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悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜  作者: ましろ
第一章 

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19.スキルアップ

 

「もちろん行きます!」

「私もです。これでも専属護衛なので」

「ありがと」


 よかった。二人とも一緒に来てくれるみたいです。


「ねえ、二人は下の兄弟っているの?」

「私は弟がいますよ」

「自分が一番下ですね」


 あら、マルクは末っ子なのね。意外だわ。


「兄妹ってあんなにも仲がいいモノなのかなと思って」

「いや、ないですね。まあ、私は男兄弟なので妹とは違うかもしれませんが」

「いやいやいや、私だって妹だけど兄とも弟とも喧嘩はたっくさんしましたよ!あそこまで甲斐甲斐しいのは、さすがお貴族様だなって思ってました」


 なるほど。やっぱり普通ではないのね。


「……懐かれたらどうしよう」

「犬猫のように言いましたね」

「というか、すでに少し懐いてますよね?」

「あの双子の代わりなんて無理。私は孤独を愛する女なの。徒党を組みたくなんかないのよ」


 病気は治したけど、仲良くなりたいとは思っていなかった。だって結局は誰も……


「お嬢様?」

「…ううん。何を持っていけばいいのかなって」

「そうですねえ。衣装が圧倒的に足りないのが困ってます!」

「そうなの?」

「ブランシュ様はデイドレスしか持っておられないのでは?」

「……寝間着もあるよ?」

「違うんですよぉ!晩餐とかがあったら子供とはいえど、もう少し畏まった服が必要なんです!」

「仕方がないわよ。お祖父様だって我が家の事情は知っているでしょうし。

 ミュリエルは?あの子もベッドにいることのほうが多かったから、ドレスなんて持ってないんじゃない?」


 するとナタリーが申し訳無さそうに視線を逸しました。どうやらちゃんと持っているみたいです。


「……元気になったら着ましょうと定期的に購入していると本館のメイドに聞いたことがあります」

「そう。まあ、悩んだってドレスは降ってこないのだし、お祖父様にお伝えするしかないわ」

「…そうですね。分かりました、お会いできるよう侍従長にお願いして来ます!」


 ナタリーには肩身の狭い思いをさせていたのかしら。主として失格だわ。


「ねえ、マルク。別館と本館でお給金が違うとかは無いわよね?」

「それは無いです。私はブランシュお嬢様の専属になりましたので逆に上がりましたよ」


 ()()()、ね。


「では、ほかは何が違うの?」

「……ナタリーは平民です」

「それが?」

「平民では伯爵家の侍女には不向きです。ですが、お嬢様には彼女しかいません。他のメイドは下働きのメイド達です。

 でも、彼女はどれだけあなたが慕っていてもオールワークスメイドでしかない。

 本来、高位の貴族令嬢ならば侍女が付きます。買い物やパーティーなどには侍女が付き添うからです」


 なるほどね。やはり私にはそういった常識が足りないみたい。


「公爵家にいかれるのはブランシュお嬢様のためになるかと思いますが、不安でもあります」

「どうして?」

「お嬢様の、相手に(おもね)ることのない毅然とした態度が私は好ましいと思っていますが、それを面白くないと思う人間も多いからです」


 ああ、生意気な上に両親は爵位を奪われ、兄達は魔法塔送りという醜聞付きだものね。


「でも、どうせ避けては通れない道なのでしょう?」

「はい。ですが、そういった場でナタリーでは助けに入ることができません」


 ああ、そこで平民のメイドだからという話に繋がるのね。


「それもお祖父様に相談するべき?」

「どうでしょうか。公爵は武人です。そういった女性の争いごとには疎い可能性が高いかと」


 そうね。絶対にそうだわ。


「ねえ、ナタリーが侍女になってはだめなの?」

「そうですね。今、この屋敷には夫人がいませんから指名してくれる方がいない状況なんです」


 ……面倒くさい。貴族って本当に手間ね。


「女主人が任命するものなの?」

「はい。使用人の采配は女主人の仕事ですから」

「……やっぱりお祖父様に相談するわ」

「お役に立てず申し訳ありません」

「何を言ってるのよ。とっても助かったのに」


 私が年齢も能力も足りないから。さらに親兄弟を失ったのが痛いわ。


「管理人はどんな方なのかしら」

「まだ正式には決まっていないようですよ」


 そりゃそうよね。見ず知らずの子供達を育てるなんて大変だもの。


「ただ今戻りました!って何かありました?」

「ナタリー、おかえりなさい。丁度あなたの話をしていたのよ」

「え!私、何かしちゃいました?」

「私の侍女になってくれないかしら」


 ナタリーなら、お任せください!と元気に答えてくれるかと思っていました。でも、


「申し訳ありません。平民の私ではあまりお役に立てないと思います」

「私はあなたがいてくれるだけで心強いの」

「へへっ、そう言ってもらえるとすっごく嬉しいです!でも、侍女は行儀見習いの貴族令嬢が多いんです。平民の私ではそういった横の繋がりがありませんし、貴族の内情も分かりません。

 逆にお嬢様の足を引っ張りかねませんから」


 ……私はあなたがいいのに。それだけでは駄目なの?


「ブランシュお嬢様。私は公爵家に行ったら剣の稽古を望んでもいいですか?」

「マルク?その、勿論いいけどどうして?」

「私はもっとお嬢様の役に立ちたいからです。国の英雄と言われる公爵様の元で鍛錬を積んだとなれば、それだけで箔が付きます」

「え、ずるいです!じゃあ、私だってメイドとしてのスキルアップを目指します!公爵家のお墨付きを貰ってみせますよ!」


 ナタリーったら、さっきまで平民だから無理だって言ってたのに。

 そっか。だからマルクは煽って見せたのね。


「二人は仲良しね。妬けちゃうわ」

「違います。ブランシュお嬢様のためです」

「そうですよ!私が一番の使用人になってみせます!」

「ふふっ、楽しみにしてるわ」


 うん。やっぱりあなた達がいてくれるのが一番心強いわ。

 これからもよろしくね?






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― 新着の感想 ―
荒んだ心が解けてゆく ほんと2人すこ
お礼を言われなかったことが引っかかってるのかぁ。 六歳だと、良く知らない人にありがとうって言うのは親が促さないと難しい子はけっこういるなー。挨拶も言葉が詰まって「おはよう」と言えない子の方が多いし。た…
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