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第9話 シュルト公爵家

カルリング帝国の南西部にある大きな公爵家といえばクラウス公爵家だけど、このクラウス公爵家ぐらいの規模の公爵家はわりと沢山ある。そしてその中の一つ、カルリング帝国の北東部にあるシュルト公爵家はほぼ毎年のように他国へ喧嘩を売ることで有名だ。要するにヴァーグナーがやったような略奪を、結構な頻度で行う蛮族ということだな。


軍の主軸を担うのは、1000人の軽装騎兵。何が凄いって一回の会戦で同規模の敵軍を全滅させるほどの殺意を持つ軍で、掃討能力が尋常じゃないぐらいに高い。なおここも息子が3人居て、次代になったら長男に伯爵領が2つ、次男に伯爵領が1つ、三男に伯爵領が1つ分割相続される模様。まだシュルト公爵家の当主が40代だけど、そのうち血みどろの後継者争いが起きそうだな。


3人全員が既に20歳前後で跡継ぎもいるし、うちとは違って長男が若干のお馬鹿さんだから跡継ぎ争いは熾烈だろう。……この後で娘が沢山生まれているのは、男子を4人にして伯爵領を全員が一つずつという状態にしたかったのかな?ここは次男のサヴェージ・シュルトが怪力の下位互換的な特性である屈強を保有しているし、それでいて聡明らしいし、長男次男の年が変わらないので将来が楽しみだ。


……この次男のサヴェージさんと三女のリンデさんが、腹違いとかじゃない完全な兄妹になるね。2人揃って身体的な特性を保有しているということは、母の方の特性を受け継いだんだろうか。この兄妹の年の差は10歳。結構離れているけど、まあでも珍しくもない年の差かな。


リンデさんの手紙では、リンデさんに唯一まともに接してくれるのがサヴェージさんのようで……リンデさんと仲が良いということは、将来的には同盟が可能かもしれないということだ。距離は離れているけど、もし同盟を結べれば力強い味方になってくれるに違いない。……あくまで、サヴェージさんが跡継ぎ争いで勝てたらの話になるけど。


なお我がクラウス公爵家では長男ヴァーグナーが次男アルフレートの領内で農民の反乱を扇動しました。どこが聖君なのか教えて欲しいレベルです。正確にはアルフレートの封臣である男爵の領内での反乱だけど、周囲に伝染してアルフレートが結構な痛手を受けたのは間違いない。反乱理由は単純で、そのアルフレートの封臣である男爵の暴政に対する反乱だね。


詳しい詳細はネットが無い世界なので分からないけど、アルフレート自身が「ヴァーグナーの扇動だわこれ」みたいな感じで怒っていたからたぶんそう。俺とアルフレートは相手の領地の請求権を持つ者同士でもあるけど、父親が死んだらその瞬間、ヴァーグナー・クラウス公爵に仕える封臣同士にもなる。年の差があっても、兄弟だしちょっとした会話というか情報交換ぐらいはする。


まあ俺にとってはアルフレートも仮想敵だし、向こうも俺は仮想敵なんだが。敵の敵は敵定期。中世なんて大体の領主が個人陣営です。血の繋がりが最悪の呪縛。歴史を学べば分かるけど、近代に入るまで大きな戦争から小さな戦争まで大体がお家騒動という人類の悲しき性よ。


だからまあ、仲良い感じが伝わるサヴェージさんとリンデさんはわりと珍しいかも。俺も姉や妹とはそんなに仲悪くないけどね。ただ基本女性は他家に嫁ぐから滅多に会わない。そして現在2人いる姉、両方が既に未亡人です。これは完全に嫁いだ先が悪かった。


『兄様と会いたいのであれば、年明けに来れば会えますわよ?兄様もパルマー様と会いたいようですし、よろしければ日程の調整をしますわ』

「サヴェージさんに会えるなら、年明けの時期でも行くけど、サヴェージさんは忙しくないの?」

『軍の練兵だと言って、隔月ペースで他国領土の略奪をしているぐらいには暇ですわ』

「なんだその脳筋種族」


既にサヴェージさんは伯爵領を1つ引き継いでおり、北東の隣国であるガロー公爵領や東の隣国であるジェローム王国の略奪を繰り返しているらしい。なんでただの伯爵が独立公爵や王国を相手に略奪出来ているんだ。カルリング帝国の北は海に面していて豊かな土地であることは知っているけど、それにしても何かおかしい。これって親が次男を支援しているってこと?


『ちなみに兄様は私の結婚相手に兄様以上の武力を持つことが条件と言ってましたわ。ですが筋トレに詳しいパルマー様なら大丈夫ですわね?』

「ぼく11さい。サヴェージさん19歳。勝てるわけないじゃん。しかも特性屈強持ちだし」

『大丈夫ですわね?』

「あ、はい。大丈夫です」


文通はずっと続けているけど、やっぱりリンデさんは中々に愉快な人だ。というか今年9歳になった子とは思えない。まあ貴族の娘なんて大半が早熟なんだけど、それでもちょっと大人びている感じが文章から見受けられる。きっと、というか絶対に召使い辺りが文章の添削をしているせいだけど。


……リンデさんとの文通を繰り返してたら、サヴェージさんのイメージが完全に戦闘狂なシスコンに固定されたんだけど、これってもしかしてサヴェージさんと戦う展開になるの?屈強って、怪力ほどではないけどレアな特性だし、純粋な力勝負だと100%負けるんだけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際どうするかはしらんけど、無痛ムチでの部位破壊とかどうか?
[一言] 猛獣使い……なるほど、そのための鞭。
[良い点] 淡々としてる風でわりと狂気的な主人公君 [気になる点] 婚約者ちゃんがガチムチマッチョアルビノなのか謎のファンタジー補正で細いまま怪力無双になってるのか [一言] 続きを楽しみにしています…
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