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悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜  作者: ましろ
第二章 

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4.水をすくうように


「兄上達の所に行こうっ!」

「レイモン様は晩餐の席で皆様を紹介すると言っておられました。ロラン君は偶然会われたので仕方がありませんが、他の皆様は正式に紹介があるまで待たれたほうが良いのではありませんか?」

「えぇ?」

「それに。ロラン君はまだ本日の勉強が終わっていないですよね」

「あ゛」

「はい。息抜きのお散歩は終了です」


ロラン様は抜け出してきたの?


「ええ?あと少しだけ!」

「ロラン様?先生をお待たせしてはいけないと思います」

「ブランシュ~~っ」

「また、晩餐の席で会いましょうね」

「……はーい」


しょんぼりと帰って行く背中が寂しげです。


「ロラン様は勉強がお好きではないのかしら」

「彼は動いている方が楽しいみたいだな」

「あ、剣術がお好きなのですよね?」

「うん。なかなか筋がいいから公爵が将来が楽しみだと言っていたよ。今度、練習を見せてもらうかい?」

「いいんですか?」


剣術なんて見たことがありません。

どのようなことをするのかしら。


「ロラン君なら喜ぶと思うよ。自分が好きなことに興味を持ってもらえるのは嬉しいことなんじゃないかな」


好きなこと、か。


「ちょっと羨ましいです。好きなものがあるって楽しそう」

「うーん、じゃあこんなのはどうかな。

毎日、その日にあった出来事で一番心に残ったことを私に教えてくれること」

「それは嬉しかったことですか?」

「それでもいいし、一番悔しかったことでもいい。

君の心をその日一番動かしたことを見つけてみよう。

そうしたら、ブランシュはどんなことに興味があるかが分かってくるんじゃないかな」


私の心が動くこと。そんなことは考えたことがありませんでした。


「じゃあ、少し早いけど、今日は何に一番心が動いたかな?」


今日は…、初めて来た公爵家があまりにも大きくて驚いた。兄様とお散歩出来て楽しかったし、ロラン様と仲良くなれそうでホッとした。


それから──


「それなら今だわ」

「いま?」

「はい。シルヴァン兄様の言葉が一番私の心を動かすもの」


シルヴァン兄様の言葉はいつも私に新しい自分を教えてくれる。

エマやナタリーとも違う。大切に守るだけじゃなくて、私を広い世界へと導いてくれる人だ。


「それはブランシュが本当はそうしたかったんだよ」

「そんな、」

「言葉はね、聞く気が無い人の中には中々残らないんだ。ちゃんと受け止めようって気持ちがないとスルスルと通り抜けて行っちゃう。

いくら目の前で水を注いでも、本人がちゃんと両手で零さないようにと受け止めてくれないと、ただ地面に落ちるだけだ。

それどころか足元がぐちゃぐちゃになって不愉快に感じることもある。そんな感じかなあ。

誰かの意見を自分に取り入れるというのは、本人次第なんだよ」


そういうものなのかしら。


「……それでも、そうやって私に水を注いでくれたのはシルヴァン兄様です。兄様だから……だから私は何の不安もなく、そのお水を口にすることができるのだと思います」


他の方からならお断りするかも?だって信用できないもの。


「ブランシュは末恐ろしい9歳児だね」

「それは褒めてます?貶してます?」

「私が君を貶すわけないでしょう。ただ、今後が心配だと思ってね」

「……やっぱり何か間違えましたか」


考え方がおかしいのかもと思うと不安になります。

…そっか。パスカル達もこんな気持ちなのかもしれません。


「いや?ただ、まるで口説かれてるみたいだと思って」


口説く?私が?


「……シルヴァン兄様やマルクの方が、甘い言葉をたくさん言うくせに」

「ハハッ。マルクも甘い言葉を言うの?」

「クールな顔のまま可愛いとか言いますよ」

「ああ、何となく彼らしいね」

「そうなんです」


それからも、たくさんお話をしながらお散歩を楽しみました。

でも、冗談ではなく、このままでは毎日シルヴァン兄様の話かナタリー達の話ばかりしてしまいそうです。

趣味。大好きな人達の観察とかでもいいのかしら?


「さて、そろそろ戻らないとナタリーさん達に叱られそうだね」

「え?」

「晩餐の支度をしないとだろう?」


そうでした。食事のためにお着替えをするのは不思議な気分です。こういうルールも覚えていかないといけないのね。


「では、送るよ」

「ありがとうございます」


マルクがいないので、部屋を覚えているのか不安だったのでお言葉に甘えちゃいます。


「そういえば、さっき言ってた障壁って魔法ですか?」

「ああ。まだ使用人達の顔も把握しきれていないからね。念のため、誰かが近付いたら分かるようにしているんだ」

「なるほど」


マルクが雨を避けていたのと同じような魔法なのでしょうか。


「試したら駄目だよ?」

「……はい」


ちょっと残念だけど仕方がありません。


「魔法もね、これからちゃんと教えてあげるから」

「本当ですか?」

「まずは基礎からね。いくら才能があっても基礎を疎かにするのはオススメしないから」


あはは、バレてるわ。すみません、結構基礎は飛ばしていました。





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