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第46話 善悪

カルリング帝国は、海に面する北以外の東、南、西でそれぞれ別の国と接している。そしてそのどの国とも、仲が悪い、というわけではない。


東の隣国である神聖レナート帝国。この国とカルリング帝国はそれなりに長い付き合いがあり、相互に援軍を送り合うこともあった。同じクヌート教を信仰する国同士、取引は多い。だからか、カルリング帝国の飢饉を知り、食料を提供すると言い出したのだ。なんだこの善人集団。


今そのようなことをされると、俺としては非常に困るので何か対策を打たないといけない。幸い、シュルト公爵はこの神聖レナート帝国を相手に略奪を繰り返していたので、その点が向こうの判断を遅らせていたのだと思われる。


元々は、東にある大山脈の麓にあったエルフというか長命種の集落。そこが拡張を始めて、大きな帝国となった。この国の皇帝は代々クヌート教の教皇に戴冠されるのと、皇帝の家系は女神と話せる『敬虔』を生まれた時点で持っているからか、『神聖なる血統』とか言われている。


……いきなり援助を申し出たのは、女神が助言しなくなったからだろうか。もしくは、女神が援助するよう助言したか。どちらにせよ、これを邪魔するのは既定路線であり、どうせならその援助で貰える物資を根こそぎ頂きたい。


というわけで、選抜した奴隷兵1000人をエストア公爵領の北方、アラン公爵領に分散して潜ませる。流石に援助物資の護衛部隊が、万を超すことはないと思いたい。最悪、物資を焼き払うことが出来ればそれで良いから、何とかしてカルリング帝国の希望の芽を摘む。


あと、どうせならエルフの奴隷が欲しいなあと思っていたけど、流石に数が少ないエルフが食料の運搬の護衛任務などに就くはずもなく、捕らえられたのはハーフエルフと普通の人間だけだ。関係悪化を促進させるため、国境付近での略奪も繰り返す。そして互いに「カルリング帝国の人間が略奪をしている」「レナート帝国の者が略奪をしている」と信じ込ませるように動く。


奪った食料は、領内での祝宴に使いました。毎日の略奪のお蔭で飯が旨い。文明度がこちらより高いからか、カルリング帝国よりか作物の種類が多いな。幾つかは残して、ディール公爵領での栽培に回すか。


しばらくするとレナート帝国が食料輸送部隊に護衛部隊として1000人の兵士を付けるようになったけど、同数ではなあ。ジェレミアス公爵も食料の略奪に合意し、シュルト公爵、ジェレミアス公爵と力を合わせて帝都への支援の道を断つ。


合計で5回も、大規模な食糧援助をしようとレナート帝国は画策したけど、ほぼ全てうちの奴隷部隊が強奪したので非常に美味しかったです。なおアラン公爵領には各地から山賊の類も集まり、治安は最悪になった模様。協力してくれる山賊や盗賊に食料を配っていたらこうなっていた。これじゃあ、どこの誰が強奪した犯人なのか分からないんじゃないか?


と思っていたら神聖レナート帝国から宣戦布告を受ける。バレテーラ。内容は悪臣パルマー・クラウスに対する懲罰戦争。負けたら投獄拷問処刑の一直線コースだね。でも向こうはここまで、軍を派遣するのも難しい。公爵領を1つ以上横断しないといけない上、現在その道中にあるアラン公爵領は山賊や盗賊の類が跋扈している。


これに乗じてパウルス陛下が宣戦布告してくるかと思ったけど、飢饉の影響は大きく軍事行動に移せない模様。まあ前にエストアニ王国軍に負けたし仕方ないね。そろそろ、離脱も視野に入って来たよ。だから現皇帝はさっさと、くたばってくれないかなあ。


エストアニ王国とレナート帝国の仲がそれほどよくない以上、レナート帝国軍がエストア公爵領を通って来るという選択肢はない。宣戦布告からしばらくして、レナート帝国が送って来る総兵力は9000という情報が入る。まあこれぐらいなら、単独でも何とかなるな。


そう思っていたら、ジェレミアス公爵にも宣戦布告を行うレナート帝国。どうしてそう死に急ぐんだ。貨幣の鋳造による、大金持ち状態が昔の話になってしまったジェレミアス公爵だけど、金銀を大量に保有しているということには変わりがない。金貨の代わりに金塊を、金銭の代わりに食料を提供し、縁のある傭兵団をかき集めるジェレミアス公爵。その数9傭兵団4000人。勝ったわ。


「……貸与をしている500人の奴隷兵は呼び戻さなくても良いんですか?」

「あれがいなくても奴隷兵の規模は2500人まで膨れ上がっているだろ。常備軍も1000人にまで増やしたし、これでジェレミアス公爵の軍と共闘して負けるなら先は無いわ」


こちらの軍の総大将にはハンスを据え、ポワチエ公爵領へ送り出す。ジェレミアス公爵の軍は常備軍も合わせて5500人。俺の軍は3500人。合わせて9000人だけど、こちらと向こうとでは軍の質が違う。向こうは農民兵が半数ぐらいを占めているんだから、これで勝てなきゃ嘘だ。


あと、貸与した奴隷兵に関しては現在3つ目の伯爵領を確保しに行ったアニエス君が戦争状態に突入しているので、今回収したらアニエス君が負けて死んじゃう。少なくはないリソースをアニエス君には投資したし、ここで負けられたら全てが水の泡です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] まさか……女神の目的は世界統一……?(主人公の元に) [一言] まぁ、収穫量が減ったとか質が落ちたとかだろうけど。(たましい) いくらなんでも全人口奴隷化(主人公式)を望んでたなんて…
[良い点] 第50部分到達、おめでとうございます! [気になる点] 遅まきながらあのポンコツ……いや、駄女神(※1)、パルマーの排除に乗り出したか。 レナートの皇帝兼教皇にあることあること(※2)吹き…
[気になる点] この女邪神なにがしたかったんだ……? てめーが始めたことに命と名誉かけてぶっ殺しまくったらなぜか敵対するとか……
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