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悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜  作者: ましろ
第二章 

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2.庭園にて


エディットの淹れてくれたお茶はとても美味しいです。


「この香りはベルガモット?」

「はい。お口に合いましたでしょうか」

「とっても美味しいわ。エディットはお茶を淹れるのが上手ね」

「ありがとうございます!こちらは若奥様もお好きなので、ブランシュ様が気に入られたと知ったらお喜びになると思いますわ」


そうなのね。コンスタンス夫人が好きな茶葉か。


「お祖母様はどのようなお茶がお好みなの?」

「……申し訳ございませんが存じ上げておりません」

「そう。いずれお会いできたときに伺うことにするから気にしないで?」

「…ありがとうございます」


本当に知らないのか、祖母の話題は禁句なのか。


「どうしたの?お祖母様のお話をしてはいけなかった?」


ここは子供らしく素直に聞いておきましょう。


「いえ。ただ、奥様は別邸にお住いですので、あまりこちらには来られないかと思われます」

「まあ、残念だわ。では、お祖父様もそちらで?」

「旦那様は領地にはあまり長居をされません。

王都にあるお屋敷を拠点に、騎士団の遠征などお忙しくなさっておられますから」


上手く躱したわね。どこに住んでいるかは明確に話さないのは、祖父達が不仲なのを子供に悟らせたくないのかな。


「そうなのね。では、またすぐにどちらかに向かわれるのかしら」

「まだしばらくはこちらに滞在されるそうです。

きっとブランシュ様達と離れがたいのだと思いますわ」

「ふふ、そうだと嬉しいけど」


エディットは必要以上には話さないようね。

とりあえず、お祖母様の不在が分かったから良しとしましょう。


「ねえ、エディット。お庭を散歩してもいいかしら」

「もちろんです。どなたかお誘いいたしますか?」


えっと?それは考えていなかったわ。

でも誘うとすれば……


「……シルヴァン兄様を誘ってみようかな」

「畏まりました。ご都合を確認して参りますので少々お時間を下さいませ」

「ありがとう。ナタリー、身支度を手伝ってくれる?」

「はい!」


しばらくすると、シルヴァン兄様が迎えに来てくださいました。


「お呼びたてしてごめんなさい!」

「ブランシュが誘ってくれたのが嬉しくてね。

お姫様。あなたをエスコートする栄誉をお与えくださいますか?」

「ふふっ、もちろんよ」


シルヴァン兄様と手を繋いで庭園を散策する。


「兄様は来たことがあるのですか?」

「うん。公爵家主催のパーティーに呼ばれたことがあってね」

「それは魔法塔の先生として?でも、そういうのはもっと年上の人が行くのかと思っていました」

「これでも君の兄は優秀なんだよ」


優秀なのは疑っていないけれど、代表として参加するほどなの?


「……綺麗な令嬢とダンスできた?」

「ブランシュほど可愛い令嬢はいなかったから踊ってないんだ」

「もう。すぐに揶揄う」

「揶揄ってない。私の妹が一番可愛いからね」


…こんなの、子どもを宥めるための嘘に決まっているのに。


「兄様ったら。そんなでは、いつまで経ってもお嫁さんが来てくれないわよ」

「言っただろう?お仕事を頑張ってるからいいんです」

「……困った兄様だわ」


でも、嬉しいと思ってしまった。

だって、まだ暫くは私だけの兄様でいてくれるもの。


「では、可哀想だから私が側にいてあげます」

「それは光栄だ」


自分がこんな独占欲を持つとは思わなかった。

もしかして、私もお母様に似ているのかしら。

……ううん。お母様が一番大好きなのはご自分自身だった。似てなんかいないはず。


「…マイルズ達とは兄妹として頑張るのを止めました」

「なに。じゃあ、うちの子になる?」


何故そんなに食い付きが早いのか。

ただ話題を変えたかっただけなのにな。


「まずは互いを知り合うことから始めましょうって約束しました」

「そっか。でもよかった。思っていることを伝えられたんだね」

「シルヴァン兄様のおかげです」

「違うよ。君が頑張ったからだ。ブランシュはすごいね。格好いい」

「……これでも女の子なのだけど?」

「女性だって格好良くてもいいじゃないか」


そういうものかしら。でも、シルヴァン兄様に褒められたのは嬉しいです。


「そういえば、レイモン様のご子息達のこともご存じですか?」

「うん?そうだね。長男のリシャール君は魔力操作が上手いよ。君とタイプが近いかな。しっかり者だよ。

ロラン君は魔法より剣術に夢中で、元気いっぱいの腕白で、コンスタンス夫人に叱られているのを何度か見た。

末っ子のベルティーユ嬢は案外クールで、熱くなりがちなロラン君を冷たい目で見てて面白かったよ」


パーティーに来たと言っていたけど、もっと親しくしているみたい。そういえばお祖父様やコンスタンス夫人とも親しげだったわ。


「三者三様ですね」

「仲良くなれるか心配?」

「……少し」


だって初めて会う、本当に知らない子ども達です。

そして、お母様のせいで大変だったと言っていたコンスタンス夫人の子どもでもあります。


「うーん、じゃあちょっといいことを教えてあげようか」

「いいこと?」

「でも、どうかな。喜んでくれるか不安だなぁ」


え?何、どんなことなの?


「シルヴァ…」

「しっ、ちょっと待って」

「え」


突然私の話を遮ったシルヴァン兄様は、険しい顔付きで後ろを振り返りました。


「…そこにいるのは誰です?」







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