第68話 王国の解体
ヴァーグナーが死んだことにより、クラウス王国は息子のベーレンス君に引き継がれるが、そのクラウス王国の中核的領土であるクラウス公爵領が戦後処理で俺の領土になる上、ヴァーグナーの封臣だった伯爵達が上テレンス公爵領やディスモア公爵領で相次いで独立。無事にクラウス王国は霧散した。
本来ならクラウス王国が丸々継承されるはずのベーレンス君が財産として持てるようになったのは、ディスモア公爵領の4つある伯爵領の中で一番大きなディスモア伯爵領だけ。その一伯爵領だけで、貧しいミラー公爵領ぐらいの収入は得られるぐらい豊かな土地だけど。クラウス公爵領は戦争の結果、俺の手に渡ったのでヴァーグナーの残る直轄地はそこしかなかったということ。
ディスモア公爵領の残りの3つの伯爵領は、元々はカルリング帝国の皇帝派の封臣がヴァーグナーに与えられる形で移籍だっけ。そりゃパウルスもヴァーグナーも死んだら独立するわな。一応各伯爵に、パルパル教への改宗をしたら恭順を認めると伝えると、即座に改宗を始める独立領主達。そのまま俺の封臣となった。
今の一連の流れで、ベーレンス君の封臣だった伯爵達は、俺の直臣になった。時勢が読めないとヴァーグナーの伯爵は務まらなかったようで、改宗を拒否した伯爵はいなかったし、随分とヴァーグナーが教育を行っていたらしい。領内の方は知らんけど、改宗した伯爵達が何とかするだろ。たぶん。
最悪、クヌート教を見せしめに何回か国外へ追い出せばパルパル教徒の率は100%になるし、反乱がおきるほどの反発があるなら反乱は起こさせた方が後々楽だ。
……独立した領主達は、結局はカルリング王国かボルグハルト王国かディール王国を頼るしかない。その3つの王国に囲まれている以上、伯爵が独立領主を続行するのは無理な話だ。公爵ならまだ何とかなるけど、伯爵だと恰好の餌にしかならないし。だからと言って、元主君のヴァーグナーを殺した俺に恭順するのは少々怪しい感じもするな。
普通はカルリング王国の方へ行くと思うんだけど、次の標的がカルリング王国であることぐらいはヴァーグナーの元封臣なら察知してそう。となると、再度敵対するよりかは今ここで俺に従う方が良いのかな。
ベーレンス君も土地持ち伯爵にして、その面倒を叔父である俺が見るという形にする。ヴァーグナーに対して請求したのはクラウス公爵領だけだけど、ヴァーグナーを殺したからクラウス王国の領土がそのまま流れ込んで来た感じの結果になったかな。
領内にいるカルリング王国側の人間が俺に対して反乱を起こすかとも思ったけど、今のところ動きはないし順調に支配が進んでいます。これが恐怖政治ちゃんですか。今までの悪事に加えて、聖君を焼き殺したから恐怖の値が閾値を超えてそう。
まあそのお蔭で、ディスモア公爵領まではちゃんと統治できているから良しとしよう。上テレンス公爵領はヴァーグナーの子飼が多いし、懐柔するのは時間がかかりそうだな。
かなりボルグハルト王国からのスパイが入ってきているし、何なら疫病が上テレンス公爵領でも流行っているそうだからあまり手を付けたくない。……そう言えばあの性王、諜報員の数を増やして徹底的に調べたら性病にかかっているという噂が流れてきた。マジかよ。
庶民にも手を出していたなら、いっぱい私生児が出来てそうだし、手を出す女が増えるほど性病のリスクは単純に倍加していく。その手を出した女が他の男とも懇ろな関係なら、滅茶苦茶性病が広まってそうだな。よく考えたらこうなるのは当たり前のことなんだけど、今までそんな雰囲気が微塵もなかったから少し驚いた。
……実はうちの風俗店でも、ちょっとそういう問題が出て来ている。一応行為前に身体を洗うようにはしているけど、それで性病が防げるなら苦労はしないわな。しかしコンドームなんて簡単には作れないし、代用品なんて進んで使いたくなるようなものじゃない。
耐性が付きやすい奴隷だけに限定した風俗店にするか、コンドームを開発するか……よく考えたら、魔法で体内外を焼くのが一番楽な避妊兼性病対策だな?加熱殺菌は人類が一番多用している、最も優れた殺菌方法だし、風俗店で働く女の子は全員奴隷で拒否権がない。洗う前に、菌が死滅する程度に焼くだけなら楽だろ。
後はアルコール耐性を上げて、該当部分をアルコール漬けにするか。……いやでも加熱やアルコール殺菌を実行したら死人出そう。どんなに耐性を上げても、死ぬ時は死ぬからなあ。今回の戦争の結果、不死身部隊の死人は39人だけだったけど、普通の奴隷達や常備軍の方には結構な数の死人が出た。
常備軍や普通の奴隷の軍人は、精鋭奴隷ほどではないけどある程度の戦闘訓練を行っていたし、耐性の獲得も並行して行っていた。それでも死人が沢山出たんだから、ヴァーグナーの軍はそれだけ強大だったということだろう。実際、ヴァーグナーは魔法の指導も出来ていたようなので、高いレベルの魔法使いが量産されていた。
……土砂崩れの時も含めると、ヴァーグナーに何人殺されたのか計算するのすら嫌になるな。でもそのヴァーグナーは、もうこの世にいない。性王が性病という情報が偽報じゃなければ、これからは楽に領土拡張が出来そうだ。




