第61話 結果
王国として独立してから、結構色んなことをやり始めたけど、早いものはもうその結果が出て来ている。一番のメインだった製糸工場は綿花の収穫量が圧倒的に足りず、結果的に人員が駄々あまりしたので国内のインフラ整備の方へ回しました。あとは他国に売るほど服の生産が出来ねえ。
国内だけでも、服ならかなり大きな需要があるし、他国に売りつけて他国の人間の職を奪うほどの供給量がまず無い。結果的に、輸出は当面の間見送る方針だな。自国で服が余ったら、その時に改めて考えよう。
品種改良の方は成長が早い上に改良しやすかった害悪植物以外は大した成果が出ず、次代以降根気強く続けるしかないなという状態。新種の作物の方は幾つか収穫の時期を迎え、無事に収穫出来たけど想像とは味が全然違うから食べ物として駄目だ。素人が見よう見まねでやるからこうなる。
新通貨は無事に取引で使われ始めたから、こちらは成功というか、成功しなかったら不味かったというか……食料本位制のせいで、上限も出来てしまっているのでいざという時が不安。飢饉になったら終わりの経済とかどんなオワタ式だよと今更ながらに思う。
一応、成功した事例としては宗教問題でパルパル教が上手い具合に浸透していったことだろうか。適当なネーミングだけど、少数派閥と反クヌート教の連中が取り込まれたお蔭で布教は順調に進んでいる。教義に関しては、かなり寛容的なのも特徴的だろう。良い感じにクヌート教からの離脱も誘えてます。
クヌート教の評判を下げるために始めた新聞の発行は、国民に文字を読む機会というのを創り出したお蔭で、子供や若者の教育に対する意欲を高めた。これも民意誘導やら評判下げやら洗脳に使えそうだし、新聞の発行は続けていこう。
地震があり、ボルグハルト王国では疫病の流行もあった。……地震のせいで、昨年は総合的に見てマイナスだったんじゃないかという疑惑もある。倒壊した建物も多かったし、死者も出た。気候に恵まれたのは不幸中の幸いだったな。これで気候が悪く、不作になっていたらこの国は潰れていたかもしれない。
年が変わり、15歳になる年の初め。今年はいよいよ成人の年だけど、既に隣国からヤバイ国の王と認識されているから成人のメリットは少ないな。ヴァーグナーとかは生魚を食べる俺のことを直球で「悪魔」とか言い始めたし、クヌート教が国教の国からの敵意は凄いです。そう言えば四面楚歌外交を貫いているから外交官の仕事ないな。異動させとこ。
軍備の方は常備軍と奴隷兵をひたすら増やした結果、常備軍が2500人のガチ不死身な奴隷兵が1000人。精鋭の奴隷兵が1500人。普通の奴隷兵が2000人。新米の奴隷兵が3000人だな。農民兵に頼らなくても、9000人もの軍勢を編成することが出来るようになったわけだけど、どこかへ仕掛けた瞬間、他の国から一斉に仕掛けられそうだし、常に一国を叩き潰すだけの力はあるけど三方面作戦とかになってくると流石に戦力不足。
さて。諜報員達のお蔭で、かなりこの大陸の全体図が見えてきた。別に正確な測量とかはしてないし、おおまかな地図だけど、あるのとないのとでは雲泥の差だ。この大陸の山脈の西側は、ほぼ網羅したと言っても過言ではない。度々問題となっている教皇領は、アノン王国の南じゃなくて、マシア王国の更に南だな。距離的には、かなり遠い。
大体、小さな公爵領1つで四国ぐらい。大きな公爵領1つで九州や近畿ぐらいの大きさだろう。この大陸の山脈の東側には大きな帝国と幾つかの小国があるみたいだけど、東側よりも西側の方が圧倒的に大きいみたいだし、西側を征服出来れば問題ないか?
この大陸の西側だけで、日本の領土の面積は超えてそうだな。そして改めて見ると、ボルグハルト王国の領土の形がなんか卑猥。あの性王からは、絶対領土を削り取ってやる。前に遭遇した時、今ぐらい強かったら逃げずに殺せたのに。
北のカルリング王国は死に体だけど、腐っても元帝国。カルリング公爵領は城塞が硬く、砦がいっぱいあるのでやるなら一気に決めるしかない。まあカルリング王国に仕掛けるなら、アラン公爵領からか。協力的な山賊や盗賊団が多いし、レナート帝国とカルリング王国の繋がりを切りやすくなるのも利点。
……シュルト公国が目標にしているローラント公国は、レナート帝国との繋がりが深いからそう簡単には落ちない。公爵領2つの、王国未満の国だけど、そもそもシュルト公国はシュルト公爵領1つのみなので国としての規模は一番小さい。よくこれでレナート帝国やローラント公国相手に何度も略奪していたな。カルリング帝国の庇護下にあったのが大きそうだけど……独立して大丈夫なのか、ちょっと不安になって来た。
軍事行動を起こす時期としては、震災の復興が進んで隣国が自国以外の隣国へ戦争を仕掛けた時。例えばクラウス王国がエストアニ王国へ仕掛ければ、うちはカルリング王国やレナート帝国に仕掛けることが出来る。まあまずそんな上手い具合には物事が進まないので、上手く隣国同士が戦争になるよう、扇動するしかないか。




