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第67話 火計

小さい勢力が、火計で大きな勢力を一網打尽にする、なんてことは創作ものではよくあることだが現実にはほとんどない。まず戦場がジャングルのような森の中、なんてことはほとんどない。敵軍に1人でもまともな人間がいれば、火計なんてまず食らわせられない。そもそも、森が簡単に燃える時期なんてものは限られている。


山の上に立っている城なら火計で燃やせる?それも無理だ。城の周囲数百メートルは間違いなく森林が伐採されているから、火が届かない。そして火計は、一歩間違えれば自陣に大きな被害が出る。煙を吸い込んで死ぬ兵士とかいっぱい出そうだし、何よりも戦場へのダメージが滅茶苦茶大きい。


そんな火計を、自分の身体でやるとか常軌を逸している行動だと思うけど、俺の火計はそれだけでは留まらない。背後にいる奴隷達はみんな油を纏い、鎧を脱ぎ捨て着火する。それと同時に、ヴァーグナーの後ろへ回り込んでいた奴隷部隊も身を寄せ合って着火。


火計するための森がないなら、木がないなら、人を燃やせば良いじゃない。たぶんこれ、数人は重度の火傷で死ぬだろうけど、ヴァーグナーを殺す千載一遇のチャンスだ。ヴァーグナーは氷属性魔法と水属性魔法を使って消火しようとするけど、そう簡単に人体が燃えている状態は解消されない。


俺の方もヴァーグナーの兵に回り込まれているけど、雑魚の魔法が飛んできたところでダメージはない。燃え盛っている人間に火の玉を撃ち込むとかダメージある方がおかしいでしょ。


燃えて皮膚が爛れている人間の群れが、一斉にヴァーグナーへと襲い掛かる。ヴァーグナー視点、悪夢のような光景だろうな。もはやゾンビみたいな、常に燃えている存在が、抱きしめようとしてくるとか恐怖でしかないわ。


背後に迫った俺の奴隷2人を剣で切り捨て、俺に向かって突撃をするヴァーグナー。その剣が俺の顔に向かって振り下ろされたので、顔面受けをして剣を掴む。もうこれで、ヴァーグナーは逃げられない。


眉間に剣が食い込んで血が出ているけど、ノープロブレム。というかヴァーグナー凄いな。コルネリアとかハンスとかの剣術レベルが高い身体的な良特性持ちが良い剣を使って全力で斬りに来てようやく薄皮一枚レベルなのに、頭蓋骨到達レベルで斬れているんだが。


まあでもこの至近距離まで距離が縮まった時点で、ヴァーグナーは詰みだ。そのままヴァーグナーの方へと飛び、押し倒す。ハーモニカっぽい楽器はずっと咥えたまま、演奏を続けているので超シュールな光景になってそう。やがてヴァーグナーに火が燃え移り、ヴァーグナーが悲鳴を出し始めたので勝負はついた。このまま、ヴァーグナーのバーベキューを続けよう。


悶えること数十秒。案外長く抵抗を続けたヴァーグナーは、燃える俺と奴隷達に圧し潰されて死んだ。念のため、ヴァーグナーの持っていた剣で頭と心臓とお腹を数十回刺し、首を切り落としたので蘇生はない。


これでようやく、長かったクラウス家の兄弟争いの終止符がついた。いやまだ次男のアルフレートが生きてるけど、あっちはヴァーグナーほど強くはないから長男の勢力を迎合した後なら消化試合だ。


……この後、ヴァーグナー軍が健在で主君の仇討ちに燃えるなら、恐怖を与えるために良い感じに焼けたヴァーグナーの身体を噛み千切って食べるパフォーマンスを行う予定だったけど、そんなことをしなくても降伏をし始めたのでまずは消火活動を始める。このままだと、耐性の低い奴隷から死んでいくわ。というか既に数人焼け死んでる。


ヴァーグナーに斬り捨てられた奴隷2人もかなりの重傷だし、俺とヴァーグナーの戦闘の余波で数十人は死んでそう。はた迷惑な兄弟だったな。最初の戦争から今までで、下手したら万の人間が戦死してるぞ。半分以上はヴァーグナーのせいだけど。


とりあえずヴァーグナーを殺した証拠として首は持ったけど、身体の方もホルマリン漬けして実験材料にするので回収。弔う意思など毛頭ない。死後の世界でも苦しめ。もう身体の大半が焼けて、剣で何回も刺したからかなりの出血量だけど、何かには使えるだろう。


その後はカルリング王国軍の掃討を行い、ヴァーグナーの死をカルリング王国へ知らせるために半分以上は逃げさせる。これでカルリング王国は、空位になった権力争いによってさらに細かな勢力に分かれるか、俺という強大な敵に対して一致団結するか、ちょっと見物だ。今までヴァーグナーによって宮中が纏められていたのは、独立&同盟のコンボから察せられる。


……まあどんな状況でも権力争いというのは発生しうるものだし、また内乱とかになったらラッキー程度に思っておこう。改めて被害状況を確認すると、焼死した奴隷が19人、ヴァーグナーの魔法で殺された奴隷が11人、ヴァーグナー軍の精鋭部隊の魔法に殺された奴隷が8人、敵味方の大砲で死んだ奴隷が1人と、死なないはずの不死身部隊が合計で39人も死んだな。


しょうがないから今回の戦争で活躍した普通の奴隷39人を昇格させておこう。これで不死身部隊は変わらず1000人です。万の軍相手に正面の戦線を必ず保たせようとしたら、1000人は必要だから定員は変わらないかな。


ヴァーグナーが戦死したことで、領土はうちで幽閉されているヴァーグナーの息子ベーレンスに継承される。ヴァーグナーと戦うのと比べたら、単純な戦後処理とか凄く楽だな。


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― 新着の感想 ―
[一言] チート兄貴ですら殺さなくなったとなると、真面目に殺す手段がなくなってきたな 勇者召喚しかないか?
[一言] 某赤い通り魔が連想される残虐かつ冷静なムーブすこ
[一言] 唐突にドラクエのぬわーが聞こえてきました。 殺せない主人公だと対話か究極の善性ぶつけるぐらいでしか手がなさそう。ただし、勇者はノーカン。
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