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悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜  作者: ましろ
第二章 

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23.公爵夫人(1)


 ミュリエル、残念なお知らせです。お祖母様はお母様とそっくりです。


「あなたがブランシュですね」


 ……うん。お声まで似なくてもいいのに。


「はじめまして。ブランシュ・ノディエです」

「オレリーには似ていないわね。その髪色はノディエ家の色でもないし」


 やっぱり髪色は気になるのね。


「前伯爵夫人に似ているそうなので、ご実家のジュアット伯爵家の色なのではないでしょうか」

「フフッ、あなたはリシャールに似ているわ」


 あら、思ったよりも穏やかに微笑まれてしまいました。何となく調子が狂ってしまいます。


「私があなたの祖母で現公爵夫人のデボラよ」


 似てるけど似ていないかも。お母様よりも老けているとかそういうことではなくて、何というか格の違いだろうか。


「どうしました?」

「いえ」

「もっと怖いと思っていたのかしら」

「………申し訳ありません」

「ホホッ、素直だこと」


 ベルティーユ。あなたはお祖母様の何が怖かったの?

 目の前には一口サイズのプチケーキが数種類と、香り豊かな紅茶が並べられ、どうやら歓迎されているみたい。


「さて、訪問の目的は何かしらね」

「…ただお祖母様にお会いしたかったのだとはお思いにならないのですか」

「これでも情報網は色々とありますから。

 ああ、妹君と和解できてよかったわ。ねぇ?そこの勇敢なお嬢さん?」

「ひぇっ?!滅相もございませんっ!!」


 突然声を掛けられて、比喩ではなく、ナタリーがビクンッ!と飛んだ気がする……


「ただし、これからはもう少し気を付けなさい。あなたの行いはすべて主の評価に繋がります。それに、あの場にいたのがリシャールでなければあなたは下手をすれば鞭打ちの上解雇という重い罰が下った可能性もありました。

 あなたはブランシュの侍女になりたいのでしょう?それならば、もっと自制心を鍛えねばなりませんよ」


 なぜナタリーが侍女になりたいことを知っているのかと驚けばよいのか、指摘への感謝を述べればいいのか。


「畏まりました!教えてくださりありがとうございます!」

「声が大き過ぎます」

「申し訳ありません!」

「……先は長いわね」


 少し呆れながらもナタリーの言動を微笑ましそうに許してくださっている。

 ……どうして?あなたはあのお母様を育てた方で、お祖父様を(うと)み、孫達を髪や瞳の色で差別する厳格な貴族夫人なのだと聞いていたのに。


「聞きたいことが沢山ありそうですね」

「……お祖母様にとって、お母様はどんな存在でしたか?」


 本当はシルヴァン兄様のために来たのに、お母様のことを聞いてしまうだなんて。

 でも、どうしても納得ができないわ。どうしてあなたはこんなにも穏やかなの?

 ……どうしてお母様はあんなにも壊れてしまったの?


「ブランシュ。正義とは何だと思いますか?」


 突然、それまでの会話とは関係のない質問がなされました。なぜ正義なんかの問答を?そう思いつつも、先に進むためにも真剣に考える。

 お祖母様は表面的な意味を問うているのではない気がするから……


「正義とは勝者の理、でしょうか」

「そうですね。正義とは本来は公平さや公正さです。ですが、現実では勝者……力のあるものが正義、とも言えるのです。

 では、この国においての正義とは何だと思いますか?」

「……王家?」

「ブランシュ。あなたは生き難い子ね」


 それは王家に潰されると言いたいのでしょうか。


「私はダンドリュー公爵家の一人娘として生まれ、いずれこの家を継ぐ者として生きてきました」


 お祖母様は女公爵になるご予定だったの?


「でも16の時にその未来は突然奪われたわ」

「……王家が、お祖父様を公爵にしたかったから」

「ええ。あのときは本当に腹立たしかった。

 あんな剣しか取り柄のない、脳まで筋肉で覆われていそうな男に当主の座を奪われるだなんて、本当に殺してやりたいくらいに憎らしかった。

 それに、これでも婚約者がいたの。燃え上がるような恋ではなかった。それでも彼と共に生きていくのだと、ずっとそう思っていたのよ」


 それは私の…、今の時代には知られていないお話でした。


「あの時、王家の思惑をちゃんと飲み込めていたら何かが違っていたのかと今でも思うわ。

 でも、あの頃の私はどうしても許せなくて。

 だってなぜ私なの?他の家でもよかったでしょう。

 父が病弱だったから?それとも私の婚約者が伯爵家だから?

 ……私は突然婚約を白紙にされ、会ったばかりの男と結婚させられ、爵位を奪われ、体を重ねなければならなかった」


 たった16歳で世界を変えられる。それはどれほどの困惑と屈辱と悲しみを(もたら)したのか。


「あの男はね。好き勝手に私を抱くだけ抱いて、あっという間に戦場に向かったわ。

 私は当主にもなれないのに、ただ一人取り残され、家を守りながら、腹の子を育てながら、混迷の中を生きていくしかなかった」


 爵位を奪われたはずなのに実務はすべてお祖母様任せ。さらには子どもを身篭って?それは……何と言えば良いのだろうか。

 お祖父様は国に望まれた通りに命懸けで戦果をあげられた。でも、お祖母様のことを(かえり)みることはあったのかしら。


「残念ながら私はあなたがオレリーを責めたようには考えられなかったわね」

「……何も知らずに(さか)しらに語ったことをお許しください」

「いいえ。本当は自分の気持ちは出さず、父は国のために勇敢に戦ってくださっているのだとあの子に伝えるべきだったのでしょう。

 国のために、家のために……大切な家族である私達のために戦ってくれているのだと」

「……」


 そうですね、とも、そんなことはありません、とも言えませんでした。

 言えるとしたら、


『すべては戦争のせい』


 でも、それは本当に?





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― 新着の感想 ―
いや、9歳の女の子に何て話ししてんだよお婆様… 話の流れ的に伝えたかったのかもだけど、もう少し下品にならない伝え方して欲しい
他家当主が賢くて、消去法で押し付けられたのかなぁ? 家をあけていても采配を振るえる奥さんとか都合はいいもんね…
そりゃオレリー病むわ せめて仲良くなってからまぐわえれば良かったのにな ジジイも若かったんだろうけど大失態だ そして王家はクソ。 自分たち以外は家畜かよ 貴族とか平民とかかんけいねえんだワ
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