見てのカルマでしょうが 統一後、発展に尽くして、最後には死をもって終わりとする その覚悟もしてい…
[一言] ポイントだけ言い捨てて泣いて帰ったとかじゃないですかね。
[気になる点] カルマ値仏恥義理で低くなってるのは女神の信徒を優先して処して女神様の信仰パワーを合理的、物理的に無くしていってたらそら評価点低くなるのも仕方ないね
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