88 炎の七日間
88 炎の七日間
俺は多くの仲間たちに囲まれながら、輝いていた。
「まさかこんな時に、レベルアップするだなんて……!」
しかも新しく増えた職業は『地脈師』……!
地脈師とは、魔法職の一種なのだが、派手な魔法は使えない。
使える魔法はたったひとつ、『ダウジング』だけ。
『ダウジング』とは、地脈の力を足の裏から体内に取り入れ、地中のどこかにある探し物をする魔法。
手に持った棒や振り子の動きを見て、水源や鉱脈のある方角を知ることができるんだ。
活動している様子は恐ろしく地味だが、侮るなかれ。
過去に発見された伝説級の財宝の中には、この地脈師の力が無ければ見つからなかったであろうと言われている物もある。
なんにしても、今の俺には願ってもない職業だった。
もはや考えるまでもない。
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レオピン
職業 戦斧使い ⇒ 地脈師
職業スキル
木のダウジング(アクティブ)
木の枝を使ってダウジングを行なう
水源探しに特に有効
金のダウジング(アクティブ)
金属を使ったダウジングを行なう
鉱石探しに特に有効
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「よし、さっそくダウジングをやってみよう!
たしか木の枝のダウジングには、ハバシリの枝が適してるんだよな。
さらに水源を探すなら、枯れている枝のほうがいいんだ」
幸いまわりは森なので、木の枝ならふんだんにある。
俺はハバシリの木の下に落ちていた、枯れ枝を拾いあげた。
その枝を手のひらの上に置いて、脇をしめて胸の前あたりで固定する。
これが、ダウジングのポーズだ。
俺は目を閉じ、そっと呟いた。
「地の精霊たちよ……我を、水のあるところに導きたまえ……」
カッと目を開くと、スキル『木のダウジング』の効果が発動。
手のひらの上に乗せていた枝が、方位磁石の針のように、ふらふらと揺れだした。
「この、枝の先が示す方向に、歩いていけば……。よし、みんな行こう」
俺は多くの動物たちを引きつれ、歩き出す。
長い長い旅の、始まりだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、2日目。
水は見つからず。
広大なる森のなかをさまよい、樹冠を屋根に野宿をする。
心なしか、森の植物たちの元気がないような気がした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、3日目。
水は見つからず。
朝露や植物、果物の水分で餓えと乾きをしのぐ。
といっても俺は、一滴の水も口にしていない。
俺が見つけた分は、ぜんぶ動物たちにやっていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、4日目。
水は見つからず。
頭痛や脱力感に襲われる。
さらなる長丁場を覚悟し、ステータスを振り直してみた。
生きるために必要な能力と、そして挫けないための心。
わずかな手掛かりも見逃さないための感覚。
「そして、『幸運』……」
俺は『器用貧乏』になってから、初めて『幸運』のパラメーターにポイントを掛けようとした。
しかし、『幸運』だけはいくらやってもポイントが割り振れないことに気付く。
「なんでだ……?」
いつもなら「まあいいか」で流せることでも、乾きのせいで焦燥感に駆られる。
思わず叫びだしそうになったが、『幸運』はあきらめた。
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レオピン
職業 地脈師
LV 18
HP 1010 ⇒ 4001
MP 1010 ⇒ 4001
ステータス
生命 101 ⇒ 401
持久 101 ⇒ 401
強靱 101 ⇒ 401
精神 101 ⇒ 401
抵抗 101 ⇒ 401
俊敏 101 ⇒ 1
集中 101 ⇒ 201
筋力 101 ⇒ 201
魔力 101 ⇒ 401
法力 101 ⇒ 1
知力 101 ⇒ 401
教養 101 ⇒ 1
五感 101 ⇒ 201
六感 101 ⇒ 201
魅力 1
幸運 5
器用 100
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おかげで、気分と体調はすっかり持ち直した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、5日目。
水は見つからず。
よりダウジングの効果が強くなるかと思い、靴を脱いで裸足になってみる。
埋め立てられた池をいくつか発見した。
『ざんねんでした』の立て札を、膝でへし折る。
水がないせいで、森の植物たちは目に見えてしおれてきていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、6日目。
水は見つからず。
俺は奇跡的に、水なしで1週間近く活動を続けていた。
普通の人間だったら、とっくに動けなくなっていた頃だろう。
心と身体はなんともないが、身なりはもはや絶望的。
衣服は土埃で真っ黒になっていた。
髪はばらけ、肌はすっかりくすんでいる。
しかし、目だけはきっと輝きを失っていない……そう信じ、歩き続けた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『炎の七日間』、7日目。
封鎖の続いている居住区の一角、中央にある広場には全校生徒たちが集められていた。
特設ステージに、オーロラのような巨大な水晶板。
その上には、デカデカと看板が掲げられている。
『ゴミの退学をみんなで見よう! 悲惨! 校長と教頭にさからった者の末路!』
ステージの上にある特別席には、ネコドランが校長のような態度でふんぞり返っている。
イエスマンは嬉しそうにステージじゅうを駆け巡っていた。
「さぁさぁ、今日はついに、非常事態宣言の最終日ざます!
その喜びを、イベント形式で盛大にお祝いするざます!
そしてゴミの最期をみんなで見届けるざます!」
パッ、と映し出された水晶板、そこには砂埃にまみれたレオピンがいた。
細い木の枝を片手に、太い木の枝を杖のようにして、ヨロヨロと歩いている。
あたりは緑にあふれた森であるというのに、砂漠をさまよっているかのようであった。
一部の女生徒たちが、心臓が止まったかのような悲鳴をあげる。
いてもたってもいられずに朝礼から抜け出そうとしたが、親衛隊と警備兵によって阻まれていた。
しかしそんな反抗的な態度を示すのはごく一部の女生徒だけで、多くの者たちは盛り上がっていた。
「うおお! ゴミ野郎が難民みてぇになってるぞ!」
「これだよこれ! 俺が見たかったのは!」
「そうそう! 『特別養成学級』の落ちこぼれは、あんな風にボロボロになって、俺たちの目を楽しませるためにいるんだよ!」
生徒たちの好反応に、ネコドランもイエスマンも満足そうにしている。
「あのゴミはおバカさんなせいで、水がどこにあるかもわからないざます!
このままじゃ、死んじゃうざますねぇ! あああ、可哀想ざますねぇ!
このままあのバカさんは、なんにも見つけられずに死んじゃうざますねぇ!」
不意に、水晶板の向こうのレオピンが、弾かれたように走り出した。
イエスマンは指さして大爆笑。
「ムホホホホホ! とうとう頭がおかしくなったざます!
あのあたりには水なんてないざます! ぜえんぶこのわたくしめが、業者に指示して埋め立てさせたざます!
あるのは、このわたくしめが厳重に隠した……。
きっ……きえええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺はダウジングの棒がかつてないほどに強力な反応を示していたので、脇目もふらずに走った。
折り重なったイバラの藪を抜け、崩れた崖の岩を取り除き、その奥にあった穴ぐらへと入り込む。
そこは小部屋くらいの小さな洞窟で、欠けた天井からは光が差し込んでいた。
スポットライトのような光に照らされた台座、その上に鎮座しているものに、俺は息を呑んだ。
「た、宝箱……!?」
俺は感覚系のパラメーターを上げているせいか、ふと、こんな空耳を聞いたような気がした。
『な、なんでそこがわかったんざますか!?
ヒントなしじゃ、絶対に見つけられないはずざますのに……!?
そ、それは開けちゃダメざます! 開けたら大変なことになるざますっ!
それは、お前みたいなゴミにあげるために、隠したんじゃないざますぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!』
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