閑話【さんすう】
「姉様、この問題がわかりません」
姉様に教えてほしいとお願いするのはまだ少し緊張してしまう。
でも、分からなかったら聞いていいって言ったから。
「うん、いいわよ。おいで?」
そう優しく言われて少し心が浮き立った。
兄様たちは好きだけど、お姉様にも憧れはあったのだ。
「ああ、ここの計算ね?」
ブランシュ姉様は嫌がることなく、問題を見てサラサラと……ん?
「姉様?それは答えです」
「そうよ?」
「???」
分からないのは解き方であって答えではない。
「あのね?分かんないのはこの途中なの」
「え?どこに途中があるの?」
「…………あるよ?」
あれ?私がお馬鹿なの?だって、どうして問題を読んで間をすっ飛ばして答えになるの?
「二人ともどうしたんだい?」
「「リシャール兄様」」
「あ、偉いね。二人で勉強してるんだ」
「……そうなんだけど、あのね?この途中が分からなくて」
「え?途中って何?答えは5個でしょう?」
コイツもかっ!
何?聞けって言ったくせに、ミリの分からないところが分からないんじゃないっ!!
「もういい!ロラン兄様に聞くもんっ!」
「「ミュリエル?!」」
「ロラン兄様!ここ教えてください!」
「お?いいぞ~。これはなぁ、まず、りんごが3個あるだろ?そこに──」
と、ロラン兄様は絵を描きながら教えてくれました。
「あ!わかった!だから答えは5個になるのね?」
「すごいな、ミュリエル。すぐに分かるなんてエライエライ」
頭を撫でて貰いながら姉様達をチラリと見る。
何だかショックを受けてるけど知らないもん。今日は絶対にミュリエルは悪くない。
「ロラン、すごいな」
「ええ。ロランはスゴイわ」
「……なあ。5年後の今日は何曜日?」
「「金曜日」」
………え?どうして分かるの?というか正解かどうかも分かんないけど。
「分かったか、ミュリエル。この二人は特別仕様だから、勉強は俺かベルに聞いたほうがいいぞ」
「……そうする」
頭が良くても教えるのが上手いとは限らないかな、と。
子ども達がやっと仲良くなってきて嬉しい。
ミュリエルへのザマァ希望の方には申し訳ございません。




