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第44話 死の行軍

お隣のエストア公爵領から飢餓やら食人やら物価1万倍やら信じられない情報が大量に入って来たけど、精査したら単に餓死した人の家に入ってお腹を満たした人がいただけだったり、物価に関しては取引価格では無くて売値が1万倍だっただけだったりと情報の正確性が欠けていた。


餓死した人のいる家に押し入り、腹を満たして出て来た人がいたら「食人だー!」ってのは流石に酷い。まあ餓死した人の家に食料があるというのは想像し辛いだろうけど、実際『残したまま死ぬ』というのはよくある話だ。


砂漠の真ん中で、脱水症状を起こして死んだ人の水筒に水が残ってたりするのは有名な話で、餓死する人も、最後の一回分の食事を作らないまま死ぬことはわりとある。本当に危ない時のために残しておいたのに、実際に危ない時になったら身体が動かなくなる悲劇。別名ラストエリクサー症候群。


食料が無いところは大変だあと思いつつ、更なる追撃をするためにある情報を流す。それは家畜に関することで、豚や牛が成長するまでに食べる量と、豚と牛から取れる肉の量について、纏めた資料を新聞のような形でばら撒く。


「『100㎏の豚を育てるのに麦が200㎏必要だ!』……これは何ですの?」

「豚の屠殺を促進して、来年以降も飢えが継続するようにしてるだけだよ」

「……これ以上民草を痛めつけて、何を為さるのですか?何のつもりなのですか?」

「……最終的には、戦争かなぁ」


俺の支配下のディール公爵領も、最早貨幣経済が崩壊して物々交換が主となった。他領とは違い、物があるだけマシだけど、それでも不便なことには変わりない。……大砲の生産が止まりそうだったから、軍事兵器の生産に携わる人に関しては食料を多めに渡すなどの厚遇をしないといけなくなった。付け上がると面倒なので、これ以上要求するなら容赦なくリストラです。この世界に雇用に関わる法などほとんど無い。


最終的な目標は、リンデさんにも言わなかったが、皇帝の死とカルリング帝国の崩壊。そして国としての独立。独立する以上、周辺諸国は弱っていた方が都合は良い。自分が王になってしまえば、ある程度は戦争が自由に出来る。公爵領1つだけでも、王国を名乗る例はあるようだったから、別にディール公爵領1つだけの国でも問題はない。どうせ独立したらすぐ領土増えるし。


そうこうしているうちに、南にあるエストアニ王国のミラー公爵の男爵となったアニエス君がカルリング帝国に宣戦布告。無事にお隣のエストア公爵領のザイール伯爵領を分捕って伯爵になったが、戦争は終結しない。どうやらボルグハルト王国に負け、グラ公爵領を奪われたエストアニ王国が、エストア公爵領の全域の確保に乗り出したみたいで、全面的な戦争に発展している。


流石にカルリング帝国として、ここで公爵領を丸々1つ失陥するわけにはいかないので封臣達の軍をかき集めるパウルス陛下。皇帝の軍は、流石に食事が出るだろうと考えた封臣達は挙って農民兵を集めて従軍するが、当然皇帝の軍も食料不足で配給量が足りず、しかも敵前逃亡が重罪だからエストア公爵領へ進軍し続けるしかない地獄のような行軍となった。


なお俺とジェレミアス公爵とシュルト公爵は従軍しませんでした。俺とジェレミアス公爵に関しては、そろそろ皇帝から公爵という称号の没収を命じられても不思議じゃないね。まあ没収されても実効支配に切り替わるだけだけど。新しく送られてくるディール公爵とか、さっさと捕縛して傀儡にするわ。


そろそろディール公爵領に住む領民も俺が何をしているのか察してきたみたいだから、もう俺について行くしかないのだと思う。そのうち作る新貨幣は、貨幣の今の価値を考えると最初は国に仕える役人にだけ配って、国が物を売るスタイルで良いな。旧貨幣と新貨幣のレートは1万対1程度で良いだろ。これで暴落した貨幣価値の切り上げが出来る。


そのうち経済はお前の玩具じゃないんだぞって怒られそうな気がするけど、現状は完全に玩具なので遊ぶに限る。後は偽造対策だけど……共通規格を作って、偽貨幣を判断する装置を作れば何とかなる気がするから頑張ろう。魔法がある世界、国が製造する貨幣のみを識別して判断する装置みたいなのは作れるだろ。作れなかったら知らん。


あ、この新貨幣は金銀を使わないから、実質信用貨幣です。紙幣じゃなくて貨幣なのは、紙幣よりも貨幣の方が丈夫という至極単純な理由。そもそも印刷技術が未熟だから、金型から生産する貨幣の方が何かと都合は良い。


せっかくだし、単位は円にして日本円に近い相場にしてやろう。そっちの方が予算とかを俺が認識しやすいし、把握漏れも少なくなるはず。新貨幣に関わる法案も考えていたら、カルリング帝国の軍がエストアニ王国の軍勢に負けたという情報が入る。カルリング帝国の兵が、食糧不足のせいで弱すぎたか。


これで隣がエストアニ王国の領土になったので、普通に戦争を仕掛けられるようになったけど飢餓が起きている領土で2回も戦争が起こったら荒廃は必至。これ、むやみやたらに領土は拡張しない方が良いかもしれない。そもそも現段階でも、たぶん日本の四国ぐらいの広さはあるし。


しかし隣のヴァーグナーの領土は、四国を除いた西日本並みにあるんだよな。今はヴァーグナーも苦しんでいるみたいだけど、あいつなら絶対に立て直してくるだろうし、立て直したなら懲罰のための兵を送って来る。時間的猶予は、それまでということだな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 既に後ろから刺され慣れてそうなんだよなあ……。 [一言] 多分もう、頸動脈くらいなら切れても平気。(奴隷姉妹編)
[一言] そろそろ後ろから刺されそう
[一言] そのうち経済はお前の玩具じゃないんだぞって怒られそうな気がするけど、現状は完全に玩具なので遊ぶに限る。 →この図太さめっちゃ好き。
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