表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/95

第78話 相互確証破壊

エストアニ王国に使用した魔素爆弾は、魔力を構成する魔素の中でも特定の魔素だけを抽出して熱を奪いながら押し固める工程が必要であり、純度が下がると急激に威力が落ちていく。まあ連鎖反応が途切れることになるから威力が下がるのは当たり前なんだけど、大型になると確実に純度が下がるから計算上の威力は出せないな。


あと威力を計算するために使用した式が核威力を概算する計算式だから誤差はあるだろう。間違いなく一生使わないと思っていた数式を使うことになるとはな。単純だから一度覚えたら忘れないような式だけど。E=cρR^5/t^2


もしもこの魔素爆弾の技術が流出すれば、ディール帝国にも魔素爆弾を落とされる可能性はある。ミサイルなどの技術はこの世界だと皆無だが、持ち運んで起爆するぐらいなら誰でも出来るだろう。魔法技術があるから、現時点でも魔法を利用して遠くに飛ばす方法は何通りか思い浮かぶ。将来的には、確実に魔素ミサイルが完成するだろうな。


相互確証破壊。前の世界では、倫理観が発達していたお陰でギリギリ行われなかったことだ。しかしこの世界でそのような期待をしてはいけない。一歩間違えれば、人類滅亡にすら至る可能性がある。というか前の世界でも、俺が生きていた時代の後で相互確証破壊が行われなかったとは断言出来ないからな。地球を数十回は更地に出来る核兵器が地球上に存在している以上、その危険は常にあった。


さて。他国に技術や戦術が伝わらないようにしたい時、どうすれば良いか。答えは至極単純。技術が伝播する前に、他国を全て滅ぼせば良い。かつて地球で最も栄えた帝国の一つであるチンギス・カンのモンゴル帝国は、同じような騎馬戦術を何度も使用した。日本で言う、釣り野伏せを多用していたのだ。


しかし他国に対策されることは無かった。他国に伝播する前に滅ぼしていたからだ。あとは略奪、虐殺のし過ぎでモンゴル帝国の戦術を伝える語り部が当時存在出来なかったのも要因の一つだろう。侵攻スピードが速ければ、スパイや流出による技術伝達速度を追い越すことも可能だ。


元々、この大陸を征服する心づもりではあった。それが少し、早くなっただけだ。エストアニ王国の内部処理が片付く前に、ボルグハルト王国へ宣戦布告。降伏勧告すらせず、王都であるボルグハルト公爵領の城塞へ魔素爆弾を落とす。兄のアルフレートは、今後を考えると殺しておいた方が良いし、奴のハーレムで埋まっている宮中なんて吹き飛ばすに限る。


……指示を出してから、2時間後。僅か一撃で城は崩壊し、予定通り城塞内部に6発撃ち込んだところ、人の気配は完全に無くなったとの報告が入る。同日、軍を侵攻させた下テレンス公爵領とグラ公爵領は組織だった抵抗があったものの、その軍の中央部に小型の魔素爆弾を一発撃ち込んだだけでボルグハルト軍の士気は崩壊して潰走した。


ゲーム上では、別に珍しくもない核兵器の集中運用。それを現実でやるとするなら、反撃を受けないことが前提だな。というか中途半端に一発だけとか手心を加えると反撃を受けて手痛い目を見る。ここまで先鋭化してしまった兵器を使用する場合、もはや後戻りは出来ない。


生産量は、小型なら2日に1個とかなりハイペース。これを盗まれたらとんでもないことになるから、盗まれる前に使ってしまえ。ついでに戦争利用だけではなく、山でトンネルを掘る時や道を作る時にも使用する。爆発後に何も残らないクリーンなエネルギーだから、戦争以外の利用方法も見出して行かないと流石に勿体ない。その分流出リスクはあるけど、模倣が完成する前に潰す。


そして十数日後。ボルグハルト公爵領を制圧したところでボルグハルト王国の臨時政府が降伏を宣言。ボルグハルト王国の全国民がパルパル教の信者となることも条件に盛り込んだらすんなりと受け入れられたので、拍子抜けした気分だ。そう言えば前国王は、クヌート教の教皇から破門されてたか。元々、宗教に熱心ではない国民性のお蔭で、統治は楽そうだな。


あの性王が、これで死んだと楽観視することはないけど、懸賞金を吊り上げて万が一がないようにしておこうか。最初に魔素爆弾を6個放り込んだ城塞内に、恐らくアルフレートの血を引く子供が十数人はいただろうけど、1人残らずこの世から消していると思いたい。後々になって血が繋がっているだけの他人が出て来るのは本当に厄介だし、皇帝の甥というだけで扱いは面倒です。


これで大陸の北西部はほぼ完全に制圧したことになるし、ボルグハルト王国の西にある大陸最西端の国、レナン公国は文明が止まっているというか、王を自称している奴はいるけど国の規模的には王国級に足りえない残念な勢力。クヌート教国家じゃないし、生贄の儀式とかするような文明度だから敵じゃない。


ただの野蛮な国であれば、ボルグハルト王国が捻り潰しているだろうから戦争は強いっぽいけど。でももう情報収集する時間も惜しいし、とりあえず宣戦布告。海岸にある未開の地とか、下手に人残すよりも、更地にする方が使い勝手は良さそうだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 地図の切り取り。 [気になる点] 女神の反応。
[一言] 主人公の兄弟ってだけで死体確認するまで死んでるか納得できないのがすごいわ
[良い点] 今話もありがとうございます! ……この物語の主人公であるパルマーの、 『他人からは狂気の極みにしか見えないが、  本人は至って理性的で、純粋に合理的な選択をしただけ』 という状態の描写が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ